黒田記念館(東京都台東区・上野駅)〜東京藝術大学美術館(同上)
・黒田記念館
上野にある黒田記念館。東京国立博物館の分館として東京藝術大学のそばに建てられており、国立博物館に入らなくとも個別で入ることができる。洋画家である黒田清輝の作品を無料で展示している。
普段は閉鎖されている特別室を期間限定で公開しており、ちょうどそのタイミングだったのを知って訪問。前回の訪問時には見られなかった特別室を見られるとあってひそかにテンションが上がる。
前回は他に見学者が1名しかいなかったのが、今回はまあまあの盛況ぶり。同じように考えている人が多いのだろう。といっても10名くらい。
おしゃれな階段を上がった2階のすぐ左手に特別室がある。黒田清輝の代表作である『湖畔』や『智・感・情』などの作品をじっくりと鑑賞できる。まず目に飛び込んでくるのは正面に構える3枚の連作『智・感・情』で、それぞれの単語に即した裸体の女性の様子を描いている。近くで見ると輪郭に金泥が施されているのか、背景から女性が浮き上がって見えるのがとても不思議で、この作品群だけ他の作品に比べると画風が際立っている印象がある。智が良い。
『湖畔』は箱根駅伝の場所でおなじみの芦ノ湖畔で、のちに夫人となる照子をモデルにした作品と言われている。構図もさることながら表情が愛らしくて良い。『舞妓』もまだあどけなさと洗練さが同居する女性の表情と、着物のきめ細かな描写に目を奪われる。目の前に備え付けられているベンチに座ってじっと眺める。
欧州滞在中に描かれた『読書』は、これもまた滞在中に関係していた女性をモデルにした作品と言われている。サインが特徴的で「源清輝」と描かれている。学芸員の方に尋ねてみると、これは黒田による一種のユーモアで、海外の人に伝わりやすい名前ということで自身の血縁とも言われている源氏を名乗ったらしい。他にも海外の人に読めるようにアルファベットの綴りを「KOVRODA」に変えたりしている。
常設展示室ではまず高村光太郎による胸像がデン、と構えている。前回おとずれた時からは展示内容が変わっている。中央にあるのは『マンドリンを持てる女』で、これもまた欧州滞在中に描かれておりサインが「源清輝」となっている。常設展示室は一転して見学者が激減、前回と同様にほぼ独占状態である。下絵のみが残っている『昔語り』や、絶筆である『梅林』が印象深い。
『梅林』はほぼペインティングナイフでベタ付けされたような作風になっており、最後の気迫のようなものを感じずにはいられない。トイレはウォシュレット式。
・東京藝術大学美術館
黒田記念館のすぐそばにある。東京藝術大学には3つのミュージアムがあり、そのうちの1つ陳列館においてアートプロジェクト展が開催されている。これは東京都特別支援学校の生徒たちによるアート作品の発表。ここ数年で特別支援学校や施設におけるアート創作が注目されており、今回の企画展もその一環といえるかもしれない。
小学生から高校生までの若い世代の作品で、東京藝術大学美術学部の審査によって選ばれた51点が展示されている。作品は絵画から粘土・陶器など立体のものまでバラエティに富んでいる。それぞれの独自の視点からつくられる作品には大いに感銘を受ける。
https://www.artproject.metro.tokyo.lg.jp/exhibition/
会場内は1フロアでかなりの盛況。どの作品もタイトルとの関連性がユニークで、どういう心情で作られたのかを考えずにはいられない。
藝大アートプラザでは、藝大すべての学生が応募できるコンペティション大会の受賞・入選作品が展示販売されている。これは卒業制作展とは違い、現役学生が誰でも応募できるもので、学生ですでにアーティストとして活動している生徒もいるわけで、それらの作品が一堂に会するのは興味深い。