見出し画像

Learn Like a Pro 読書ノート 3/3 【働学併進#009】

Part 1では、集中モードの活用法や散乱モードを活用した行き詰まりの解消法をまとめた。
Part 2では、作業記憶で内容を整理したのちに意識的に長期記憶へ定着させる方法と、反復練習によって手続き記憶に定着させることで直感的に問題を解けるほどまでに習熟する方法をまとめた。

今回は、「集中力や記憶力についての方法論はわかったけど、なかなか勉強する気が起きない」と言う人のために、自己規律を発揮する/自己訓練をたゆまず行うためにと、どのように動機・野心を維持するかをまとめる。
また、後半はこれまでに学んだ方法を用いた効果的な読書法と、本当のプロのように学ぶために必要なたった一つのことについてもまとめる。

7. Exert Self-Discipline

Self-Discipline とは?

Self-Disciplineについて、この本では以下のように説明されていた。

Self-discipline is simply the ability to control yourself so that you can fight off temptations and in-the-moment distractions to reach long-term goals.
"自己を制御することで誘惑や一時的な気の紛れを退け、長期的な目標に到達するための能力のこと"

Learn Like a Pro
Chapter 7. How to Exert Self-Discipline Even When You Don't Have Any

日本語訳では単に「自己鍛錬」と言われることが多いが、この説明から「自己規律」や「自己抑制」といった意味が前提に含まれていることがわかる。

そして、かの有名な26代目アメリカ大統領のTheodora Rooseveltは自己規律について以下のような名言を残している。

With self-discipline most anything is possible.
"自己規律があればなんでもできる"

Theodora Roosevelt

余談だが、Franklin D. Rooseveltは32代目アメリカ大統領だ。"元気があればなんでもできる"と言ったのはアントニオ猪木氏だ。

自己抑制力は鍛えれるのか?

結論、簡単には無理。
そもそも、七つの大罪という遥か昔から人類が克服しようとしてきた根源的感情の4つは欲についてである(強欲、色欲、暴食、そして怠惰 sloth)。
数千年前からずっと「良くないもの」とされてきたのに関わらず、いまだに教えの中に残っているのだから、そう簡単に克服できるものではないのだ。

「だから」と言ってはなんだが、そもそも自己抑制する機会を減らせばいいではないかというのがこの章での内容である。
ソフトウェアエンジニア的には、"怠惰"という感情には感情ではなくシステムで対抗するとも言える。

怠惰な感情の引き金を見つける

「あと1時間待てば夕食だけれどお菓子を食べたい」「本を読むよりYouTubeが見たい」「仕事よりも漫画を読みたい」などの感情にも、必ずその原因となる引き金が存在する。
例えば「17時にはいつも小腹が空くけど健康的なおやつが手元にないから」「その本を読む理由や目的を明確化できていないから」「仕事の時間と漫画の時間をあらかじめ予定に組み込んでいないから」などである。
その原因を解明し、なるべくその引き金に指をかけなくて済むように環境から変えよう

  • 朝起きてスマホを見ないようにする

    • スマホを玄関に置いておく

    • 目覚まし時計/スマートウォッチを買う

  • iPadからよく見るアプリを消す

    • YouTube, Netflix, Prime Video, Disney+, TickTock

    • Twitter, Facebook, Instagram

  • 不健康な食べ物を売っている場所から遠ざかる

    • 買い物を週1回にまとめる

    • 定期購入を登録する

    • コンビニがない帰り道を通る

引き金の先を別な行動に上書きする

「帰り道はコンビニのない道を通る」という作戦は、1ヶ月の内の80%は成功するだろうが、どうしても帰り道にコンビニを通らなければならない状況もあるだろう。「誰かと一緒に帰る」「道が工事中でいつもの道を通れなかった」「土地勘のない場所に出張に出かけた」などなど。

そういう時のためにバックアッププランを準備しよう。
具体的には「コンビニの道を通ったら、星を見て、一度深呼吸してからかえる」「コンビニの道を通ったら、迷わずコンビニの中に入ってホットコーヒーSを買い、すぐに出る」などのように、別の行動の引き金にするのだ。

