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村内美術館(東京都八王子市・八王子駅)

村内美術館は家具・インテリアの販売を行なっている村内ファニチャーアクセスでコレクションした西洋絵画を公開するために開設された美術館。広大な八王子本店の店舗内に専門のフロアーを設けて美術館としており、全部で7つの展示室に分かれている結構な面積の美術館である。八王子駅前から八王子本店へ直行で向かうシャトルバスが出ているのでそれで向かうのが良いかもしれない。

開設当時は西洋画を中心に展示していたものの、法人化したタイミングで展示内容を見直し、西洋画の他に(主に椅子を中心とした)家具の展示を一緒に行うという、家具を扱っている会社ならではの少しユニークな展示方法を行なっている。

椅子がでかい

入り口ではBMWイセッタ300エクスポートとメッサーシュミットKr201ロードスターがお出迎え。

車が可愛い

展示室1と2では様々なデザインの椅子が配置されている。またそれに関連するように椅子のある風景を描いた絵が多く展示されている。中でも気になったのが建築家で知られるル・コルビジェが設計していた椅子があったこととはいえ、建築家の磯崎新、SANAAやサーリネンの椅子も展示されていたことから考えると、建築家と家具デザインはそれほど遠いものではないのかもしれない。MoMAなど海外の美術館で保管されている椅子も多い。

ウサギ型の椅子が可愛い
椅子の宝石箱や

展示室3では椅子に加え、家具も多く展示されてている。ピサロの西洋画に合わせたソファや置き時計、逆に日本画に合わせて蒔絵の施された箪笥や座卓が展示されている。繊細な漆塗・蒔絵の装飾にはため息をつくばかり。

工芸の美に圧倒される

展示室4と5は西洋画を中心としたコレクション展示となっており撮影はできない。展示室4ではフランスのバルビゾン村周辺で風景画を中心に描いた通称バルビゾン派の絵画としてコロー、ミレー、ルソーらの作品がある。また関連する画家としてクールベの作品も併せて展示されている。以前この美術館にあった絵画がフランスに国宝として戻された記事が併せて掲載されている。それほどの作品までコレクションしていたことがあるというのに改めて驚かされる。交通の便さえ良ければ美術館として独立して発展していたかもしれない。

ここから西洋美術の間

展示室5では印象派とエコール・ド・パリを中心に展示している。シスレー、マネにパスキン、ルノワール。ルノワールの息子と子守の女性を描いた作品が展示されている。この息子がのちに『大いなる幻影』『フレンチ・カンカン』など映画監督として大成したのは知らなかった。藤田嗣治、キスリング、ローランサン、ユトリロらの作品が花を添える。中でもキスリング。相変わらずの妖艶さでギラギラした色彩に心を奪われてしまう。ほかにもヴラマンク(佐伯祐三などに影響を与えた)の作品など見どころがいっぱい。

ここまで西洋美術の間

展示室6ではパヴァロッティの調べに乗せてベルナール・ビュフェのヴェネティアの風景が紹介されている。同じ部屋には智内兄助の近年の作品もある。

ヴェネティアっぽく

展示室7は現代フランスと日本の絵画。あまり知らない画家が多かったものの、中でもカシニョールの作品に描かれる女性は個人的には割と好み。しかし何よりも圧巻だったのは、展示室6でも作品が一部あった智内兄助の作品。展示室の半分を使って彼の作品を展示している。着物の少女がほとんどの作品では出てくるが、それが人間のような物怪のような、死を匂わせており且つ妖艶さを備えている。日本画のような西洋画のようなどちらとも取れる画風で鮮やかな彩りを巨大なキャンバスに解き放つ。キャンバスも菱形だったり扉式だったりと様々。海外でも高い評価を受けているという。正直ここに訪れて初めて知った画家だったのだけれど、この人の作品は追いかけてみたいと思ってしまった。

ボス『快楽の園』を彷彿とさせる観音開き

最後には国民栄誉賞を受賞した長嶋茂雄を記念した展示がある。読売ジャイアンツファンなのだろうか。ちなみに見学者はゼロ。スタッフも特に配されていなかったので完全に貸切状態。理想的な環境。トイレは洋式。

村内はフランス絵画の殿堂


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