変タビュー epi.2 橘川幸夫さん、語る。
東京学芸大学 変人類学研究所の小西公大さんと一般社団法人みつかる+わかるの市川力さん、原尻淳一で変人(世の中を変える人)をインタビューする「変タビュー」の第二回目。ゲストは音楽雑誌「ロッキンオン」の創刊編集者で有名な橘川幸夫さんです。橘川さんは常々「ロックは社会参加の方法の1形態」と捉えていて、参加型の取り組みをあらゆる場所、あらゆる現場で実験されている方です。近年では、多摩大学で「参加型教育=ロック」を展開し、毎週学生たちにLIVEをされています。今回の変タビューでは、橘川さんのライフヒストリーを聴き、そこから紡ぎ出された名言を読者の方々にお届けしようと思います。
今僕らが生きる時代を捉え直すヒントに満ち溢れています。
1:ロックとは、みんなで時間と空間を一緒に盛り上げる場
オーケストラやジャズプレイヤーって演奏の天才だから、それを聞き終わった後、拍手をするしかないじゃん。でも、ロックミュージシャンって演奏が下手なんだよ。まず、言いたいことがあって、後から技術がついてくる感じだな。日比谷の野外音楽堂でロックフェスがあって、隣にいたやつがステージに上がって演奏しているの。みんなで時間と空間を一緒に盛り上げる感覚があって、それはジャズやオーケストラと全然違った。参加型で、みんなで場を盛り上げる新しさがあったな。
2:参加型教育の場としての雑誌づくり
1968年。大学紛争の真っ只中。ある老教授が「何が正しい大学なのか、言ってみなさい!」と学生たちを指差して叫んだんだよ。その問いに僕は答えられなかった。明らかに間違っているのに、正しいことが言えない。この挫折ね。しかし、先生だけが悪いのか?学生たちも変えなければ、自分が思い描く教育にはならないと考えた。そこで参加型教育の生徒をつくるために投稿雑誌を作ったんだ。それは本質的にはロックと同じだ。
3:人生100年時代は「2クール」で捉え直す
人生100年時代。人生って2クールあってね、第1クールは40代で終了。50代からは第2クール目。僕は今72歳だから、第2クールでいうと22歳なんですよ。それで22歳の時に何をやっていたかと言えば『ロッキンオン』の創刊準備をしていたなと。だから僕は今年『ロッキンオン』を出さなきゃいけないんですよ!
4:君たちはSNSに参加させられてないか
書きたい意欲があって、それが集まってできるのが参加型。つまり、表現に対する自発性、内側から伝えたいことがあるのが前提なんですよ。でも、今は参加型の仕組みが先行している。自発的に参加しているのではなく、参加させられているように見えるんだ。
5:インタビューは inter view=内面の交流
今のインタビューって、インタビュー慣れしている人は同じこと繰り返し話す訳だけど、そんなのありがたくも何ともないでしょう。インタビューってのはね、まさにinterをviewするんですよ。内面を見るってことだから、内面の交流がなければインタビューではないんですよ。
6:分野は違えど、現実に直面しているところでロックを再現せよ
ジョブズにしてもみんなロックファンなんですよね。スタートはね。それは音楽でなくても、ロック的なことはできる訳ですよね。音楽ってマーケットの中だけで、ロックをやっちゃダメだって思うわけ。現実的にできないことをやっちゃうのが表現だから、逆に未来を提示した訳ですよ。あとは色々な現実の中でロックがやったことをやればいい。
7:バンドを編成せよ
ロックってバンドなんですよ。組織ではないんです。仲間なんですよね。僕は1人では何もできないんで。
ビートルズって、メンバー4人なんですよ。ジョン・レノンが4人いたら殺し合いになるんですよ。ポール・マッカートニーが4人いたら、「俺が俺が」ってなるんですよ。要するに4種類の仲間がいたらいいんです。ジョン・レノンっていう「頭脳」、ポール・マッカートニーという「顔」、リンゴ・スターっていう「ハート」、ジョージ・ハリソンという「ボディ」。4種類集まって、組織の原型のようなもの。これでいいんですよ。会社って、一度作ったら成長しなきゃじゃないですか。バンドだったら、解散すればいいんです。また、再結成すればいいんだから。
8:対極な二人のメンターの間を行き来し、方法を磨け
20代の時に対極のメンターがいたんだ。真崎 守(まさき もり)って漫画家と岩谷宏ってロッキンオンの仲間でね。
岩谷さんは否定の力が強い、何か持っていくと全否定されるの。でも、真崎守は何でも褒めてくれる。世間ではさ、一人のメンターについて、その人のエピゴーネン(先輩のまねをするばかりで独創性のない人)みたいになるのがいいように言われがちだけど、僕は磁場の強い2人の間を行ったり来たりしているうちに方法論が磨かれた感覚が強いんだ。
9:ホットポイントにいながら、惰性=権力を避ける
僕はさ、ロック&コミックスの世界で生きていたからね、時代の中心っていうのが一番面白いんですよ。でも、時代の中心って永遠ではないんですよね。その中心にどっぷり浸かってしまうと、時代に取り残されるんですよ。そういうのをいっぱい見てきた。でね、僕は常に時代のホットポイントにいるんです。でも、そのホットポイントに惰性でいついてしまうと権力を生むんです。だから、僕はいかに権力から遠ざかるか、つまり自分が権力にならないようにしていたんです。ホットポイントにいるんだけど、中心にいないで、そばにいること、周辺を意識していたんです。
10:結果を追求せず、可能性を追求せよ
僕はね、可能性を追求したいんですよ。そこで商売をやってやろうかって話にはならないんですよね。そうすると可能性が終わっちゃうから。可能性だけを追求している人生ですね。結果は追求しない。可能性はさ、カタチにしたら終わっちゃうんだよね。スピードライフだから、可能性って速度の中にあるんですよ。僕らが生きてきた時代って、速度が加速していった時代なんです。はじめ漫画は月刊誌で、それが週刊誌になって、今やスマホじゃないですか。情報の速度が早まった。その時代に生きているのでね、止まったら死んじゃう感覚はありますよ。
*このインタビューの動画は、新しい学びをみんなで追い求めるWe are Generators!で見ることができます。ご興味のある方は、ぜひ僕らのコミュニティにご参加ください。まだまだ橘川さんの刺激的なコトバが動画に溢れています。
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