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みょうがと勧誘と落選と


 今年はみょうがを刻むことになった。大量のみょうがをご近所から頂いた。

去年のnote創作大賞で初めてのエッセイが中間審査を突破して、最終審査の結果待ちのソワソワした時期にご近所から大量の栗を頂いた。ちょうどいいので心の隙間を埋めるべく、焼きりんごの栗のケーキを作ろうとせっせと焼き栗の鬼殻をむいてはニヤニヤしたりクヨクヨしたりしていたのだ。

 そして、今年。中間審査発表を前に今年も発表日の予想が外れまくっていた。13日(金)の予想が外れ、なんとなく縁起が悪そうな日程なので今日じゃなくて良かったと思ったり。さすがに17日(月)は間違いないだろうと思ったのだが外れ、ソワソワメソメソするのに耐えきれず一周廻って平常心に。

18日(水)朝、トイレの3日めくりダジャレカレンダー「ご教訓カレンダー」には「ヤケありの女の子」とある。落選してヤケになる自分が想起されて勝手に次にめくると「まんじゅう1個で可決されました」と。いいじゃない、いいじゃないwww そのままにすることに。

 そして、大量のみょうが刻む。山形のだしを作る事にした。色々な夏野菜を細かく刻んで出汁醤油で和える山形の郷土料理で冷ややっこにかけたり、うどんやそうめんにかけたり、ご飯にかけたりすると爽やかで美味しいのだ。いつもはみょうがが高くてたくさん入れられないのだが、今回は贅沢にたっぷり入れられる。
 たくさんあるみょうがから刻むためのものを選ぶ。「選ぶ!!」途端に動揺してしまう。どれもこれも選んであげたくなって、むやみに数が増える。
これは相当ほろ苦いだしになりそうだ。

 なす、きゅうり、山芋、オクラ、しそ。そしてみょうがはたっぷり。どれもただひたすら細かく切るのだが、均一に細かくならない。心が乱れている。集中力にかけ、実は足にも力が入らない。テレビではNHKの「あさイチ」で応援歌特集をやっていた。色んな応援歌を聞きながら、前向きになったり涙したりしていた。やっぱり私、不安なんだな。
 10時55分。玄関チャイムが鳴る。結果発表が11時と踏んでいるので、「なんだよ、こんな時に!」と思って玄関を開ける。年配の女性2人。宗教の勧誘の方々だった。丁寧に応対したが、興味がないのでお帰り頂いたが「暑いので気を付けてください。」と声かけした。こんな時だ、あちらの神様に失礼があってはいけない。
 
 11時。PCを立ち上げる。真っ暗な画面にボサボサ髪の自分が映る。発表が気になって、ヘアサロンに行く気がしないでいる。とうとう昨日夫に「そろそろ髪を切って来たら?」とおずおずと言われてしまっている。心のどこかで突破相なって、気分良くヘアサロンに行きたいと思っている。美容師との会話も弾みそうだ。

どうしてだ、今日も発表がない。

19日(木)今日こそ発表だと思う。なぜなら”20日”は”中旬”ではない!と私は思う。だが、今日は彼岸の入りだ。墓参りに行かねばならない。13日(金)から毎日9時~17時の1時間ごとに仏壇に線香をあげて鬼籍の両親に中間審査突破の願掛けをしている。線香の煙が故人の糧ということなら正直、両親は腹が千切れんばかりだと思う。それでも彼岸の入り。墓参りに行く。今日も桜の落ち葉がどっさり。さっきまでの雨でびちょびちょの落ち葉を片付ける。大量のダンゴムシの赤ちゃんが散り散りにうごめく。”赤ちゃん”だからといって、可愛くはない。普通に気持ち悪い。でももう慣れっこである。また雨が降って来た。軍手に雨が浸みて臭い。それでも墓を綺麗にして花を手向け、線香をあげる。「中間審査、突破しますように!」

 帰宅してPCの電源を入れる。「中間審査発表」の文字。私のペンネームはなかった。

 昨日のNHKあさイチの応援歌特集の、ミスチルの「終わりなき旅」が心に響く。”カンナみたいに命を削って情熱を灯せて”いただろうか?いや、去年の思いがけない中間審査突破にあぐらをかいて、ただ今年も何か出さなきゃと焦った。安易だったのだ。去年の出品作より、全然熱量が足りなかった。1度冷静になろう。そうは言っても、やはりめげている。

 中間審査突破は成らなかった。それでも日常は続く。夕飯と明日の朝食用のサラダと明日の弁当のおかずを作らなければならない。芝刈りもヘアサロンにも行かねばならない。貯め込んだ面倒なことばかりでいっぱいだ。くすぶりそうな、こんな時こそ応援歌だ。

”難しく考え出すと 結局全てが嫌になって
そっとそっと逃げ出したくなるけど
高ければ高い壁の方が 登った時気持ちいいもんな
まだ限界だなんて認めちゃいないさ

閉ざされたドアの向こうに新しい何かが待っていて
きっときっとって僕を動かしてる

いい事ばかりではないさ でも次のドアをノックしたい
もっと大きなはずの自分を探す 終わりなき旅”


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