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Summer Pockets REFLECTION BLUE 水織静久√ 感想

感想というよりも思考の整理の記事になります。
今回はあらすじ等々はあまり書きません。時系列も無視。
静久で6人目になります(紬→識→鴎→のみき→蒼→静久)。ネタバレ注意
ここまで来たら流石に全√の感想書くしかないか…と思い立つも、頭の中がごちゃついて簡単には纏まりそうにない。そんな√でした。難しい
だからこそ逆に書く必要があるのかもしれません。需要はまあ置いといて。
前回に引き続き、PCで読むの推奨です(改行の美しさの問題)。

キーワード:「記憶」「距離感」「無償の愛」

・紬の決意

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この選択肢において、上を選んだ場合のお話です。
ちなみに下を選ぶと実質BAD ENDです。
(下を選んだ方が彼らは幸せだった、と思う人もいるかもしれません)

その5日前(8/22)、羽依里と紬は、静久が夏の思い出の記憶を度々失ってしまうことに対し、以下のように話していました。

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「そうやって夏休みを楽しめるのであれば」
「シズクが、記憶を何度も忘れてしまっても…わたしたちは、きっと楽しく遊べるはずです」
静久はこの前に、失った記憶を一度に取り戻そうとして倒れてしまいます。大切な人がそうなってしまう姿を見たら、無理をしないでほしいって思うのは当然の感情です。
羽依里と紬が静久のそばにいる限りは、静久は記憶を失ってもまた楽しく遊べますし、それに対して恐怖や辛さを感じる度合いは減っていきます。

でもこれは逆に言えば、静久は記憶を失うことに対しての抵抗が段々と減っていき、記憶を失わないようにしようと思うことがなくなっていってしまうわけです。
静久は、また羽依里と紬が記憶を復活させてくれるって心のどこかで思ってしまいます。彼らを頼りにしてしまうのです。

少なくとも、紬は静久のそばにはずっといることは出来ません。
8/31が本当のリミットです。何が何でもリミットなんです。
夏休みは、永遠ではないんです。そして、同じ夏休みもう二度と来ません。

みんなに忘れられるということがどれだけ辛いか、寂しいか、苦しいのか、紬は一番よく知っています。
友達である、ツムギちゃんが苦しむのを彼女はずっと見てきましたから。

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結婚式の記憶を静久が1日ですっぱり消してしまった際の紬の反応を見れば、その気持ちがどれだけのものなのかがよくわかります。
この夏休みが終われば、彼女はもう思い出を作ることはできないのです。

静久は家庭内不和の中に生まれ、幼いころから母親からの暴言を受け続けていました。そして様々な才能に富み、頭の回転が非凡に速かった。
これらのことから静久は、自分で全部解決して、常に周りから頼られ、他の人に情けないところなんて絶対に見せない、それらをしない自分なんて価値のない人間なんだという強迫観念に捕らわれていました。見返りのない無償の愛を知らずに今まで生きていたのです。
羽依里の協力もあって、静久と静久母は対談をすることに成功し、そこでお互いの気持ちをさらけ出すことで、親子関係のしがらみは解消に向かうことになります。それでもなお、誰かの役に立たず、優秀ではない自分は無価値だという潜在意識は静久には残ってしまっていました。
羽依里と紬のお別れ会の準備の最終日、明日はその会であるという時に静久は倒れてしまいます。自らの体を顧みず、また抱え込んでいたのです。

紬は、静久が大好きだからこそ、そんな状態の静久を置いたままいなくなるなんてことは絶対にできなくて。静久はこの先また無理して自分で全部抱えて、そして嫌な記憶は消去してってやるんだろう。紬はそう考えます。

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紬は静久に対し、静久が嘘の笑顔を浮かべる暇もない勢いで捲し立てます。
「酷い夏休みだった、嫌な思い出しかなかった」と。

この嘘の感情の吐き出しによって、静久にとってこの夏休み全体が辛い記憶となり、静久の夏の思い出が全部消えてしまうかもしれません。紬にとってそれが一番辛いのは前述した通りです。
それでも、紬は静久を助けたかった。
紬にとって一番大事なものを賭けてでも、静久を先に進めてあげたかった。

ここまで暴言を吐き出しても尚夏休みの思い出の記憶は静久に残っている、そんな結果となって静久の記憶消失の負の連鎖を断ち切ってほしい
そして、いつもの辛い記憶のように内心で抱えてその場は笑顔で取り繕って後で忘れるのではなく、その場で本当の気持ちを吐き出してほしい

”忘れられるものなら忘れてみろよ!私は何もかも全部覚えているからな!”
紬としては本当はそんなつもりで言っているんじゃないのに、そんな気持ちが言葉の節々に出てしまっているように感じます。紬は嘘を付くのも上手くないし、感情がそのまま顔に出る子ですから。
そんな紬のことが、静久は大好きなんです。

頭の回転の速い静久は、やはり紬の真意にすぐに気づいてしまいます。
その上で、紬の自分に対する気持ちに答えるために、静久は紬に暴言を吐き返そうとします。言えないけど。

・静久にとって、紬という存在は

紬は嘘をつくのが下手で、喜怒哀楽が顔にそのまま出てしまう子です。
そのため、静久が得意とするような、静久母に対してやってしまったような、言葉や気持ちの裏の裏を考えてくみ取ってシミュレーションして…なんてことをする必要は、少なくとも紬には必要ありません
それでいて紬は、相手の気持ちに寄り添い、状況に応じた適切な距離感がわかる子です。なんでもかんでも深堀りしてきたりはしません。
静久からしたら、ここまで相性良くやっていける友達も中々いなかったのでしょう。

