いざない

夜の終わりまで嗜みましょう。

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最近の記事

西武線でつながるきみへ

拝啓                               西武線でつながるきみへ 時の流れに挟まれた出会いから2ヶ月 なんだろうな、きみとの記憶はどうも薄暗くてぼんやりしているね 私たちが住んでいる街を裏側に回って、芝生の生い茂る公園のベンチに座って時間を共有しているような、そんな気分だよ でもそういう暗さはいずれ明けることをきみは知っているからいつも明ける前に去ってしまうね 照明を付けてバレた部屋の汚さにももう慣れた? 私よりも手馴れた調理器具の触れ方、消費する

    • 遮蔽

      蕩然たる初夏に遮蔽 白妙の身体の彼方 不確かな手触りの現 明滅は地への拍車 寂れた遊歩道は翠緑 行く手に見えた隻影

      • アフタヌーン・ティー

        お疲れ様でした の、風はもう寒くなかった 世界ってこんなに爽やかで簡単だったっけ と、ときどき思う 目の前の陽射しは少女の頬のようであり 横を過ぎるお父さんとその子どもとそのお隣も 今日はみんな同じになれた、気がした アパートの2階、3階に上った そして下りて自室、洗濯物を干した 隙間を空けた この街にも橙色の放送が流れていたことを知る 少しの間紅茶の香りが漂った 私には趣味があったようで 微睡のアイボリーにそっと薄まった碧空を載せた そして目が覚めて透ける藍色が在

        • 12月31日

          天気予報なんて無くても朝が来たら1日中快晴になることくらいもう分かっている、正月、元旦。大晦日、12月31日、このままamもpmも夜みたいな日が続けばいいのにね、濁った雲が透明な夜空になったとき彼女はなにを見ていただろうか。彼女が見続けた水色は今も水色であるから、 私は一度も会えていないんじゃないかとか 最新の数年前の投稿を見て思った。 彼女の知らない新しい朝、知らなくてもいい朝、私も知りたくなかったどうでもいい更新、1月1日。最後の夜の色を止めた彼女を追いかけてしまうな、終

          残さなくちゃ残さなくちゃ遺さなくちゃ

          人工的に明るさを残した夜の商店街 ここ最近同年代を見ていない 柔らかい髪が2つや3つで過ぎていく 時々黒色が何も見えない地面を向いて音をつくる 商店街が消えて誰も頼りにしない無数の街灯が十歩間隔で現れる マップを開かないと家まであと何メートルか分からなくなる 人を人間と認識出来ない時間がマップ上で続いていく 中学のジャージと高校のローファーで私も音をつくる 失われそうな藍色 地面に近い褐色 いつも私の右にある鏡はどうしてもみすぼらしい 数ヶ月後までに何者か

          残さなくちゃ残さなくちゃ遺さなくちゃ

          一日で決定❕新居探し❕

          関東の田舎の県の戸建て住みから東京の新居を決定した流れを記します。あくまで私の体験談に過ぎないです。ここに記載されているのはすべて一日の出来事です。 1⃣東京の不動産屋に電話なんとなく住みたいと思う駅を検索してオンライン予約と書いてないところに電話します。 (例:「本日○時にそちらに伺いたいと思っているのですが、賃貸の担当者の方はいらっしゃいますか」)というのも当日まで予約の電話などの下準備を一切していなかったので。おそらくしておいた方が無難です。そして、多少クチコミも見て

          一日で決定❕新居探し❕

          短歌

          昼下がり 橙色の 公園に独り 隣の芝生は 色さえも見えず

          ちょっと不安なきみが好きだ。

           ちょっと不安なきみが好きだ。こうやってひと月振りに会うきみは、白く細い指を反るくらいに張ってピースをして、三日月のように口角を上げてレンズを見た。誰もが見惚れる美人なきみは、今日もちゃんと可愛いかった。久しぶりに共にする外食。半個室の黒い部屋の中央にある鉄板からふわふわと昇る煙に、今までのきみの記憶のシャッターの連写が次々に投影された。風邪をひいて三重になったと眉を下げて笑うきみに、私は一本や二本頂戴よなんて一緒に笑った。国立大学を受験するきみはいつもむずかしいことを口にす

