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はじめの一歩|地域に工務店が必要な理由

自身のライフワークとして取り組むプロジェクトを考えるにあたり、自分のフィールドや実現したい未来を考え、まとめるために、とにかく書くいてみることにしました。文章を書くことはわたしにとってはいつも味方。考えていることを整理したり、気持ちを分析したり、足りない視点を認識したりするために、文章にすることはとても大切です。それがマイプロジェクトの「はじめの一歩」です。

この15年ほど注文住宅のメディアをつくる仕事において、地域工務店や居住地域をベースとした設計事務所の人から話を聞く機会が多くありました。また、年間で50人以上の「家を建てた人」の話を聞いています。

たくさんの人から話を聞く中で自分の中に結論めいたことがあるとすると、人が家や暮らしに求めるものはさまざまですが、家づくりで一番大切なのは「自分に適した選択ができること」だということです。

家の建て方、持ち方、もしくは持たないという選択において、「誰にとってもこれが正解」ということはありえません。家族のかたちやライフスタイル、働き方が一人ひとり違うのと同じで、その暮らしを支える住まいも、多種多様でなければその人らしい暮らしをつくることはできません。

都心に勤めて仕事をバリバリとこなしながら都会的な遊びを楽しみたい人であれば、通勤の利便性の良いマンションを選択するかもしれません。家を建てたいけれど仕様やデザインなどにそこまでこだわりがなく、ある程度決まった中から選びたい人は、ハウスメーカーの規格住宅や建売住宅を選ぶかもしれません。こだわりたい暮らし方があり、そのためにオリジナルの間取りや造作を取り入れて家づくりを楽しみたいという人は、地域工務店や地域の設計事務所をパートナーにするかもしれません。

自分の暮らしと照らし合わせたときに、住まいに合わせて暮らしているか、暮らしに合わせた住まいを選んでいるか、考える機会のない人もいるでしょう。ただし、問題意識を持たない限り、選択肢は狭められます。選択肢を知っていて選ばないことと、選択肢がないこと・知らないことはまったく異なります。

では、その選択肢のひとつが地域の工務店である必要はあるのでしょうか。地域の工務店が減少すると、まちにはどんな影響があるのでしょう。

地域に寄り添ったサービスの減少

地域工務店は施主と同じ地域に居住しているため、きめ細かなアフターサービスを提供できるという強みがあります。この利点が失われることで、住宅所有者へのサポート体制が弱まる可能性があります。また、地域の工務店がなくなると、家を建てた後のアフターサービスを受けられなくなる可能性が高くなります。特に、住宅の不具合や修理が必要になった際に対応してもらえなくなるリスクがあります。高齢化が進む地域では、アフターサービスを通じた高齢者の見守り機能も低下するでしょう。

地域特性への対応力低下

地域の工務店は、その土地の気候や風土に適した家づくりの知識と経験を持っています。これらの工務店が減ることで、地域の特性に合わせた住宅建築の技術や知識が失われる可能性があります。地域ごとに異なる気候に合わせた住宅性能の提供が難しくなり、オーバースペックな住まいや断熱性能が足りないなどの不備が出てくる可能性もあります。地域の伝承技術が失われ、地域材の活用が減ることで、地域外への資産の流出が加速します。地域に魅力的な住まいが少なくなれば、そのエリアに住みたいという人も減り、人口減少にも歯止めがきかなくなるでしょう。

選択肢の減少

地域工務店の減少により、消費者の住宅建築やリフォーム・リノベーションの選択肢が狭まります。同時に全国展開する大手ハウスメーカーやホームセンターのシェアが拡大する傾向があります。これにより、住宅市場の多様性が失われる可能性があります。これは特に、個別のニーズや要望に応じたカスタマイズを求めるユーザーにとっては大きな影響を与えそうです。

職人の減少

工務店の減少は、大工や職人の減少にもつながります。長期的に見ると、住宅建築業界全体の技術力低下を招く可能性があります。地域の工務店がなくなり、地元の職人も減ることで、住宅を建てる仕事は全国展開するハウスメーカーなどに集中します。そのため、地域に住む人が稼いだお金は地域外に使われることになり、地域の経済を圧迫する可能性があります。

ここでは個人への影響と業界、地域への影響をまぜて書いていますが、それはそれぞれが別の軸のようで、すべてつながっていると考えるからです。

家を建てる仕事の現場から地域工務店という選択肢を無くしたくない。それがわたしのブロジェクトの動機です。


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