LOOPERS -ルーパーズ- 感想
せっかくプレーしたので感じたことを書きたいと思います。
プレー中のスクショは一切撮っていないため、間違ったことを書いてしまうかもしれません。
過去に書いたサマポケでもナナシスでも、自分はどうにも感想を書く際に粗筋を事細かく書いてしまうきらいがある気がするので、そうならないような練習ということで。
登場人物は全員ハンドルネームのようなもので呼び合っています。本名からそのまま取ったキャラが大半ですが、それでも「現代の若者~」って感じがします。位置情報ゲームが流行っていてストーリーの鍵となっていたり、いつのまにか人から注目されることが目的となってしまい本来の自分の好きを忘れてしまう、なんてのも現代らしいですね。
主人公のタイラ。只の位置情報ゲームバカ、と称されますが、正直なところ最初から最後まで何でもできちゃうハイスペックなキャラとして描かれていたと思います。位置情報ゲームを初めてプレーするどの人に対しても「センスあるなあ」と手放しに誉めるところとか、彼の人の良さがにじみ出ているなあと。ヒロインのミアはすぐにタイラ信者になっちゃいました(無感情の少女が段々と感情を取り戻していくストーリー、やはり好き)(そんな少女が負けず嫌いを発動させたりするともうたまらなく好き)。ただ、タイラはライトノベル特有の(僕が読んでいたのは10年前とかなので情報が古いかもしれない)難聴系鈍感主人公ではなく、ミアから向けられる好意にも気づいていたと思いますし、無駄にハーレム展開にならなかったのは高評価したいところです(これは単に僕の好みの問題)。
ストーリーの至るところでタイラは「宝探しは宝だけが目的じゃない、その宝を見つける過程がもまた面白いんだ」と言っていました。自分は旅行やライブ遠征が好きで、それらの計画を立てる段階から既にワクワクしている、なんならその時が一番楽しいまであると思っているような人間なので、似たようなもんかなと想像し勝手に共感を覚えていました。それでなくても、どんな環境であっても人生の全てを楽しもうとする彼の人間性は眩しく見えますし、こんな真っ暗なご時世でも彼なら楽しく過ごせているんだろうなと容易に想像できます。
努力は夢中には勝てないといいますし、全てを楽しいに変えてしまえる人間って割と無敵なんじゃないかと思います。僕が過去に観測した範囲では、大学受験の最上位層なんかはもはや受験勉強ゲームを楽しんでいたように見えましたし。逆にといいますか、登場人物の一人のレオナは両親のいいなりとなって受けた中学/高校受験に失敗し、そこで初めて両親と衝突して自殺寸前まで追い込まれてしまっていました。
中学受験、段々と周囲の人と遊べなくなるのも辛いですが、その周囲の人が自分の辛さを全然わかってくれないのが一番心に堪えるところなんですよね(経験談)。レオナとヒルダはお互いに相手のことを大切に思っている描写が何度もありました(ホラー要素がとても苦手なヒルダが化け物と化したレオナに何度も会おうとしていたの、好き要素)が、きっとレオナの自殺未遂現場を見るまではヒルダはレオナの辛さをちゃんと理解していなかったんじゃないかなと思います。
失いそうになって初めてその存在の大切さに気付く、このストーリーの一つの主題なのではないでしょうか。ヒルダにとってのレオナ、タイラにとってのミア、ルーパーズにとっての時の渦の世界。
時の渦の世界、そこは何を浪費しても明日には元に戻っていますが、記憶以外の全てを明日に持ち越せない世界となっていました。写真とか記録とか諸々の数値とか、そういった蓄積を楽しむ人間にとっては地獄でしかないなって素直に思いました(元音ゲーマー、現ソシャゲ民並の感想)。ジョー・ホリー・リタポンはそんな現代の若者を反映したキャラとなっており、タイラが来るまでは時の渦の世界で苦しそうに過ごしていました。こんな世界でも日常を楽しむことができる人間は現代では中々いなくて、その稀有な例が主人公のタイラなのでしょう。楽しさは自分で見つけ出すもの、と彼は言っていましたが、これは本当にその通りだと思います。楽しさや幸せの基準を他人に置かず、自分の基準で判断できるようになりたいよね。
後半の展開はなんとなく予想はできていました(ミアがこの世界を構築したんじゃないかな、ミアだけがこの世界に残りそう、ミアはもう命が長くないんだろうな、程度。実際には「長くない」どころではなかったけど…)。
とはいえ、観覧車の中で一生終わらない宝探しをタイラに提案するシーンは胸に強く響くものがありました(花火さん、空気を読んでください)。タイラの夢はわかっているし、それはこの世界では叶わない。それでも自分はタイラとずっと一緒にいたいと思ってしまう気持ち。ミアだけが時の渦の世界に残り、幻影となったルーパーズの女性陣に対して「でもタイラは一番大切な宝(ミア本人)は見つけてくれなかった」(うろ覚え)というような本音をうっかり漏らしてしまうところなんかも、ミアの気持ちが出ていると思います。
仮にタイラが車椅子を任されていなかったら、タイラはミアを残してあの扉には入らなかっただろうし、そうなればそこで2人だけの永遠を過ごしていたのだろうかと想像してしまいます(サマポケの静久√のBAD ENDっぽくなりそうだな…なんて思っていました)。
しかしまあ、正直助からない可能性が高い手術を受けることと、時の渦の世界で一生同じ日を過ごすこととを天秤に掛けられて、ためらいもなく前者を選べる人間なんてそんなにいないと思います。それでも「留まることよりも先に進むことをどうか選んでほしい」って訴えかけてくるこのゲームが辛い。胸が痛い。
ミア救出劇。協力者を次々に増やしていって、一人じゃ到底不可能なことに可能性を見出していく。アニメ映画の終盤っぽい展開で好きです。そしてここまでスマートな行動ばかり映されていたタイラですが、最後ばかりは心底苦しそうにしていました。それでももがき続けてなんとか掴むことのできたミアの手。本当の別れの前に、想いを伝えあうことができて良かったね…。
ルーパーズ一行はミアの目を覚まさせることを誓って、そこでエンディングとなります。その後のエピローグでは、ミアが病院で目を覚まし、皆が感涙し喜ぶ姿を見ることができます。(サマポケの幾つかの√でも感じたことですが)最後の最後まで見せなくても、完全なハッピーエンドを確定させなくても、そこは読者の想像に任せても良くないか?と思わないでもないですが、このように終わらせたいのがKEYの作風なのかな、と思っておきます。
ともあれ、良いお話でした。仮に映画化されて映画館でこのストーリーを見ていたら結構泣いていたと思います。これで2000円しないっていうんだから、まだまだ引きこもり推奨期間は続くみたいだし、他のノベルゲームにも手を出していきたいですね。