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情熱は現実に存在しないので目の前の"今これ"が情熱という可能性

この記事のポイント
●意識や感情が作られるのは行動の後なので行動する前に情熱は存在しない
●行動を引き起こすのは情熱ではなく認知の仕方
●学習環境と会話によって認知はシフトする
●新しい行動が新しい情熱を生み出す

初めまして!マーケティングスクール「merc Education」を運営している

粕谷成正(かすや なりまさ)です。

卵とマーケティングのプロです。

このnoteでは、マーケターから見た社会課題の解決と、マーケティングスクールの最新情報を提供していきます!

noteを始めたきっかけ

もうだいぶ前に書いたのですが、「noteでも多くの人に伝えてください」と友人たちに言われたのがきっかけです。

「情熱を探そう」というアドバイスはもうやめよう – Taka Umada – Mediumという記事を読んで、「やりたいことが見つからないんです」と言う就活生や社会人が多くいると知った私は、「バカな!まだそんなことを言っているのか・・・」 と思い、彼らのために行動心理学の視点からツイートしていました。


僕は社会課題を解決するマーケターの育成事業を運営しています。マーケターは人間の喜びや情熱を引き起こすのが仕事であり、当然「なぜ人間に情熱が生まれるのか」を熟知していなければならない。

人を感動させて勇気付けたいと願うマーケターとして、そして一児のパパとしてみんなに伝えたい情報がある。

特に、「なぜやりたいことが見つからないと言うあなたなのか」を知りたい人へ

「情熱は現実に存在しないので"今"それを情熱と呼ぼう」

1.情熱があるから行動すると言うのは、幻想

もしもあなたが「今やっていることではなく、他に何か情熱を注げることがあるはずだ」と考えてそんなものを探しているのだとしたら、それはそのように思わせるアドバイスをしてきた大人たちの影響とみていいでしょう。

一つの前提として、1994年にベンジャミンリベットらによって、人間の意識的な決定よりも先に、脳が潜在意識で行動指令を下して行動していることが発見されています。 

図:被験者が自らの意識で行動を決定する瞬間(0 sec)より前に、脳の潜在意識では命令が決定して行動が開始された

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 Libet は、被験者の脳の活動が、意識的に動作を決定するおおよそ1/3秒前に開始したことを発見した。これは、実際の決定がまず潜在意識でなされており、それから意識的決定へと翻訳されていることを暗示している。

(ベンジャミン・リベット - Wikipediaより)

 

つまり、行動は意識や感情に先立つ。人はやると言ったことをやらないし、やらないと言ったことをやります。

意識や感情があって行動しているんじゃない。行動の後に意識や感情を作っているのが人間の脳の仕組みです。 

「これじゃない!ほかに何か情熱を注げるものがある」と言うのは幻想であって、「私は目の前の事に行動していないので情熱が無いのだ・・・」という意識を脳が作り出しているに過ぎないのです。

そしてこれは、グッドニュースです。

その人のやる気、情熱、意識、感情、性格などと言ったものは、その人の行動とは一切関係がない。

行動さえすれば、情熱を作ることも可能です。しかしそれでもやはり行動ができない人もいるでしょう。それは何も悪いことではありません。 しかし、行動しなければ何も得られないことも知っている人もいるでしょう。

では、"行動を引き起こすものは何なのだろうか?"

2. 認知の仕方が行動を引き起こす

認知行動心理学では、"人間の認知の仕方 "が行動を引き起こすとされています。

つまり、起きた物事を過去にどのようにインプット(認知)したのかによって、その物事が起きたときにそのインプット(認知)に基づいて自動反応的に行動を起こすのです。 

あまり話したくありませんが、僕自身の事例で話しましょう・・・。

僕は、母親から電話が来るたびに「めんどくさいな」と思って、電話に出ませんでした。不在着信が2ケタになることもあった!
たまに電話に出ても、「仕事は大丈夫なの?順調」と言われると、なぜだか「大丈夫だよ!しつこいなあ」とイライラしていた。
電話に出ないという行動を繰り返すうちに、「母はしつこい人だ、子離れができていない」という意識が作られ、さらに電話に出なくなった。
(本当にごめんね、お母さん)

しかし、ある人との会話の中で「君は母子家庭で育ててくれた母親に怒られてから、絶対に悪い子に思われたくないという価値観があるんだね」と指摘されて気がついた!そうだ!僕は「自分は悪くない」という認知の世界で生きている!
その日の夜、自分から母に電話をして「ごめんよ、俺は今まで自分が悪くないって言ってるだけだったよ。ただ心配してくれているだけだったね。育ててくれてありがとう」と伝えた。母は「今更なに言ってんのよ(笑)」と愛情で返してくれた。

