N. Aratame

拓殖大学国際学部教授 研究テーマ: 移民と難民問題、日本の多文化共生、フィリピン地域研…

N. Aratame

拓殖大学国際学部教授 研究テーマ: 移民と難民問題、日本の多文化共生、フィリピン地域研究など。 HP: https://sites.google.com/view/naratamelab

マガジン

  • 国際社会学

    「国際社会」や「グローバル化」にまつわる様々な「社会学的」話題を思いつくまま書いています。何か新し発見があれば幸いです。

  • 海外研修

    私のゼミ生を中心とした海外(フィリピン)研修の記録です。教育機関が団体旅行を企画する際の参考になれば幸いです。

  • 日本社会あれこれ

    日本で起こっているあれこれについて書いています。腹立たしいこと、悲しいこと、ちょっと嬉しいことなどなど。何か参考になるところがあれば幸いです。

  • 日本の教育問題・世界の教育事情

    広くゆるく、「教育」に関係する話題をとりとめなくまとめたものです(何か参考になる視点を提供できれば幸いです)。

最近の記事

フィリピンから国際協力を考える~「貧困学習」の先にあるもの

**以下の文章は、2022年度に「日比NGOネットワーク」によって実施された学習会シリーズ、「現場から学ぶ国際協力~はじめの一歩から行動に移すまで~」(全5回)に寄稿した「感想文」(2023年1月))に手を入れたものです。  私が初めてフィリピンを訪れたのは大学三年生の時でした。フィリピンの都市の貧困問題に関心を持つようになったのはその時です。時は流れて数十年、依然としてアジア(特にフィリピン)の貧困問題に関心を持って勉強を続けています。  はじめてフィリピンを訪問した方は

    • フィリピン研修2023春(14)ー再びイントラムーロスへ

      さて、今回の研修旅行も最後に近づいてきました。マニラに来たからには、(おのぼりさんが)行かなくてはならないところがあります。そう、イントラムーロス(方面)です。それに加えて、マニラの繁栄を知るためにはモールにも行かなくてはなりません(要するにお買い物の時間ですね)。本当はもっと行くべきところもありますが、今回の研修では時間の都合もあり、このようになりました。私自身は何度も何度も来ているところですが、今度ばかりは、ようやく戻ってこれたなという感じです。 思えば、2020年の3

      • フィリピン研修2023春(13)-民間企業の貢献

        「国際協力の多様なあり方-NGO以外のアプローチ」(2) 「フィリピン研修」では(チャンスがある限り)日系企業を訪問しています。結局のところ、国際学部の学生全員が国際協力に関心を持っているわけではなく、卒業後、民間企業に就職する学生がほとんどだからです。なればこそ、海外で働くということはどういうことなのか、楽しいこと、難しいことも含め、海外で働く企業人に直接実体験を語ってもらうことは、将来の進路を考える上で重要な意義があります。ただし、民間企業が直接・間接、途上国の経済・社

        • フィリピン研修2023春(12)ー職業訓練

          「国際協力の多様なあり方ーNGO以外のアプローチ」(1) この研修の第一週間目は、孤児院や貧困地域視察、スカベンジャー(ごみ回収従事者)問題や、ピナツボ火山の噴火後に再定住者の子弟のために作られた小学校など、社会問題の実態を理解し、特にNGOによる支援の実際について勉強したので、2週間目は、ガラッと趣を変えて、政府の社会政策や、民間企業の貢献について研修することにしました。まずはTESDA(技術教育・技能開発庁)です。 TESDAは(義務教育を終了した)フィリピン人の職業

        フィリピンから国際協力を考える~「貧困学習」の先にあるもの

        マガジン

        • 国際社会学
          3本
        • 海外研修
          14本
        • 日本社会あれこれ
          4本
        • 日本の教育問題・世界の教育事情
          4本

