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寺田アートコンプレックス1ギャラリー巡り(東京都品川区・天王洲アイル駅)
せっかく天王洲アイルまできたわけだし、寺田建築倉庫だけを見るのはもったいないとばかりにギャラリー巡りを敢行する。WHAT MUSEUMから少し離れた場所にある2つの向かい合わせになった倉庫ビルは中に多数のギャラリーが入っており、日本最大級のギャラリー群となっている。シネマコンプレックスならぬアートコンプレックスというわけである。
というわけで開館中のギャラリーを全て巡ってみようという暴挙へ。閉館時間が先か、全てを巡るのが先かといったところか。
しかしアートコンプレックス内は上下階への移動が人荷用エレベータ1基のみ。階段があれば利用できたのだけれど、階段もないためエレベータ前の待機時間が長いのが盲点だったりする。意外と見学者が多かったのでなかなか移動が捗らなかったり。それでもほとんどのギャラリーを見られたのでよしとする。トイレはウォシュレット式。
・MAKI Gallery
日本人アーティストで構成されるAmalgam展を開催している。井田大介、高橋銑、サイトウマコト、井田幸昌、篠田太郎、山口幸士、山本隆博、今井麗、baanai、田村琢郎、タムラサトルといった作家の作品が並んでいる。井田大介の木彫り彫刻と井田幸昌の木彫り豚が印象深い。奇しくも兄弟。あとはタムラサトルのインダストリアルな作品が個人的には好み。baanaiの猟奇的な文字の数々も悪くないかも。
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・KOSAKU KANECHIKA
館鼻則孝展を開催している。こちらは先日まで東京都庭園美術館の「奇想のモード」展で作品を提供していたことが記憶に新しい。ラメで飾られた厚底ブーツの作品がやはり目を引く。今回はそれだけでなく色素を用いずに光の反射によって生じる発色現象を発現させるインクを使った革新的な作品を発表している。いわゆる貝殻の内側とかに生じる色である。発色の魔術師のなせる技といったところで映える。
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・SCAI PARK
企画展としてアニッシュ・カプーア、ボスコ・ソディの企画展が開催されている。のだけれど、今回はガラスの外側からの展示になる。スタッフが常駐できない感じなのだろうか。CLOSEDの看板が切ないが、作品自体はガラス越しに見ることができる。個人的にはアニッシュ・カブーアの作品が好きだけれど造形がやばい。心臓に杭が突き刺さっているような凄惨な形をしている。
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・小山登美夫ギャラリー
大宮エリーによる新作展「しあわせな家具は海にでた」を開催。作家とかタレントのイメージが強かったのが、絵画とは意外なところだった。好きな家具、とくに椅子に焦点を当てて描いている。巨匠たちのチェアがみんな思い思いに海でバカンスしているような可愛らしい構図で面白いかもしれない。
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・ANOMALY
常に挑戦的な作品を発表することで世に問いかけているChim↑Pomの展覧会。森美術館での展覧会も熱が冷めやらない中、水面下で実は色々あったらしく、この展覧会の始まりを以ってChim↑Pom from Smappa!Groupに改名している。改名に至った経緯とともにそれをテーマにした展示会として注目されている。作品ではエロキテル8号機と9号機とかスーパーラットが印象深いがインパクトの面ではハイパーラットのインタビュー。やばい。
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・TSCA
伊勢周平、大山エンリコイサム、細倉真弓、ラファエル・ローゼンダールによるグループ展が開催されている。霧の中に浮かぶ十字架のような伊勢周平、コラージュによって際どい肌の部位を表した細倉真弓、流動の中に無機質な平面を置いたラファエル・ローゼンダール、エアロゾル・ライティングによる抽象的な作風の大山エンリコイサムのそれぞれ個性的な作品が展開されている。
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・Yuka Tsuruno Gallery
大﨑のぶゆきによる個展「Travel Journal」が開催されている。ドイツ滞在時の経験をモチーフにした作品で、パンデミック禍のドイツから日本へ送られた大量のポストカードや現地で制作した映像や絵画など、個人的な経験をもとにした作品によって不確かさに直面した体感を作品へと落とし込んでいる。
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・Kodama Gallery
笠井美香による個展「風景の風景のうえの風景」が開催されている。紙製の生活廃材を恣意的に使い、無地の部分である裏側に彩色を施して切り貼りしたコラージュ作品になっている。裏側ではわからないが実はよく見るパッケージの廃材を使用していて、日常の裏側みたいなテーマを受け取ることもできる。壁一面に貼られた制作の様子の写真もまた一つの絵のようでもある。
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・KOTARO NUKAGA
平子雄一がキュレーションとして行うグループ展「In search of others」が開催されている。平子雄一を含め伊佐治雄悟、王冠蓁、熊野海、高橋直宏、陳雲、寺本明志といった7人の作家による展覧会。プラスチックを編み上げた伊佐治雄悟、奇妙な顔が絵画や陶器に映る王冠、大胆な筆運びの中にリアルが映る熊野海や寺本明志、木の破片に人間や生物の痕跡を作る高橋直宏、幻想的な絵画を作る陳雲と平子雄一の森の人(勝手に命名)に会える。
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