それ以降、母からの電話は「自分を思いやってくれている」という認知にシフトし、最優先で電話に出るし、喧嘩もなくなり仲良く会話している。

まとめると、その時の認知の仕方はこうです。(客観的に見るとヒデー息子ですな) 

①起きた現実:母からの電話を着信した
②認知の仕方:母親に何か悪いことを言われたくない(言ってないのにw)
③取った行動:電話に出ない or 自分が悪くない理由を探す
④意識/感情:母はしつこく何度も電話してきて子離れできないめんどくさい人だ!
以後、③⇨④の強化ループを繰り返す

 重要なのは、認知の仕方が変わると、違う行動をするようになることです。

①起きた現実:母からの電話を着信した
②認知の仕方:自分に悪いことは何も無く、母はただ心配してくれてただけ
③取った行動:電話を発信して謝罪と感謝を伝える
④意識/感情: お互いを承認し、感謝と愛情が作られる
以後、③⇨④の強化ループを繰り返す

認知の仕方が変わると、相関して違う行動を取り、その行動から違う意識が作られるようになります。

認知の仕方は、行動全体を決定づけています。これは悪いことではなく、人間そんな風に自動的、反射的に反応するようにデザインされているだけなのです。

この認知が深刻で強力な現れ方になる人は、躁うつ病や統合失調症を引き起こし、彼らの行動は僕たちには支離滅裂に見える。しかし、彼らは認知の仕方が深刻な方にシフトしてしまっただけで、別に壊れているわけでもないし(むしろ正常に機能している)、中身は僕となんら変わらない。 

さて、ここでみなさんはさらなる疑問を持つでしょう。

そう、"認知とはどこから来るのだろうか?"

3.人間の認知は物事を狂わせる

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引用:サイコドクター楷恭介 4巻 「人形と怪物」より

人の認知の仕方と影響について、もう少し詳しく見てみましょう。

上記は心理学で"ロールシャッハテスト"と呼ばれるものです。その信憑性はさておき、ここでのポイントは「人は目の前の現実を自分の見たいように認知することができる」ことです。

ロールシャッハテストは、同じものを見ても、認知の仕方が違うと同じものに見えなくなると言う人間の性質を利用しています。 そしてこの性質は、僕も含めて人間なら誰しも持っていて、そのためにみんな狂っています。

例えば、認知の結晶体である"音楽"。あれ、物同士の音が聞こえるだけですよね。なのに、「これは音楽だ」と認知すると、物同士の音にお金を払う(リスクを取る)行動を引き起こすわけです。

しかも、これはクラシックだの、あれはロック、ジャズ、タンゴ、レゲエなど、物同士の音を区別までしています。石が転がった音と、ギターの音は、本質的、物質的には同じく"ただの物音"です。 

「音を売って食っていこう!そうだ、これを"音楽"と言って認知してもらおう」と最初に発案した人を、僕は「マジでイかれてやがる!」としか思えません。(いや、本当に素晴らしい発明です!)

"ただの紙"を"お金"と呼んだり、

現実に存在しない"平成"を終わらせて"令和"と名付けたり、

"ただの電気で光る鉄"を"Mac bookはクールだ"などと言っています。

実は、全てのマーケティング活動も、実は人間の認知が物事を狂わせることを前提として初めて可能になる人間特有の活動なのです。だから面白いし、大きな影響力と可能性があります。

では、僕たちの認知はどこからやって来るのでしょうか?認知の仕方は、それぞれの過去の体験を基にして作られます。

目の前の現実を見ているのではなく、実は似たような過去を追体験しているに過ぎないのが、認知行動心理学でのコンテクスト(文脈)です。過去にたまたま起こった成功や失敗、そのときに言われたことや感じたことなどの体験を思い出しながら、目の前の現実を認知している。自分の認知の仕方によって目の前の現実は変わり、認知の仕方に基づいて行動します。

つまり、今、"自分が情熱を注げること"という現実は目の前に存在しない。

今在るのは、実際に目の前に在るものと、私たちの認知の仕方と、行動、それだけです。

・・・で?

じゃあ情熱が引き起こるにはどうしたらいいのか? 

