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奈良 佐保川沿いの川路桜

奈良には名所旧跡が沢山ありますが、その中でも「佐保」というエリアがとても素敵です。

『古事記』『日本書紀』には、垂仁天皇の后となった狭穂姫の物語が残り、
『万葉集』の編纂者と考えられる大伴家持の邸宅もこのあたりにあったといわれます。

佐保には佐保川が流れ、昔は蛍も飛び交う清らかな流れだったとか。

現在この佐保川沿いは、桜の名所になっています。

ここに桜を植えてくれたのは、幕末に赴任してきた川路聖謨というお奉行さまです。

日本の命運を決める外交問題が山積する時代、おおいに活躍した川路聖謨。

特にロシアとの交渉において、その応接係として大きな功績を上げました。

ロシアの使いプチャーチンから「この人物を尊敬しないわけにはいかなかった」との感想をもれさせています。

彼が、幕末の混乱期に活躍する直前、奈良に赴任していた時代があったのです。

貧民の救済、地場産業の育成、学問を普及させるための政策。そして植林活動で大きな功績をあげました。

佐保川沿いの桜は、川路聖謨自身もお金を出して、現在の名所になるほどに整えてくれたのです。

彼が奈良を離れる時、沢山の人がお見送りに集まりました。

そして餞別を渡そうとしても受け取らず、餞別をいれた祝儀袋の水引だけ受け取って江戸へ旅立ちました。

政治家として善政を敷き、住民に慕われていた川路聖謨。

彼は美しい桜並木を残しただけでなく、将来この桜を楽しむ人もまた桜を植えて、さらに未来につなげてほしいという旨の言葉を残してくれています。



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