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学士会館(東京都千代田区・神保町駅)
2024年12月をもってしばらくのあいだ休館してしまう学士会館。建物自体も残る部分と解体される部分があるという。歴史ある建物が無くなってしまうのは非常に寂しい限り。1階のみであれば施設利用者でなくても見学できるため、行けるうちに行っておかなくてはと訪問することに。
関東大震災後の昭和3年に竣工された学士会館は、もともと東京大学の先生に対する謝恩会が開かれたことを発端とする旧帝国大学の出身者同士が知識交流や親睦を深める目的で作られた「学士会」によって作られた建物である。日本の耐震構造学の発展に寄与した佐野利器とその門下生である高橋貞太郎が中心となり設計された当時では珍しい耐震・耐火式の鉄骨鉄筋コンクリートで造られている。現在は国の有形文化財として登録されている。
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戦時中の2.26事件では東京警備隊司令部が置かれたり、太平洋戦争時には高射機関銃陣地が設けられたり軍が部屋を使用するなど一種の要塞としての機能を果たしている。戦後はGHQによって接収されたが後に返還され、現在に利用される施設として残されている。宿泊施設やレストラン、会議室などが長い歴史の中で利用されてきた。学士会会員でなくても多くの内部施設は使用できる。
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また数々の発祥の地でもあり、旧館の正面玄関脇には東京大学発祥の地である記念碑、その近くには新島襄(同志社大学の創立者)生誕の地である記念碑、新館のそばには日本野球発祥の地としての記念碑が残されている。館内には学士会の二代目理事長を務めた山田三良の銅像があったり、音栓という効果を生み出す丸ボタンのついている河合楽器の第七号オルガンが残されている。
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何より館内の装飾が美しく、天井や階段に至るまで見所がたくさん。1階の団欒室は旧帝国大学(東京、京都、東北、九州、北海道、大阪、名古屋)にまつわるコーナーもあり、さすが学士会としての存在が感じられる。トイレはウォシュレット式。天井から吊るされた明かりの形状も美しい。
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