Summer Pockets REFLECTION BLUE 加藤うみ√ 感想
※注意
紬→識→鴎→のみき→蒼→静久→しろは→ALKA→Pocket→うみ
まで読み進めた時点での感想です。過去√のネタバレ要素も存分に書くことになります。基本的にサマポケのメインストーリーを全て読んでいる人以外は読まない方がいいと思います。
うみ√、本当はのみき√の次にやる予定でした。蒼・静久・しろはは絶対重い内容でのしかかってくるだろうし、その前にひと休憩入れるためにやろうかなって思っていたらしいです(読み終えた今思えば「何が休憩じゃ」って感じですが…)。でも4人の√を読み終えた時点でうみ√、消えちゃうんですよね。本土へ帰ろうとした羽依里をうみが止めてくれないんですよね。
結果的に、うみ√は他全ての後にやって大大大正解でした。ALKA√の感想(この段階でうみ√までやり終えている)ではこんなことを書きましたね。
うみはまず、自分に構ってくれない父親から逃げました。そして、行く先々での夏休みに会った人たち、自分に親切にしてくれた人たちからも実質逃げてしまいました。その夏の中には、自分を本当の娘のように大切にし、危ないことをしていたら止めてくれた、悪いことをした時には叱ってくれた羽依里との別れもありました。あの夏は、うみにとって「こんな未来もあるかもしれない」と大きな勇気と希望と与えてくれたのではないでしょうか。
うみは同じ期間の夏休みを繰り返す間に、たくさんの出会い、思い出を得ることができた、それは事実でしょう。それでも、うみは毎回毎回「同じ人たち」から忘れられてしまうのです。しかも、お別れの言葉を告げることすらできない。過去に戻る際のうみの表情は、しろは√で見ることができます。まるで、全てを諦めたかのような表情です。辛くないわけがないんですよ。
この√は、そんなうみに対して大きな勇気と希望と与えてくれた(はずの)お話となっています。以下に時系列順に感想を書いていこうと思います。
ALKA√とPocket√を終えてから戻ってきてうみ√を開始した直後の素直な感想は、「敬語でキビキビと羽依里に話しかけてくれるうみちゃんにまた会えて嬉しい」でした。蒼√以降で変わってしまってからは、もうあのうみには会えないのかな、と寂しかったものですから。
「お醤油とっておとーさん」「はっ」「変な呼び方しちゃった」
サマポケを開始した直後から聞くことのできるうみのセリフ。共通√を飛ばさない主義の僕は、何度もこの言葉を聞いていました。全てを終えた今思えば、うん……。羽依里は本当にうみの……ね。
うみ√に突入すると、一人で海岸で釣りをしたり、駄菓子屋で毎日スイカバーを買って食べていたり、誰もいないため池で突然技の名前を叫びだしたり、そんなうみの様子を見ることができます。
…。
いや、
あのさ。
完全にしろはの行動そのものじゃん…!
母娘だからって、行動がいくら何でも似すぎですよ…(この時点で胃痛)。
上のスクショはしろは√、下のスクショはうみ√のものです。
うみ、羽依里としろはの間に生まれた子供だものね…そうなっちゃうよね。
羽依里に肩車をされ、オオクワガタの採取に成功するうみ。素っ気ない対応ばかりのうみでしたがここでやっと笑顔を見せてくれます。
いや、だからしろはそっくりの「にへらっ」て感じの笑顔、やめてくれよ…(止まらぬ胃痛)
その翌日には、お父さんに買ってもらったヘアピンを無くしてしまった少女を助けるために、一緒に浜辺を探すことになります。
うみの被る帽子は、昔お父さんに買ってもらったものでした。うみ本人はその帽子を特別に思っていますが、羽依里の言葉によってお父さんが自分のことを想ってその帽子を買ってくれたということを理解し、一層大事にしようと思うのでした。
暑い中でうみが無理をしてヘアピンを探すのを羽依里は止めますが、帽子の件から、それ「も」自分のことを想って言ってくれているんだと理解するのでした。今目の前にいる休憩を促してくれる羽依里と、帽子を買ってくれたお父さんは同じ人だものね…。
ヘアピンを無事に見つけ出し、うみからの信頼度を高める羽依里ですが、とある事情ですれ違いを起こしてしまいます。そしてうみは島の子どもたちと団結し、少年団の秘密基地を占拠してしまうのでした。
秘密基地に立てこもる子供たちとその両親の言い争いが始まります。その中で一人、うみだけは口を開きません。
最終的に子供たちが父親たちに敗北し、捕まって怒られているところで、うみは怒りを露わにします。
「やっぱり大人なんて信用できない!」「嘘つきばっかり!!」
周りの子どもたちには心配し、叱ってくれる両親がいる。自分にはそんな両親はいなかった。今まで長い間ずっと感じていた寂しさに他の子どもたちに対する嫉妬が混じって感情が抑えきれなくなっているんだと思います。
周りが見えなくなっていたうみは、登っていた秘密基地の屋根から落ちてしまいます。間一髪のところでうみを助けることに成功した羽依里は、危ないと何度言っても言うことを聞かず、うみより年下の他の子どもたちの前で危険なことをしていたうみに大きく叱るのでした。
羽依里からの愛情に満ちた叱りは、うみの心を大きく満たしてくれました。自分を父親の代わりだと思っていいと話す羽依里に、うみは安心しきった顔を見せるのでした。うみは一人でこんな時代に来てしまって、寂しく辛い気持ちになったこともあったんじゃないかな…と考えると胸が痛みます。
しかし本当に、この笑顔を見るたびに、しろはを思い出してしまうの辛い…
仲直りし、お祭りに行くことで更に親交を深める2人。
数日後、羽依里はテレビに自分の高校の水泳部が全国大会に出場する放映を見てしまい、過去のトラウマを蘇らせ、心を重くしてしまいます。
