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21_21デザインサイト(東京都港区・六本木駅 クリストとジャンヌ・クロード展)

六本木をアートの街に押し上げている存在の一つが21_21デザインサイト。安藤忠雄の設計による面白い建築でもある。現代アートを中心に展示しているが、これまでの展覧会ではタイミングや嗜好で合致する機会を持てず二の足を踏んでいたのが、今回は興味深い展示があったのでこのタイミングを逃してはいけないと訪問。

パリの凱旋門を包み込んだことで話題になったクリストと、公私に渡るパートナーであるジャンヌ・クロード。この二人が長年あたためつづけてついに作り出した遺作ともいうべきその『包まれた凱旋門』を中心にして、彼らの夢のために動いた大きなプロジェクトを紹介している。

パリのシンボル「凱旋門」を包む計画

安藤忠雄が同じく設計した仙川にある東京アートミュージアムと非常に似た構造をしているミュージアムで、狭いスペースの中に効果的な立体の動線を作っていて、かつ展示品も豊富に揃えられるスペース、開放感のある天井といった要素がまず目を引く。これよこれ。機能的かつスタイリッシュな建築。工業デザインとしても良い。

広くないスペースを機能的に演出するというミュージアムの理想系

入口から地下へと潜るような形で階段を降り、まずは映像で彼らのこれまでの作品を振り返る。彼らの作品というと「包む」のが大きなポイントになっている。小さな美術品から大きな構造物まで。はたまた大自然に至るまで「包む」。湖に浮遊式の埠頭を浮かべてそれを包み込んだ『フローティングピア』や、布でできたフェンスを砂漠や山野へ横断させた『ランニングフェンス』など、俯瞰で眺めるレベルの大きさの作品を見ると彼らの作品のプロジェクトの広大さがわかる。多くの人も関わっている。

とにかく広大な作品を作っている

凱旋門を包み込む、というこの壮大なプロジェクトにおいても実に多くの人が携わっている。巨大な建造物を包み込み、一定の期間を耐えうるだけの布、素材や構造(包み方)、強度といった諸問題も全て解決しなくてはならない。アイデアを出すのはたやすくともそれを実行するための苦心がやはり大きい。当然ながら予算もかかる。クリストはこのプロジェクトを動かすための費用を捻出するために、多くのドローイング作品を書いてそれらを販売して行くことで工面したのだという。

こういったドローイングを販売して資金を稼いだ

クリストは2020年に亡くなり、二人の夢だった包まれた凱旋門が実に50年の歳月をかけて完成した時にはその実物を見ることは叶わなかった。けれども彼らの残した日常に非日常を落とし込んだアートは今もまた、観た人々の心に残り、手がけた人々の誇りとなって残っている。トイレはウォシュレット式。洗面台の排水が弱く汚水が溜まりがちなのが玉に瑕。

本当に多くの人たちが関わったのです


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