見出し画像

森アーツセンターギャラリー(東京都港区・六本木駅 ヒグチユウコ展)

森アーツセンターギャラリーで開催されているヒグチユウコ展CIRCUS FINEL ENDを会期ギリギリになって滑り込みで鑑賞。どこか奇妙で愛くるしい猫の絵など独特の世界観を持つヒグチユウコ作品にはファンが多く、会期ギリギリであるにもかかわらずかなりの人気で日によっては入場制限がとられることも。訪れたのは平日だったのだけれど、それでもすごい人気で週末なんかはこれ以上の混雑だと想像するだけで鳥肌が実る。

こちらの展覧会は世田谷美術館で開催された展覧会を皮切りに、全国各地を巡回し最後の会場となったのが森アーツセンターギャラリーで、ファイナルと名が付けられているだけあって、これまでに開催されてきた各所の展覧会の集大成のような大規模な展示となっている。作品数も非常に多くなっていて、その描き込み具合も細かな筆致で見応えが充分。何より会場の作り込みにこだわりが詰め込まれている。壁紙や椅子、隠れ小窓のような演出など、不思議な世界に迷い込んだような演出方法がところどころにあり感心する。

エリアごとに分かれている壁の色も心地よい

ヒグチユウコというとまず浮かんでくるのは絵本だろうか。しかし絵本以外にもその仕事は幅広く、イラストレーションや挿絵、衣装デザインなど多岐に渡っている。面白いのがオリジナル作品だけではなく、たとえば世界観に影響を与えているであろうヒエロニムス・ボスやピーテル・ブリューゲルの作品を模した絵だったり、変わったところではポケットモンスターやディズニーなどのキャラクタにヒグチテイストを加えた作品なども紹介している。

アマビエみたいなのもいるよ

マジックミラーで仕切られた通路を抜けると次には見世物小屋に迷い込む。こちらでは有名な猫の絵本『ギュスターヴくん』をはじめとして『CACAO CAR RACING』、それに今回の展示タイトルともなっている『CIRCUS』などの作品を展示している。国内でも糸井重里や諸星大二郎、町田康らの作品に添えた挿絵などが紹介されている。

赤い六角柱の部屋

続いては夢野久作、ボリス・ヴィアン、柳田國男、ジョージ・オーウェルといった個展作品をテーマにした絵本やデザイン画が展示されているほか、自身のオリジナル作品からは『せかいいちのねこ』や『いらないねこ』『ふたりのねこ』といった猫にあふれる作品や、ワニに恋した少女の『すきになったら』や、絵本で描く御伽草子『うらしま』などのバラエティに富んだ作品が紹介されている。続く隣の部屋は和室風の設えになっていて、掛け軸やヒグチユウコ風の風神・雷神、アマビエなどのこけしが揃っている。映画『シャイニング』を彷彿とさせる順路を抜けると今度は衣装の部屋。これまでにデザインを手がけた衣装が並んでいる。

衣装というかもはやアート作品である

個人的に注目したいのは次にある映画ポスターのコーナー。とにかく好みの映画のポスターが並んでいる。『サスペリア』に『ミッドサマー』、変わったところでは『風の谷のナウシカ』をイメージしたポスターがあったりする。嬉しいところではホドロフスキーの『リアリティのダンス』が挙げられている。そこに隣接するようにしてGUCCIとのコラボレーション作品が紹介されているコーナーもある。

GUCCIはセンスがあるぜ

最後はこれまでに発行されてきた画集などの紹介と豆本の展示を経て映像コーナーへ。実際に展示会で紹介されている『終幕』を描いた様子や(一つのパートごとにデザイン→彩色して次のパートへ。それを繰り返して一枚の絵にしている)、ギュスターヴくんをテーマにしたパペットアニメーションが紹介されて終了。

映画コーナーにはポスター案とかもいっぱいある

かなりの量なので一つ一つを細かく見ていると3時間くらいかかるかもしれない。普通に観ても2時間ほどは必要な作品。正直なところ撮影する人も多いので順路通りに見ると混雑に巻き込まれて自分のペースでは観られない。むしろ混雑を避けて順番を無視して観たほうがたっぷり観られる。実際、この時も閉館間際になると序盤の展示には人がゼロになり貸切状態で観られたので、混雑状況をうまく調整しながら観た方が利口といえるかもしれない。トイレはウォシュレット式。

個人的にはこの部屋が良い


いいなと思ったら応援しよう!