【好きな曲勝手にピックアップ】(好きピ)-その3
好きな曲、のカテゴリにギリギリ入るという立ち位置の曲を、今日は紹介する。というのも、とにかくこの曲は"スターダスト・レビュー(以下スタレビ)"を日本中、いや、世界中に知らしめるきっかけになったものだが、なにぶんアマノジャクな私としてはもっとマイナーな曲でもっと素晴らしい曲がたくさんあるのを知っているし、今でこそ彼らスタレビの代表曲とも言えるものだが、リリース当初はCMやテレビ番組タイアップが一切ない、あまり目立たない曲だったのだ。シングルカットも、アルバムリリースの後に『受けが良かったからシングルで再度出す』というレコード会社の思惑が見え見えだったのだ。
スタレビの知名度をぐっと上げた『木蘭の涙』。
この曲の初出は1993年3月10日リリースのアルバム『SOLA』の冒頭の曲として発表された。
アルバムの1曲目はとにかくそのアルバムであったり、そのグループ(バンド)が持っている当時の熱量や方向性、音楽性を十分含んでいると私は思っている。アルバム『SOLA』はまだ高校生だった私にとって、とてもキラキラと輝いていた。わざわざ学校帰りに家と反対方向の都会まで電車賃を使って出向き、大型ショップまで買いに行った。家路に着く電車の中、待ちきれずにフィルムをはがし、そっとそっとブックレットを開いて、まだ聞いてもいない曲たちの「歌詞だけ」を舐めるように読んでいた。ファンクラブ会員になって2年目。とにかく新しいアルバムを手にすることが出来た喜びが強かった。
インパクトとしては少々欠けるのだが、心に染みる部分が多数織り込まれている楽曲である。
歌詞を読んでいると、とても悲しく辛く、もう会うことのない、会えることはない人を想って、泣きながら天を仰ぐ女性の横顔が想像できた。
会いたいのにもうあの人はこの世に存在しない(と私は感じた)、絶望しかない、世の中に希望を見いだせない…。
悲鳴のようなギターの音色と憤りのようなベースラインと、それを慰めるようなシンセサイザーの和音。ドラムとパーカッションは静かに悲しむ彼女を包み、コーラスが大丈夫と励ます。
けれどやはり辛いのだ。絶対に離れないよ、と吐くつもりのない嘘を語った彼に対して、怒りがこみ上げる。またギターが彼女の気持ちを代弁するように「なんでよ!」と叫ぶ。
でもね、「君の心の中に僕はずっといるから」とコーラスがささやく。
辛い、苦しい、と泣き叫ぶ彼女の嗚咽はサックスの音と重なり、遠く遠く空の上へと響いていく。でもきっとまた彼はささやいてくれる、「僕はずっとそばにいるよ」と。
…このシリーズを書きながら、私は毎回「テーマの曲」を何度も見て聞いて(今回はMVが見つけられなかったので音楽のみ)書いている。
初めて聞いたときの記憶はとうの昔に消え失せたが、それでもその時々で聞きながら感じる思いがある。
今回はあまりにも有名になりすぎた曲をピックアップするために、曲を聴きながらとにかく感じたままを書いてみた。
ちなみに『木蘭の涙』は2パターン存在し、さらに哀愁を強くした『木蘭の涙~acoustic~』というバラードがある。今回はオリジナルである『木蘭の涙』を聴きながら(どちらかというとオリジナルの方が好き)これを書いている。
アコースティックバージョンももちろん素晴らしい根本要さんの歌声が楽しめるが、バンドサウンドのオリジナルを聴きながらこの記事を読んでいただければ幸いである。
作詞:山田ひろし 作曲:柿沼清史 編曲:三谷泰弘
1993年3月10日 アルバム『SOLA』1曲目(初出)
シングルカット:1993年7月25日