ドラマレビュー「筋トレサラリーマン 中山筋太郎」 第1話
ドラマ評論家 成馬零一がドラマ評を執筆。
一週間は無料公開、以降は途中から有料公開(一部例外あり、1話は残す予定)とします。
(勢いで書いているので、後でちょくちょく直します)
筋トレサラリーマン 中山筋太郎 第1話
一言で言うと:筋トレを題材にした趣味ドラマ。
趣味ドラマとは?
筆者の造語。『孤独のグルメ』等のグルメドラマから派生したジャンルで、食べるかわりに趣味で楽しそうにしている姿を楽しく見せるドラマで、深夜枠で多く制作されている。
印象としてはYouTubeに個人が挙げている趣味の動画に近くて、出演者が一人いて、サウナ、キャンプといった深堀りできるジャンルがひとつあれば成立するので、意外な掘り出しモノが多い。
前クールではプラモを題材にした『量産型リコ』、今クールでは日常の中にある変わった風景(絶景)を鑑賞する『日常の絶景』が面白い。
筋トレで有名な芸人・なかやまきんに君が演じるサラリーマン・中山筋太郎が、筋トレのことばかり考えてもやもやしている姿がコミカルに描かれるドラマ。
物語の節々にオールアップ等の筋トレの豆知識が入るのが見どころ。
テレ東深夜枠のドラマと若干違うのは、仕事と恋愛というテレビドラマに寄せた要素が大きいところ。職場で怒られているのに筋トレのことばかり考えている筋太郎の姿がユーモラスに描かれているが、完全に切り離すタイプの趣味ドラマに慣れていると、若干ノイズになる。
このあたりは、読売テレビ制作であることの特徴が良くも悪くも出ていると感じる。
筋太郎がマッチングアプリで女性と会うエピソードも、塩梅が難しい。細マッチョが好きな女子にゴリマッチョの筋太郎がフラれたエピソードが入り、筋太郎が童貞であることが示されるのは『電車男』(フジテレビ系)や『モテキ』(テレビ東京系)のような恋愛が苦手な男が主人公の恋愛ドラマみたいで、少し古く感じる。
嘘をついていたことの是非みたいのが最終的なオチになるのも、描写こそコミカルだが、若干、後味が悪い。
ただ別れた女の人が次回以降も出てくるなら、印象は変わるけど。
このドラマっぽさがプラスとなるかマイナスとなるかで最終的な評価は決まりそう。
ただ、これまでは芸人としてイロモノ的な出演が多かった(『仮面ライダーゼロワン』の腹筋崩壊太郎は素晴らしかった)きんに君だけど、凄く愛嬌があって人柄の良さが滲み出ていたので、俳優としては完璧。今作以降、役者としてのオファーは殺到するのではないかと思う。
余談 5年くらい前から健康のために、ダラダラ24時間営業のフィットネスジムに通っている。仕事の関係もあって深夜に行くことがほとんどで貸切状態でちまちまやってるので、通いやすかったから長く続いているんだろうと思う。
筋トレブームと言われているけど、筋トレは男性にとっては健全なナルシズム(自己愛)を供給しようと思ったら今、もっともアクセスしやすい活動なんだろうと思う。
もちろん、ダイエットしたい人やボディビルダーみたいにある種の目標を設定して周囲と競い合うことが目的化してしまうと、他の趣味やスポーツと同じで、息苦しくなるんだけど、そういうことを考えない閉じた趣味としては最適だと感じた。
人と繋がるためのコミュニケーションツールとしての趣味や仕事とは違う、誰とも繋がらない自分の肉体との対話と言ったら大袈裟かもしれないけど、そういうものとして体を鍛える行為はありだと思う。