ヴァニラ画廊(東京都中央区・新橋駅 ダニエル・ジョンストン展/ルイス・ウェイン展)
銀座ギャラリーの中で特に異彩を放っているのがアンダーグラウンドをメインとした企画展を開催しているヴァニラ画廊。入館料が発生するのも画廊にしては珍しい。作品の販売をメインの目的としていないということなのだろうか。シリアルキラー展など日常ではあまり触れる機会のない作品をよく開催していることでも一部でよく知られている。
立て看板はなく、外側からは本当にギャラリーがあるのかわからない何の変哲もない雑居ビルの地下2階に画廊はある。知る人ぞ知る場所という感じがして好ましい。階段を降りて行くと地下1階と2階の途中には天井から吊り下げられた生首のオブジェがお出迎え。否が応でも期待が高まる中、今回は2つの展示室でそれぞれ別の企画展を開催している。展示室は決して広くはないものの、会場は多くの見学者で賑わっている。いかがわしい大人の集いである。
展示室Aではダニエル・ジョンストン・コレクション展から。ミュージシャンでもありアーティストでもあるダニエル・ジョンストンは1980年代初頭からカセットテープを配布する形で作品を発表し、その特異な楽曲で注目され、ニルヴァーナのカート・コバーンやソニック・ユース、さらにトム・ウェイツなど多くのミュージシャンからも支持された人物。精神疾患にも悩まされる中で描き続けてきたアートワークを展示している今回は会場でも彼の楽曲(シド・バレットを彷彿とさせる)が流される中で紹介されている。
展示室Bではイギリスの画家ルイス・ウェインのコレクション展を開催。イラストレーターとして多くの挿絵や風刺画を多く手がけた作家で、猫をモチーフにしてあるいは擬人化され、ひたすらに生涯を猫の絵を描き続けた人物。10歳上の妻が病に冒され苦しむ中で、生前の彼女を癒すために飼い猫に人間の格好をさせたりしたことが猫の画業のきっかけになっており、そこから実に多くの児童書や雑誌で作品が掲載された。後年に精神疾患を患っており、よく精神病理の本で彼の絵が採り上げられることがある。
ダニエル・ジョンストンもルイス・ウェインも映像化されているというのもあって見学者はかなり多い。以前にシリアルキラー展を見学した際は女性の見学者が大半を占めていたのが印象的だったけれど今回は半々の割合で、特に音楽関連の仕事に携わっているような人が何人か見受けられる。トイレは個室洋式。ミュージアムショップの奥まった場所にひっそりと「Ben&joe」という名称で佇んでいるのも印象的。