4. 環境と対話によって認知はシフトできる

過去の体験はどうしようもできませんが、認知の仕方をシフトすることができます。それはカウンセリングなどでも起こり得ますが、環境や対話で意図的に引き起こすことが可能です。

ピーター・M・センゲ先生の著書「学習する学校」では、人間の"深い学習サイクル"を引き起こす構造を記述しており、この構造は認知をシフトするのに効果的であると言えます。

用語の詳しい説明は省きますが、重要な部分を抜粋します。

ピーター・M・センゲ著「学習する学校」P117より抜粋 

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図2-1に示されたシステムは、学習する組織が依って立つ実践の骨格を示している。右側には「深い学習サイクル」が示されている。
新たなスキルや能力(生産的な会話やシステム思考など)、新たな気づきや感性(自らの願望、今の現実、メンタル・モデルの自覚)、新たな態度や新年(価値観や認知)が互いに強化し合うときに学習が起きる。
深い学習サイクルにおける変化は根源的で、不可逆的なものになり得るが、それを発生させることは難しい。
そこで、持続性では劣るがより明白でわかりやすい「行為の領域を図の左側に示している」
新しい態度や考え方を持つと、内省的に振り返りながら話ができる。それがまた、自らの気づきを育み、新たな理解につながるさらに大きな機会をもたらす。
それはまた、人間の性質についての見方を改めることにもなる。あなたは多くの生徒(または親、教員、管理職者)について単に「扱いにくい」と思い込んでいるかもしれない。
その結果、彼らと会話するとき、実際に彼らが言っていることには耳を貸さず、彼らの言葉があなたの中に引き起こす反応に耳を傾けているだけなのではないか。
 

個人一人では認知をシフトするのは難しい。なぜなら、自分の認知の仕方が、世界の真実かのように自動的に現れて来るし、それに基づいた行動しかできないからです。

しかし、新しい人や新しい行動をする環境を用意することで、新たな価値観・認知が発生しやすい"深い学習サイクル"を引き起こすことが可能になります。

多くの人にとって、新しい物事に取り組んだ後、「思ってたより楽しい」または「思ってたよりつまらん」という体験があるはずです。
人間は認知により物事を見る目が狂っていて過去と現実の判別ができないので、行動する前にはそれがどんなものか認識できません。新しい環境や人と一緒に新しい行動を起こす環境に身を置くことで、自分の認知と意識を初めて確認できるでしょう。

環境や行動による個人の"深い学習サイクル"を引き起こすことが、今まで気づかなかった情熱を発見する入り口になります。

5. 人との対話の中に新しい可能性と情熱がある 

暴力的に要約すると、ピーター・M・センゲの理論も、認知行動心理学も、つまるところ「人と会話して今の自分を知ろう」と言っています。 

「海へ行こう」と思ったとき、

今いる場所はどこなのか?

海はどこにあるのか?

そもそも今、あなたが立っている場所は川なのか?海なのか?

今いる場所と、行きたい場所が明確ではないのなら、僕たちはどこへも行くことはできない。 

目の前の現実が情熱を注げることかどうかを判別するためには、「今の自分が現実をどう認知していて、他にどんな新しい認知の仕方があるのか?」を会話を通して発見するしかないと思います。

認知の仕方に真実はなく、人によって異なります。それはつまり、今の世界とは違う世界も存在する可能性です。他の人と認知している世界が違うことに気づけば、あなたがシフトするのは一瞬です。

情熱を注げる現実がどこかに存在しているという幻想も、一つの認知の仕方です。今在るものは、実際に在るものと、あなたの認知と、行動だけです。まずは、新しい人と会話する環境に身を置きましょう。そして、人との会話を通じて新しい世界の可能性に触れたとき、あなたの認知はシフトし、違う行動を取り、新しい感情が生まれるでしょう。

今の認知がシフトした先に在るのは、"目の前の現実"を情熱と呼べる可能性です。

その可能性を発見するのはあなたしかいません。人との会話や行動の中で新しい可能性を発見できることを、心から願っています。

6.「正解」を探すのではなく、人が喜ぶ「可能性」を探すマーケティングを

この記事を書いて、僕は人の潜在心理とテクノロジーを融合したマーケティングを日本にもっと広めていきたいと改めて思いました。
私たちが考えるマーケティングプロセスは、その人自身も気づいていない本当に"欲しい価値"を技術を駆使して表現し、配達します。

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個人的に行き着くのは、もっといっぱいの人たちが、今目の前の現実に情熱や感動を感じて行動してほしい。「100年後も世界が感動するマーケティング活動と文化を残していきたい」そんなミッションです。

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