  • 朝起きたらiPhoneを見る→Kindle White Paper で読書をする

  • iPadでよく見るアプリを消す→iPadを開いたらQuizletなどで前に勉強した内容を復習する

8. Motivate Yourself

Motivation (動機、野心、安っぽい言い方をするとやる気)というのは、どれほどそれが欲しいかではなく、それを手に入れるためにどれほどの努力をしようと思えるかである。
Motivationはドーパミン Dopamine がキーとなる役割を担っていることを知っている方はいるだろうが、Motivation は戦略的に自分で作って、補強して、維持することが可能だということはご存じだろうか?
その鍵は以下の4つである。

  1. 本当の価値の認識 Find What's in It for You

    • 得られる利益を箇条書きしてみる

    • タスクに対しての見方を変える reframe

      • 今しかできない経験ではないか?

      • 将来、誰かとの話の種になりそうではないか?

    • そのタスクが終わった時に得られる成果や充足感に注目する

  2. 上達の実感 Experience Progress

    • 難しい問題を自分でできる難易度の問題に分解してみる

    • 動画などの他の資料を積極的に探してみる

    • 先生や指導教員、先輩に質問リストを作って一つずつ解決する

  3. 戦略的な目標設定 Aim for Something

    • 長期目標 goals

    • 節目の目標 milestone goals

    • 作業目標 process goals

  4. 他の人と一緒にやる


戦略的な目標設定

長期目標は、それを考えるだけでいい気分にさせてくれるようなものにする。例えば、会社の社長になって自分の好きな分野で働きながらお金持ちになるや、本業以外に収入源を作って、そこから入ってきたお金は自分の研究開発環境のためだけに使うなど、他の人から見て「そんな生活の何がいいの」と聞かれても「え、逆に何がダメなの?」と答えれるような目標だ。

その長期目標を段階ごとに分けたものが節目の目標 milestone goalsだ。
先ほどの例なら「会社を起こす、100万円の純利益を残す、純利益1億円まで拡大する」「副業を始める、毎月1万の副収入を作る、毎月10万まで拡大する、パソコンを買う、自前のサーバーを立てる」だろうか。
さらにそこから、自分が実際に着手できる水準の目標(作業目標 process goals)に落とし込むのだが、その前に節目の目標をSMARTの指標に基づいて設定することで、さらに動機付けの効果が期待できる。

  • S: Specific 具体的

  • M: Measurable 定量的

  • A: Ambitious 意欲的 野心的

  • R: Realistic 現実的

  • T: Time-limited 期間限定的

SMARTな目標設定は、milestone goals だけでなく、process goals でも意識することで計画はより明快になり、進歩を感じられるものになる。

9. Read Effectively

人間が文字を読む時間は「単語の意味を認識する時間 250msec」と「次の単語に視線を移動する時間 100msec」の2種類に分類できるが、どちらも本の内容を認識するには欠かせない時間である。なぜなら、視線を移動している時ですら脳はこれまで読んだ内容を必死に処理しているのだから。

そもそも、本を読むというのは何かを「学ぶ」ためであることを忘れてはならない。
本を最初から最後まで綺麗に読む必要もなければ、途中で解説動画を見てはいけないなどというルールもない。
そういった固定概念を捨てて、前回紹介した能動的学習法を実践することで、これまでよりももっと効率的な読書ができるだろう。

  1. Preview
    この本、この章、この節では最も大切そうな考え方や概念に目処をつけておく
    読んでいる途中で何を言っているかわからなくなったらもう一度Preview し直す

  2. Recall reading
    思い出し訓練 retrieve practice を意識した読書法
    一つの章を読み終わった時やPomodoroが終わった時などに、これまで学んだ内容や大切な概念を"何も見ずに"自分に説明 elaborationしてみたり、紙に書いてみる。思い出せなかったらまた読み直す。
    本を読み終わった後や次の日、散歩中など定期的に思い出してみる。

  3. Annotation
    本を読んでわからなかったところに注釈をつける。全体像と詳細情報のどちらも両立するように。

    • 大切な箇所や説明を自分の言葉で言い直して、短くまとめる

    • 概念同士の関係

    • 自分の経験に基づいた考え、当てはまりそうな具体例

    • よくわからなかった箇所

    • 試験で出そうな問題文

「優先順位の低いパート、章、節は読まない」ことも有用。

10. Win Big on Test

私は資格試験ビジネスに乗っかれるほど素直な心を持っていないため、いまさらテストの受け方など興味がない。
ただ、自らテスト形式で知識を試すことは長期記憶や手続き記憶に定着させるのに効果的だ。具体的には1時間のテストは1時間の勉強よりはるかに価値があるという研究があるそうだ。

