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宮本三郎記念美術館(東京都世田谷区・自由が丘駅)

洋画を中心として活動していた宮本三郎。彼の居住していた世田谷の地に世田谷美術館の分館という形で建設されたのが宮本三郎記念美術館。自由が丘駅から歩いて程ない場所にある利便性の良い美術館である。今回は西洋の誘惑として、ヨーロッパへ留学して西洋の美術を直に触れた宮本三郎の画風の変遷を追うような企画展を開催している。

階段を上がった2階が展示室となっている。展示室の手前には生前に使用していたイーゼルと銅像が飾られている。展示室は2つあり、最初の展示室は初期の作品として、佐伯祐三とマティスからの影響を感じさせる作品が並ぶ。特に佐伯祐三は同じ洋画家の先達としてパリに留学していたのもあって、宮本三郎自身も何度か留学をしている。印象派で御用達のエトルタの崖もしっかりと描いている。油彩画が多くを占めるが、街の風景などでは鉛筆と水彩画で描いた作品もいくつかある。

画家の記念館ではお馴染みのイーゼル

時代によって作風が変わるのが特徴。同じ人物が描いたとは思えないほどバラエティに富んでいて器用だったことがわかる。コロー、レンブラント、ドガ、シャガール、ピカソ、モディリアーニ、ポロック、ルノアールの画集が手元に残っており、コローの模写が展示されていることから、これら先人の作風を研究していたことがわかる。ドガをイメージさせるピアノを弾く少女像などはよく特徴が表れている。

次の展示室へ入れば作風は次々に変化して行く。裸婦が画題になっていることが多いけれど、その作風は時代によって様々で、モディリアーニの画風そっくりの藤椅子に座った裸婦もいれば、キュビズムっぽい裸婦もいる。
ルノワールを彷彿とさせる『生』という作品では同じく裸婦に男が寄り添い、その背後には謎の人面、山羊もいて宝探しのようである。パステルで描かれた『化粧室の裸婦』は体が背景と重なっていて色遣いが特徴的。
最も目を惹かれたのはシャガールらしさのある『ヴィーナスの粧い』で、中央にいるヴィーナスの他に4人の天使っぽい人物像が並んでいる。しばらく見とれてしまう。

今回の作品展は洋画が中心だったものの、日本画も描いている。その多才っぷりに驚きが止まらない。
1階にはショップがあり、宮本三郎も愛用していたという月光荘の画材も販売されている。トイレは洋式。

晩年の三郎


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