・しろはと静久

しろはは、静久が数少ない、仲良くなれなかった子でした。学校にあまり来ないしろはに対し、無理にコミュニケーションを取ろうとして、その結果として静久は嫌われてしまいます。しかし、とある際に余ったカレーをしろはにプレゼントすると、そのお返しに、としろはは静久の出した海の家にチャーハンを作りに来てくれるのでした。

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しろはが静久へのお返しとして作った「カレーおこげチャーハン」ですが、これはカレーとチャーハンのお互いの弱点を埋め合ってそれぞれの良さが際立つ一方で、どちらかの主張が強くなりすぎると途端に美味しくなくなるという特徴を持っています。
この料理の特徴を通じて、静久は母親との距離感が大切なんだということに気付くのでした。どちらにもいいところ、悪いところがある。お互いに高め合える距離が適切なんじゃないかということです。これは同時に、羽依里と静久の関係にも言えることです。冒頭の選択肢で下を選んだ場合の未来は、羽依里と静久のどちらの主張も強くなりすぎてしまった結末のように感じます。お互いがお互いを高め合うことはなくなってしまうということです。

(そういえば蒼√の記事の最後の方で、この島でチャーハンといえばあの子しかいませんと書きましたが、この島の人間の殆どはチャーハンを愛しているという新事実が静久√で発覚してしまいました。あれが何かの伏線なのかどうかは、しろは√かうみ√をやったらわかるのかな…何も関係なさそう)

・海の家の再建

静久はどうして高3の夏休みに海の家を再建しようとしたのでしょうか?羽依里が浜辺に来たから海の家の再建だったけど、もし羽依里が来たのが灯台だったらパリングルスのベランダでも良かったと静久は言っていました。
”意味のあるようなないようなことを夏休みにしたかった”とも言います。
静久は就職するにせよ進学するにせよあの家族からは距離を取ることになるでしょう。十分に時間を取って鳥白島に気軽に来られるのもこれが最後になるかもしれない。それならば最後に自分がいた証を残したい。そんなところでしょうか。僕が高校生の頃、日頃は絶対にいかないゲームセンターに遠征して太鼓の達人というゲームをやった時に、「筐体記録に何かしら自分のハンドルネームを残して帰りたいな」と思ったりした記憶があるので、そんな感じでしょうか。今思うとスケールが小さい…。

静久にとって海の家は「私の居場所」「逃げ場」「大好きな場所」であったとストーリーの冒頭で述べられています。家庭内不和や母親から罵詈雑言を浴びせられた記憶は全て消しているのに、ここが逃げ場であったという記憶は残っているのです。逃げ場だったからこそ、ここが心地の良い場所だった、という記憶なので残っているんじゃないかなと思います。

・蒼√との対比

蒼√では、夏休みが終わった後、寝たきりの蒼と会話をするために羽依里は毎週末のように鳥白島に行くようになります。そのために平日はバイトを沢山するようになりました。そして来年の夏には蒼の記憶の七影蝶を探し、いつか蒼に目を覚ましてもらうために頑張ろうと目を輝かせ、羽依里は毎日を懸命に生きるようになりました。蒼の存在そのものが羽依里の生きがいと言ってもいいでしょう。
蒼は静久√の道中で、次のようなことを言っていました。
「人間って、忘れられるからこそ…生きていけるって思うのよね」
蒼は藍の記憶を探すために奮闘して、他の人の未練の記憶を過剰に頭に取り入れてしまい、最終的にそれで眠りについてしまいます。たとえ他人の記憶だろうが辛い記憶を体験として味わい続けるなんて並の覚悟でできることではありません。
辛い記憶なんてさっさと消して次の楽しいことを考えた方が人生楽しいって僕も常々思って生きています。だからこそ、静久√の結末(テーマそのもの)は僕に刺さってしまうのでした。

一方で静久√では、前述した選択肢で正解(と便宜上書きます)のものを選ぶと、最終的に羽依里と静久は決別することになります。
羽依里が甘えれば、静久は羽依里を甘やかし、そんな自分に価値を見出してしまい、辛い物事に立ち向かわずにその記憶をまた消してしまいます。
静久が甘やかせば、羽依里は水泳部のトラウマに立ち向かわず、島に来る前の過去を清算できずに終わってしまいます。冒頭に書いた選択肢で下を選んだ場合、そのような未来を見ることができます。
だから、2人は「来年の夏にまた会おう」のような約束すら交わしませんでした。そのことを糧にして頑張ったとしても、それはお互いのためにならないと考えたからです。

僕がサマポケを始めたのはつい最近なのであまり意識していませんでしたが、蒼√は最初から存在していたのに対し、静久√はリフレクションで追加された新√みたいです。もしかしたら、静久√は蒼√に対する一種のアンチテーゼだったりするのかな…なんて。そんなことを考えてしまいます。
実のところ正解なんてなくて、自分のやりたいことに後悔なく全力を出せたならそれはいい人生だって思うんですけどね。最初に書いたように、例の選択肢で不正解(と便宜上書きます)の方を選んだ方が幸せだったって思う人だっていても全然おかしくないと思います。蒼√を読む限り、羽依里の所属していた水泳部の部員は普通にいい人たちだったからいいけど、とんでもない性悪達だったら逃げた方が勝ちだと思いますし。人生、なんでもかんでも立ち向かわなきゃいけないなんてことは絶対にないと思うので。

とりあえず書きたかったことは全て終わったので、これで終わりにしたいと思います。正直、静久√に関してはちゃんと理解できたと自信を持って言えないところがまだまだあるような気がしています。他の方の感想記事を早く読み漁りたい…。でもそれはそれとして、自分で納得できるところまでは自分で解釈しておきたい…もどかしい気持ちしかありません。

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さて、メインヒロインですね。対戦よろしくお願いします。




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