        記事

          フィリピン研修2023春(11)-フィリピンの海を満喫

          ビーチの休日~素敵な海と夢のような夕日を満喫しました。 毎日ハードなフィリピン研修ですが、今日は1日海水浴です。コーディネートする側としては、これももちろん大切な研修のプログラムの一部。「観光コース」専攻の学生もいるので、「観光開発」的観点から見ると、とても面白い場所です。初めての場所なので、いろいろ発見がありました。 まず、普段ケソンシティのUPで研修をしているときには、近場に泳げる海がないので、バタンガスまで4時間ほどかけて行っていました。朝6時に出発する強行軍で、午

          フィリピン研修2023春(11)-フィリピンの海を満喫

          フィリピン研修2023春(10)ースカベンジャー地域

          観光旅行の対象としてのフィリピンではなく、フィリピンの社会問題に関心があるひとの中に、なぜか「ゴミ山」を連想する人が多いようです。そのイメージには無理もないところもあるのですが(私もその責任者の一人でもあるので)、「ゴミ山」と言っても、そこにはいろいろな問題が含まれているので、一言補足しておきたいと思います。 まず、マニラ首都圏の「ゴミ山」問題は、私が研究を始めた40年(?)前からあまり変わりなく、現在でも深刻な問題として存在しています。ただし、ゴミ問題と見えるものの中には

          フィリピン研修2023春(10)ースカベンジャー地域

          フィリピン研修2023春(9)-バライバイ再定住小学校(2)

          バライバイ再定住小学校の経験、第2話です。 児童たちの前で、「日本文化」について紹介しました(五年生と六年生対象)。と言っても、日本の地理、自然、歴史などについて5問、クイズ形式(3択)で紹介すると言うもので、今話題のChatGPTならあっという間にできるであろうクイズです(試してみたところ、実際あっという間にクイズを作ってくれました)。しかし、このようなプレゼンテーションをやったことのない日本人学生が、小学生の子どもたちに対して、しかも英語でやるとなると大変です。 まず

          フィリピン研修2023春(9)-バライバイ再定住小学校(2)

          フィリピン研修2023春(8)-バライバイ再定住小学校(1)

          今回はバライバイ再定住小学校での経験を、写真を中心にご報告します。ちょっと長いので2回に分けます。 まずは授業見学から。低学年から高学年まで見せていただきました。子どもたちが皆元気一杯であることにまず感銘。英語の授業では、まず、英語で授業をしていることに一同ショック。antonym(反対語)についての授業でしたが、そもそもantonymという文法用語が(小学生のクラスで)普通につかわれていることに、さらにショック。 この授業は算数。正方形とか長方形の(お菓子などの)空き箱

          フィリピン研修2023春(8)-バライバイ再定住小学校(1)

          フィリピン研修2023春(7)-ピナツボ火山とアエタ族

          NPO法人アクションの紹介で、バライバイ再定住小学校(Balaybay Resettlement Elementary School)を訪問しました。こちらでは2日過ごしました。ここはピナツボ火山の大噴火の後設置された、バライバイ再定住地に住む避難民家族の子ども達を受け入れるために作られた学校です。 こちらでは、まず授業を見学させていただき、次にアクションがNPO法人Table for Twoと共同で行う、栄養不良児童に対する給食支援とそのための農園と、キノコ栽培の様子を拝

          フィリピン研修2023春(7)-ピナツボ火山とアエタ族

          フィリピン研修2023春(6)ー農園にて

          孤児院の農園がとても素敵だったので、写真を中心に記録・記憶にとどめておきたいと思います。 先回書いたように、この孤児院は広々とした敷地に、木々が生い茂り、施設長の牧師様の指示のもと、子どもたちか野菜づくりや豚、鶏の世話をしています。 農作業を通じて、孤児たちは、作物生産の大変さや収穫物への感謝の気持ちだけでなく、共に働き何かを生み出す協同労働の大切さを学んでいます。 ここでとれた野菜は日々の食事の一部となっています。別の場所では米作も行っているそうです(これは孤児たちで