翌日、買い物に行った帰り道、浜辺で感情が抑えきれずに砂浜にうずくまってしまった羽依里をうみは優しく抱き留めるのでした。羽依里はうみに抱かれ、涙を流しながら気持ちを吐き出していきます。
愛情に飢えていたのはうみだけではありません。羽依里も父親に叱ってほしかった際に、ただ呆れられ拒絶されてしまった過去があります。羽依里はうみの前ではお父さんで、大人でいなければいけないと思っていたのかもしれませんが、まだ17歳、高校生なんですよね。
自分なんていらない人間だったんじゃないかと自己全否定の感情を吐き出す羽依里に対し、自分は鷹原さんとこの夏に一緒にいられてよかったという言葉を返すうみの姿がそこにありました。
「いらない人間だなんて言わないでください」
「鷹原さんがいない夏なんて、もう想像できません」
うみが「この夏」をしっかりと肯定するの、あまりにも嬉しすぎるとしか言いようがないです。
ALKA√の最後の場面でうみは「初めて夏が終わってほしくないと思った」という感情を露わにしていました。うみにとって、この夏は「正解」ではないはず。この夏が終わってしまえば、うみはまたタイムリープして別の夏をスタートさせ、両親と楽しく過ごす夏休みが来るのを信じるのですから。でもうみは「この夏」の羽依里に父親らしい愛情を貰ったことを忘れないし、今後の糧にするんじゃないかなと思います。「この夏」が終わってしまえばうみは「この」羽依里とはお別れなんです。絶対にもう会えないんです。
その夜、水泳部の全国準優勝の結果と共に、羽依里を待つ仲間たちの姿が放映されるのでした。こんな温かい仲間たちがいるのに羽依里は逃げるしか道がなかったのか、と思わないでもないですが、去年は仲間たちの理解も足りなかったのかしら。もしくは羽依里の拒絶がそれほどに大きかったのか。
羽依里の水泳の実力がここまで高かったのか、とこの√にしてようやく(うみ√を最後に読んでいるからですが…)わかるわけです。そのレベルで打ち込んでいたものが突然全くできなくなったらそりゃ辛いよね…。
(1年ブランクがある人間を全国準優勝が呼び戻す辺り、羽依里の水泳の実力はテニ〇リの雪村〇市くんレベル?とかここで考えてしまったのは秘密)
その後のうみの「休憩は終わりですね」という言葉には、SS鏡子編のラストの瞳の「夏休みが終わったんだよ。鏡子」という言葉と似たようなものを感じます。夏休みってなんなんでしょうね。立ち止まって自分の心の中を整理して見つめなおす時間なんでしょうか。自分は何がしたいのかな?とかね。
羽依里はブランクを取り戻すために、「この島の」仲間たちに応援されながら水泳の猛練習を開始します。夜にはしろはが来てくれて、素っ気なくアドバイスをくれるのでした。そのアドバイスは、かつてこの夏が始まったばかりの時に羽依里がしろはに言ったのと同様のもの。それをちゃんと覚えててくれてるし、他の仲間たち同様に応援もしてくれる。不器用でも、本当にいい子なんだから…。
羽依里はついに過去の自己ベスト記録を出すのでした。自分をお父さんの代わりと思ってくれる、自分をまっすぐに認めてくれる小さな女の子の存在、それは羽依里にとってどれほどに大きかったのでしょうか。
夏休み最終日、羽依里は本土へ帰ります。帰る船に乗ろうとする羽依里にうみは後ろから抱き着き、堪えきれない涙を羽依里の背中に湿らせながら「ありがとう…」と呟くのでした。「この」羽依里は、同期間の夏休みを頑張ってずっと一人寂しく何周も巡っているうみに、本当に大きな勇気と希望を与えたんじゃないかと思います。この羽依里のようなお父さんが待っている未来が、きっとそんな未来があるはずだから……と。
「ちょっとだけ……ばいばい」
次にうみが会う羽依里は、「この」羽依里ではないし、「この」羽依里にはもう二度と会えない。それがわかっているのはうみだけ。羽依里にはこの言葉の真意は伝わりません。それでいいんです。「この」羽依里が過去を乗り越えて、先へ進んでくれる。それだけで、うみは嬉しいのですから。
俺を見送るみんなより、一番近い場所で、俺を見送ってくれている。
潮風に帽子が飛ばされないようにしっかりと手で押さえながら。
蒼√の感想で、人と人とを結ぶ、想いの込められたアイテムがこのゲームには幾つか存在していると書きました。うみが大事に被っている帽子もその一つだと思います。お父さんがうみのことを想って買ってくれた帽子、それをしっかりと手で押さえる動作は、そのことに気づかせてくれてありがとう、という意味もあるのではないでしょうか。というか絶対にあります。
「はい!また……!」「また夏に!」 再会を約束する言葉を交わす。
この羽依里はもううみには会えません。他の感想記事でも何度も書いたことです。「この」夏はもう二度と来ないんです。二度と来ない、取り戻せないからこそ、一つ一つの時間を大切にしていきたいよね。
うみ√を前半に見た人は、うみとの出会いによって過去のトラウマを乗り越える羽依里に感情移入を強くするんじゃないかと思います。それだけでも心温まるお話ですから。でも、ALKA, Pocketとストーリーを読んだ後にうみ√を読むと、羽依里視点だけではなくうみ視点で強く感情移入してしまうのです。同じ期間を何度も周回するうみに大きな希望と勇気を与えてくれたこんな夏もあったんだな…と。
Summer Pockets REFLECTION BLUE、一周を終えました。
優劣なんて付けられないレベルでどの√にもそれぞれの良さがありました。最高の夏休みをありがとう。
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