          ちょっと不安なきみが好きだ。

          日曜日の電車

          あたかも前日までを仕切り直すかのように、緩やかに始まる日曜日の電車の朝。車内はいつもより鮮やかな色でいて、車内アナウンスも優しいから、吐く息の色は幾分透明に見えた。どこからともなく漏れているイヤホンの音さえ愛おしい。気がつくと、顔とマスクの間だけの温かさのなかに懐かしい匂いが入り込んできた。中学生のときの英語の時間にもらえるシールの匂いだ。ひとつの発言が可愛いシールという形になって返ってくる。マスに丁寧に貼って私が埋まっていくのが嬉しかった。あの頃、大きな窓の外はいつも晴れて

          日曜日の電車

          季節が覚めて、幻想だと知らないで。

           あまりにも克明に視えていたから、ゆめから覚める時みたいに明晰夢のグラデーションに時間が淘汰されてしまうのが嫌で、吐いた息を、あぶくを辿っている。満ち潮の流れに抗いながら掴めない光にしがみついて。  残夢、これは残夢だ。  梅雨の豪雨に光は紛れていて季節の訪れを静かに教える。澄んだ青色が街中を乱反射する頃になると、私は自分に近づける。あの季節にしか入れないシャボン玉からは淡い色の世界が視えて、好きなもの、好きな記憶だけが柔らかく渦巻いているから酔ってしまう。長い思い出が濃

          季節が覚めて、幻想だと知らないで。

          イオンのネオンは記憶よりも眩しかった

          放課後に学校から徒歩15分のイオンにあのこと行った冬のこと、夏が過ぎ去っていく今思い出す。8月ももう片手に収まる数しか残ってなくて、冷蔵庫のアイスはそれよりも少なくて、私の体温も一緒に下がっていけばいいのにって寂しくなった。 すっかり冷え切って寂しさを紛らわすために手袋とマフラーを身につけて、歪んだ空気を吸って、ため息は可視化されて、早々と学校に向かったのが高校一年生の12月。人工的に無理やり明るさを保った蛍光灯も生暖かい風を出すエアコンもだいきらいで、それなのに教室の窓が映

          イオンのネオンは記憶よりも眩しかった

          ログアウト

          ログアウト表示。今日もインターネットから1人が消える。キーボードから伝心する彼女の姿は遠くにいても心音を聴いているように感じられた。消えた。死んだようなものだった。文字を介してしか見ていなかったけれど、彼女を真髄まで知れたように思う自分。ログアウト。一回の操作で全ての消息を絶った彼女。綴った多数の文章、彼女の内側、今はもう、ナニモナイ。 あーあ、外側の世界でも自分を消したかった。ログアウト。デリートキーを連打して生きてきた証を全て消す。一つ一つを綺麗に戻してまっさらな状態の出

          ログアウト

          私と片割れの真髄

          私と片割れの真髄

          いつもそこは青色

          地上の世界は絶えず鼓動が走っていて、隔絶された上の世界を見たら私が幼いときに見たときと同じ映像が流れた。それはまるで途中で年齢が止まったあのこみたいだった。ああ地面がトランポリンになってジャンプで雲に着地出来たらいいのに。私、最近目を開けたらいつもそこは青色だよ。

          いつもそこは青色

          結局人間って美化された記憶のために金を払うんですよね

          結局人間って美化された記憶のために金を払うんですよね

          夏に狂うやつが好きだ

          夏生まれの人って年齢を超える誕生日を重く捉えていて夏が、誕生日が近づくほどに狂気に満ちていくことが多い気がするの。夏生まれは夏の光を知っているからね。全て夏に始まって夏に終わっていくんだよ。だからもうどんどん暑さが熱さになって最高に生きてる感じしちゃってそれが頂点を迎えるのが誕生日で、その日が過ぎ去った途端にその人の一年は枯れていくの。虚しい、本当に虚しいよこんなの。でもね私、そんな夏生まれが好きだよ。光を知る者同士でしか生まれない感情があるからね。あのさ、今から一緒に狂おう

          夏に狂うやつが好きだ