          フィリピン研修2023春(6)ー農園にて

          フィリピン研修2023春(5)-孤児とのふれあい

          さて、オロンガポの歴史的・社会的背景については前回お話しました。 私達がお世話になる孤児院は、もともとはオロンガポの光と影の、影の部分にうまれた孤児たちの保護を目的に設立されたもので、当初市内にありましたが、より環境のよい郊外に移設されて今日に至ります。1980年代と社会背景は変わりましたが、今日も、ただの孤児ではなく、貧困に加え、虐待、育児放棄、捨て子など複雑な背景を持つ子ども達が一緒に生活しています(なお、センシティブな話題なので具体的な住所、施設名の記載は控えます)。

          フィリピン研修2023春(5)-孤児とのふれあい

          フィリピン研修2023春(4)ーオロンガポについて

          NPO法人アクションの事務所のあるオロンガポ市という場所について一言補足しておきたいと思います。 オロンガポは、サンバレス州の中核都市であり、スペイン時代からの港町・軍港でした。その後、アメリカの軍港として発展しますが、第二次世界大戦時にいったん完全に破壊されます。しかし戦後、米国との基地協定を通じて、米国海軍のまちとして再興していくことになります。 実は、昔々、私はマニラの大学(Ateneo de Manila University)に留学していた時期があります。ここ最

          フィリピン研修2023春(4)ーオロンガポについて

          フィリピン研修2023春(3)-NPO法人アクションとは

          今回の研修のパートナーとしてなぜアクションにお願いしたか、その理由をちょっと書いておきたいと思います。 アクションは代表の横田宗(よこたはじめ)さんがまだ高校3年生の時、フィリピンの孤児院支援事業にかかわったことから始まった団体で、1994年設立、間もなく30年となります。日本の特定非営利活動法人ですが、フィリピンの社会福祉開発省(Department of social welfare and development、日本の厚生労働省)により正式に認定された社会福祉開発団

          フィリピン研修2023春(3)-NPO法人アクションとは

          フィリピン研修2023春(2)ーオロンガポ市でオリエンテーション

          フィリピン到着翌日。まずはオロンガポの事務所でNPO法人アクションの事業概要をご説明いただきました。 アクションは代表の横田宗(よこたはじめ)さんがまだ高校3年生の時、フィリピンの孤児院支援事業にかかわったことから始まった団体で、1994年設立、間もなく設立30年となります。日本の特定非営利活動法人ですが、フィリピンの社会福祉開発省(Department of social welfare and development、日本の厚生労働省のようなもの)により正式に認定された

          フィリピン研修2023春(2)ーオロンガポ市でオリエンテーション

          フィリピン研修2023春スタート(1)

          フィリピン研修2023春スタート(1) 2023年2月28日から3月10日まで、フィリピンで「ゼミ合宿」を行いました。しばらく連投します。 思えば、2020年の3月以来まる3年ぶりです。今回の研修の準備を始めたのは昨年の前期でしたが、その時はまだ「見切り発車」状態で、(大学の方針としても)実際に行けるかどうかわからない状況でした。その後研修の募集を始めた段階でも、渡航の要件(コロナワクチン接種三回以上)を満たすことが出来ず、泣く泣く渡航をあきらめた学生がいました。感無量は

          フィリピン研修2023春スタート(1)

          グローバルサウス

          昨年のことだが、ある論文の査読をしていた時の事。戦後の途上国の社会経済政策を振り返り、結論として、依然として残る植民地主義の遺制から脱却するとともに、もっと途上国の社会や文化に目を向け、欧米の社会学理論のなかでは周辺化されていた「グローバルサウス」のメインストリーム化を目指すべしという主張であった。 論旨自体は目新しいものではないが、資料的価値もあり、丁寧に論述されているものだったため、「若干の修正を条件に受理」ということにした。ただし、「グローバルサウスという言葉が何を意

          グローバルサウス