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東京ステーションギャラリー(東京都千代田区・東京駅)
東京ステーションギャラリーでは、企画展としてベルギーを代表するアーティストであるジャン=ミッシェル・フォロン「空想旅行案内人」を開催。当たり前ではありながらも見逃してしまうような世界の有り様をシュールな絵柄で描いている。自身が感銘を受けたマグリットの絵画世界を彷彿とさせるような不思議な世界が展開される。
パリでドローイングを描いていたところアメリカの雑誌で注目され、『ザ・ニューヨーカー』や『タイム』などの表紙を飾るようになると世界中で評価されるようになり、世界中の美術館で個展が開催されるほどの作家となったフォロン。美しい色彩、しかもそれでいて色の種類は少なめという作品の中で、ぼんやりと浮かび上がってくる人物像だったりがまさに空想世界のようである。展示室の冒頭ではアニメーションも展開され、それもまた空想世界への案内であるかのよう。
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フォロンの作品にしばしば登場するのがリトル・ハット・マンという帽子を被った人物。フォロン曰く「私に似たある誰か」であると同時に「誰でもない」とされるこの人物が多くの作品の中に点在する。
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また、印象的なのが矢印の絵で、町中にあふれる矢印に取り憑かれたフォロンは、矢印を見かけるたびに写真を撮り、作品の至る所にも描かれる。その方向はさまざまで、特に特徴的だったのは都会を描いた、あらゆる方向に矢印が伸びるという作品。まるで人生のようである。それを意図してなのか、展示室の矢印もどこを順路にしていいのか迷う箇所も。
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ここで展示室は下のフロアへ。東京ステーションギャラリーは東京駅の中にあることから、その内装は古い東京駅の姿をとどめていることでも注目したいところ。螺旋階段を下りながら内装の煉瓦を愛でるのも楽しみ方の一つ。この辺りも設計者の辰野金吾のこだわりなのだろうかと勝手に想像する。ちなみに展示室の最後も東京駅の丸の内北口を見下ろす回廊になっていて、東京駅の遺構が残されているので、展示室の作品とは別に見どころがたくさん。
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下のフロアへ行きついて扉を開けると次の展示室が開ける。こちらは展示室の壁も古い東京駅の内装を一部で生かしているのも特徴。後半の展示ではメッセージ色が強くなる。フォロンは環境破壊や人権問題、戦争といった人間社会の現実に厳しい目を向け、告発するような作品を多く手掛けている。特に戦争に関するような作品では容赦なく死と隣り合わせである現実を描いている。また『世界人権宣言』のための挿絵なども手掛けていることも注目。
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展示の終盤は「つぎはどこへ行こう?」と題して、晩年の作品を中心にした作品で構成される。『ハートの木』『大天使』など、その色彩に裏打ちされた割と優しめな作品が展示される中で、個人的に鷲掴みされたのが『ひとり』という作品。「世界はこんなに広くて美しいのに、どうして一人なんだろう」という寂しさと、「世界はこんなにも広がっていてどこにでも行ける」という希望と、「どこにでも行けるのにどこへも行けない気がする」という不安とが同居するようで、この作品だけでも展覧会に来る価値があるくらい。トイレはウォシュレット式。
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