そごう美術館(神奈川県横浜市・横浜駅)
横浜そごう美術館。そごうデパートの中にありながらシンプルな画廊やギャラリーではなく、本格的な美術館として存在しているこちらでは、企画展としてオールドノリタケ&若林コレクションを開催。陶器を中心にしたコレクションである。
オールドノリタケとは明治時代から戦前にかけて欧米へ輸出した陶磁器の名称で、ノリタケカンパニーリミテド社が作っていた繊細な絵付けによるもの。ちなみにノリタケといっても個人名ではなくて地名から取られたもので、財閥である森村組の森村市左衛門、大倉孫兵衛、飛鳥井孝太郎が設立した会社である。森村市左衛門は大学博物館でよく名前を見かける人物で、出身の慶應義塾大学をはじめ早稲田大学や北里研究所にも多額の出資をしていることで知られている。
アール・ヌーボーやアール・デコ、ジャスパーウェア、クロワゾニスムといった流行を取り入れ、アメリカでは特に人気を博した。国内では限られた人にしか目に触れる機会がなかったため、レアな意味でも非常に興味深いコレクションとなっている。金彩やラスター彩など、とにかく目を引くような瀟洒なデザインはブルジョワジーそのもの。代表的な技法としては「盛上」(外国でも「MORIAGE」と呼ばれている)といって、器の表面に粘土や絵の具を盛り上げて浮立たせる技法が知られている。会場ではそれぞれの流行デザインや技法、モチーフごとに紹介されており、その細かな芸術性にため息が出てくる。
もちろん簡単に入手できるわけではないけれど、もともと食器などを目的として作られている陶器、頑張れば手が届く金額で現在も取引されているので、気に入ったら購入も…アリかもしれない。会場の最後には食卓に並んだオールドノリタケ陶器のコーディネートがあり、どんな風に自宅の食卓に並ぶのかイメージできるのも面白い試み。トイレはデパート内にあり、もちろんウォシュレット式。