東京藝術大学美術館(東京都台東区・上野駅 卒業展・修了作品展)
芸術大学として国内で唯一の国立大学である東京藝術大学。大学内に美術館を擁する芸術大学の巨塔といっても良いかもしれない。今回は卒業展および修了作品展が開催されており、未来の芸術家が生まれる可能性の高いこのイベントは開催前から注目度も高く、先着順の予約制である今回、予約開始から30分を待たずに全時間帯が売り切れという人気である。
これまで東京藝術大学で開催されてきている展示会は基本的に大学美術館と陳列館が開放されていることが多く、そちらの二つに関しては行ったことがあったものの、東京藝術大学にはもう一つ正木記念館という展示室があり、普段は開放されていないこちらの正木記念館も開室するという情報もあり、さらに期待感が高まる。
まずは美術館の会場から見学。ロビー階および3階と2階と地下階にそれぞれ展示会場があり、印象的な螺旋階段で行き来する。美術館はさすがにメインというところか、修士課程の生徒による展示会場になっておりクオリティも格別。日本画、油画、彫刻、工芸、デザイン、先端芸術表現、美術教育、グローバル・アート・プラクティクスの各部の作品が各フロアに散りばめられている。ここの会場が最も見学者も多く、じっくりと観ていると時が経つのも忘れてしまう質と量である。トイレはウォシュレット式。
隣にある陳列館でも同じく修士による展示。1階が文化財保存学、2階が建築に関する展示となっている。興味深かったのは文化財保存学で、芸術大学というと自分から何かを発信するクリエイティブが中心というイメージだったけれど、文化財を保存したり、劣化している美術品を修復したりという、どちらかというと裏方ではあるけれど、実は美術界にとって最も重要な仕事も誰かがやっているわけで、文化財の保存や複製・修復についてを展示している。トイレは無いが隣の棟にウォシュレット式がある。
そしていよいよ訪れるのが正木記念館。東京藝術大学の顔とも言える門をくぐったすぐそこにある屋敷のような建物。前身となる東京美術学校の校長でもあった正木直彦の功労を祈念するためにつくられた鉄筋2階建ての近世和風様式の建物。こちらの2階が書院造りの和室になっており、工芸作品がいくつか展示されている。なお1階は近現代美術史・芸術史研究室がある。トイレはなし。
これだけでも充分な量だというのに、今回の展覧会はそのほかの建物でも展示されているのが驚きで、ラーニングコモンズ(工芸とグローバル・アート・プラクティス)、グラウンド(彫刻、建築、先端芸術表現、デザイン)、総合工房棟(デザイン、先端芸術表現、デザイン、建築)、中央棟(デザイン、先端芸術表現、グローバル・アート・プラクティス)、彫刻棟(彫刻)、絵画棟(デザイン、油画、先端芸術表現)と、あらゆる場所で修士・学士いりまじっての展覧会が開催。その一つ一つが尋常じゃない部屋数で、ひとまわりするだけでも時間が足りない。1日かけて行くような祭典である。トイレはいずれの建物もウォシュレット式。