はけの森美術館(東京都小金井市・武蔵小金井駅)
武蔵小金井駅から東小金井駅の方面へと連雀通りを進んで行くと、南側が開けた光景であることに気づく。この辺りは国分寺崖線という崖の上にあたり、野川に沿うようなかたちで崖の下側には「はけの道」という道が通っている。はけの森美術館はこのはけの道を象徴する美術館で、洋画家の中村研一の住んでいた主屋が文化財として今でも残されている。
美術館は2階建てになっており、1階の展示室では企画展として笹川治子が中村研一による絵画作品と共に絵画の多面性に注目した作品を展開。従軍画家として戦争画を多く描くことのあった中村研一の作品を通して、それらと共鳴するような絵画・映像・インスタレーションを発表している。中村研一の作品は鉛筆画・油絵・水彩なんでも揃えられており、中でも斃れた兵士を描いた『シンガポールへの道』はその絵の大きさも相まって印象深い。
光の美しい中庭を見据えながら階段を上った2階には展示室が左右にある。左手の第2展示室では常設展示として中村研一のデッサンなどを中心とした作品の他に、生前に使用していたイーゼルや絵の具が残されている。右手にある第3展示室はもともと応接間として使用されていたらしく、こちらでは有志による作品が展示されている。トイレはウォシュレット式。
美術館の横にある道からは裏にある「美術の森」として、はけの森を散策できる。森の中には国登録の有形文化財として登録されている旧中村研一邸主屋(現在はカフェーとして利用できる)と、旧中村研一邸茶室である花侵庵があり、これらは建築家の佐藤秀三による設計となっている。
都内では世田谷美術館の分館である向井潤吉アトリエ館も彼が手がけたもので、洋風数寄屋と呼ばれる日本の伝統木造建築に西洋建築の要素を融合させたデザインで知られている。映画『借りぐらしのアリエッティ』でもモデルになった森で、散策してみるのも楽しい。虫は多い。