具体的なテストの受け方に興味のある読者は是非買って読んでみてほしい。念の為、書かれている内容をごく簡単にまとめる。

  • テストに慣れる

    • 過去問を解いてみる

    • 「理解する」から「活用する」練習をする

  • 計画を立て、それに従い、必要に応じて更新する

  • テストの問題文や説明文は全てしっかり読む

  • 時間を測る

  • 答えを見直す

  • ストレスはパフォーマンスの味方になることを知る

私も将来的に博士号を取りたいなどと思ったときはまた深く読み直してみることだろう。

11. Be a Pro Learner

さて、これが最後の章だ。ちょっと息抜きがてらに下の動画を見てみよう。
おっと、とりあえず5分休憩するかこれまでの内容をrecallしてからの方がいいかもしれない。動画を見たせいでここまでの内容を忘れられると勿体無いからだ。

「あまりにも下手くそな歌で審査員が腹筋崩壊wwww」というタイトルがつけられたこの動画では、自分の歌が本気で上手うまいと信じた参加者が、拙い歌を披露している。そしてその様が面白いということで9百万回も再生されているのである。

しかし、ここでふと立ち止まって以下のように考えてみてほしい。
私が本気で上手だと思っているものは、本当に技術的に優れているものなのだろうか?」と。

この読書ノートの中で度々、私は"Pomodoro Techniqueのことを毛嫌いしていた"や"アクティブラーニングに胡散臭さを感じる"などと言及していたが、これまでの私の勉強法では集中力にムラがあり、教科書で概念を理解していても現場(もしくはテスト)で使えていないことがよくあった。
まさしくこの動画の彼と同じではないだろうか?

「実績があるのに職場で評価してもらえない」
「こんなに勉強しているのに成果に繋がらない」
「これまで読んだ本で勉強法はマスターしている。ただ勉強する時間がないだけ」
などと不満を垂らしたくなる気持ちもわかるが、そう言うあなたも彼と同じではないだろうか?

Dunning–Kruger effect(ダニング=クルーガー効果)という言葉を聞いたことがあるだろう。この「初心者ほど自分の能力を過大評価する傾向がある」と言うのはつまり、「自分のことを客観視(メタ認知 metacognition)できない人ほど、何かを学ぶと言うことが下手くそ」とも言える。
だから、上の動画を思い出すたびに、ダニング=クルーガー効果という言葉を聞くたびに、1つの試験が終わるたびに、自分の学習法について以下の観点から見直してみることを勧める。

  • 今の勉強法に改善の余地はないか?

    • 環境の整備や計画に不備はないか

    • 使えるITツールを駆使できているか

    • 勉強時間は十分か、十分に集中できているか

  • 今の教材は合っているか?

    • YouTube より体系的に学べる本の方が良いのではないだろうか

    • より授業に近い形式のYouTubeの方がキーとなる箇所やつまづきやすい箇所に対処できるのではないか

  • 目標達成のための勉強になっているか?

    • 瑣末さまつなことばかりに気を取られてないか

「そんな毎日振り返っていたら勉強する時間がないじゃないか」と言う方は、以下のような手順で、無理なくつ強制的にメタ認知を取り入れよう。

  1. 求められているもの、望んでいるものを正しく認識する

  2. それを中期的な目標に分解し、計画(SMART)を立てる

  3. 実行する

  4. 学習状況や手法について見直す

ここまで言っても「わざわざ計画を立てるのは手間だ」「何も考えずにただ面白いことだけしていればいいじゃん」と思うことだろう。
私もだ。
そんな時こそ自分の現状を客観的に振り返ろう。
自分なりのやり方に固執したが故に、自分の才能を殺しているのではないか?


明日は、3日に渡る読書ノートを通して得た知見をもう一度短くまとめ、すぐに実践できる質の計画を立て、「熟練者のように学ぶ」ことを助けてくれるソフトウェアについての調査内容をまとめる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?