防衛省市ヶ谷駐屯地(東京都千代田区・市ヶ谷駅)
防衛省のある市ヶ谷駐屯地では一般向けの見学ツアーを開催している。午前の部と午後の部とがあり、午後の部を選ぶと有料で大本営地下壕跡も見学することができる。せっかく観に行くのならということで午後の部を選択、集合時間に合わせて防衛省へ赴く。
正門の近くに見学ツアー対象者の待機スペースの看板があり、そこでしばらく待機していると時間になって担当者による声がけが始まる。名簿と身分証とを照合して入館カードを貸与され、その場でパンフレットも受け取る。
入場ゲートで入館カードを通して入場、まだ少し見学開始時間まであるため、見学者用の待機ベンチで待っている間にパンフレットを読み込む。その間にも続々と見学予定者が増える。午後の定員は20名、午前は40名なのでもっと多いのだろう。
実際に見学するのは大本営地下壕跡〜市ヶ谷記念館〜そして厚生棟という順番になっており、外郭を進むような感じだろうか。もちろん庁舎や隊舎には入れない。ただ敷地外とは違い、敷地内は防衛省の関係者や車両がひっきりなしに行き交っているので、日常では味わえない非日常の空間に足を踏み入れていることは実感できる。
まずは大本営地下壕跡から。裏山を通るような形で進む。敷地内は盛り上がっていて隣の靖国通りからだいぶ高低差がある。崖を掘って作ったような感じになっている。ジョギングしている隊士もいる。ヘルメットを着用して洞窟の中へ入るような感じになる。
中は広々としているが当時のままで残されている部分が多く、見学部分は地下壕の一部。案内説明の担当者による説明がある。入れない奥の通路などはペンライトで照らしながらかつて何があったのかを説明してくれる。
見学スペースの真ん中には通気口があり、空気穴は上まで繋がっている(カモフラージュのために通気口は灯籠になっている)。戦後には米軍による接収を受けて、その名残として「NO SMOKING」の表示がある。また、当時は受水槽を使って調理場や浴槽まであったという。
もちろんトイレもある。水洗式で今でも汚水溝が残されている。和式。
見学できないエリアについてはタブレットで見ることができるようになっているのも面白い。
続いての見学は市ヶ谷記念館。実際の場所からは移築されているのだけれども、三島事件において三島由紀夫が演説をしたあのバルコニーはそのままになっている。むしろ三島由紀夫のイメージが定着してしまっている感もある。
入口のロビーにはかつての時計台や紋章が飾られている。ここで入場料(午後の地下壕見学は有料。午前は地下壕見学がないので無料)を払う。
入ってすぐにある講堂はかつて東京裁判が行われた場所。床がゆるやかな傾斜になっていて正面には玉座がある。現在の講堂内は展示室が主になっていて、ガラスケース内に軍服や砲弾、勲章や銃器など戦争に関連するものが多く展示されている。それらを見る前にまずはこの市ヶ谷記念館がどういう経緯で建てられたのかという歴史を映像で紹介。
そのあとは2階へ。廊下には多くの戦争画が飾られている。ちなみに作者は不明とのこと。
天皇陛下の居室(壁が分厚い)や隣にある総監室が移築されている。総監室はいわゆる三島事件の傷跡がまだ残っており、事件当時に扉へ付けられた三箇所の刀傷が当時のままで残されている。
自由時間が少しだけ設けられているので、専門の担当者(OBにあたる)が一つ一つの解説を丁寧にしてくれるのに付き添いながら見学するも良し、自由に見学するのも良し。疑問点はなんでも答えてくれる。個人的には舩坂弘の軍刀が展示されていたのが興味深かった。市ヶ谷記念館のトイレはウォシュレット式。
市ヶ谷記念館の正面ちかくにはヘリコプターが展示されている。UH-1Hという一世代前のもの。現在はUH1-JかUH2が主に稼働しているという。ミリタリーはさっぱりなのでよくわからないが、エンジンの数やプロペラの数が違うらしい。
順路は最後の厚生棟へ向かう。ジョギングしている隊員が多くいる寮棟を横切りながら途中にある喫煙所が行列になっているのが見える。時勢柄これも仕方ないことなのかもしれない。保育施設もある。厚生棟は見学者に向けたお土産屋がいくつかある。ちなみにコンビニエンスストアーもある。通常のコンビニエンスストアーと唯一違う点は、一般の雑誌の他に「防衛白書」、「水交」といった雑誌? が置かれていること。実際には防衛省の仕事で手に入ることが多いそうなので、見学者が記念に買うことを見込んで揃えているのかもしれない。厚生棟もトイレはウォシュレット式。午後コースの見学時間は2時間半ほど。途中参加・離脱はできないのでまとまった時間を確保して臨む必要がある。