アニメを作つてもらゐませう
歌につづき、同じく海外とのやり取りで出来上がったアニメの解説もしましょう。
向こうが作るよという提案を跳ね除けて「内容は俺が決める」と口走りましたね。まずは俺の方で作るコンテ段階の話からいきましょう。
お手製のおスマホ版PV
スマホ版の時のPVですでに昭和アニメのパロディをする方向性ってのは出来上がってます。ただこの時はね、いつもの自分のノリだけだと相変わらずターゲット層が昭和のおっさんだけになっちまう。もっと若い人にわかるパロディを入れないと。ということで
若いもの向けにと言いながらも、自分の年齢から十年ぐらいしかさかのぼってないよね。しかも自分に思い入れがないからノリがイマイチね。パロディってのは元作品に対する愛がないと面白くはできないよねぇ。
アニメ作りのお前提
ということでSwitch版のアニメは思いっきり昭和アニメのノリを突き詰めましょう!
その前に1点。実はWayforwardからアニメをつけるという提案には但し書きがあった。「あまり凝ったアニメにするつもりはないので、静止画中心・あまり動かさないでね!」てのがね。じゃあやんなきゃいいのにさ!
まぁいいでしょう。昭和アニメはCGやデジタル編集ができなかった分、徹底的に手書きで動かしている部分もあるけども、基本的には少ない絵で上手く見せるもんだ。作品によっては、特にエンディングテーマのアニメは止め絵だけで済ませるものも多い。動かすところは申し訳ないが頑張って描いてもらう、その代わり描かなくて済むところを多めに。
この時点でBメロの部分はゲーム内のグラフィック・アニメを構成することが決まってます。しかしここで俺が気にしちゃうんですよね。「Bメロと他で画風変わったりしないだろうね?」と。実力あるアニメータなら原画家の絵の癖までしっかり真似して動かすことはできるだろうけども、そこまで出来るのか?アメリカ人だぞ?
絵柄については先にラフを送ってもらって俺が手を入れよう。そのぐらいしか手の打ちようがない。
さあ、アニメ作りませう
基本的にはベルサイユのばらのオープニングを強くイメージしてます。Bメロ前の振り向きながらアップで色が変わるところなんかはモロだ。
このラフアニメを元に、向こうのアニメディレクターであるデビッドが1カットずつラフを送ってきてくれるわけだ。
色々と描き起こしてもらわないといけないが、Aメロは止め絵のスクロール。まぁ「ろうそく太いな!」とは思ったけども、大したことじゃない。気になるのは椿小路家側の面々の画風だ。
顔、アメリカン
オーウ。ナントナークアメリケンデース。少なくとも俺の描く顔ではない。体とか髪はともかく、顔だけは手直しせねばなるまい。
こんな感じで、薔薇と椿のキャラクターを描く上でのポイント、「可能な限り顔パーツにはパースをつけずに平行に描く」ように徹底します。本当なら左右の肩のラインも水平にするべきなんだけど。こういう気遣いでキャラ描いてるんですよ。薔薇と椿の「静」的な印象を高めるためにね。他にも「首・頭・指などは意識して長めに描く」てのもあるよ。
他にも玲子の顔つきや、髪のゆらしかたなんかがアメリカンだったのよな。赤入れした絵でも残ってるけど、もみあげのタレ毛の動きみたいな。カーブの中に直線を入れてくるのよな。「それはアメリカトゥーンの文法だから曲線主体で薔薇と椿らしくな?」という指示を。
お昭和にない技術やめれ
ラフを進めつつも、部分的に動きをつけたアニメのラフも届き始めます。ここで苦労するのは「昭和アニメ感」です。もちろん参考になる日本のアニメなど紹介はしましたけども。
こちらとしてもどうすれば上手く伝えられるかわからないんですよね。英語でさ。ここからはその「昭和アニメはそうじゃないんよ!」みたいなやり取りが続きます。上手く伝えられないままリテイク出し続けたらデビッド腐らないかな?どのぐらいの強さでいうべきか?そもそも英訳した時点でこちらの意図伝わるかな?てね。
例えばこれ。現代アニメの作りとしては問題ないというか無難なところです。しかし俺は許しません。
「これ花びら3Dで回転させてるだろ?花びらってこんな動きじゃねーよ!つーか昭和は手描き!んもう!」
その時出した指示書がこれ。
言葉で伝える&それを英訳して正しく伝えられる自信がなくて絵にしました。ベルサイユの薔薇のオープニングの花びらの舞い散りかたを見てくれ!とも。ここの出来は完成版での通り、綺麗に昭和が舞い散ってますね。デビッド頑張ってくれた!
他にも昭和アニメに関せてはこんなものも。
「なんだこのベタ塗りの花は!昭和アニメじゃこういうのは水彩で描くの!そんで水彩で描いたものはぐりぐり動かさないの!」
うるさいおっさんですね。でも大事だよね?
サビは歌とアニメの命
Aメロ後半はまぁ、花びらは再利用でいいし、振り向くアニメは描いてもらうしかないけども基本は止まったポーズだからいいよね。この辺は「出来るだけアニメを動かさない」というオファーの方を優先して考えているので、何のアニメの影響とかそういうのはない。こちらも絵描きとして「描くのが手間のかからない絵だけで動画構成する」みたいなところから考えてる。
Bメロは先に描いた通り。玲子が勝利ポーズから背中向きになるところはなんとかアニメしてもらう。それ以外はゲーム内グラフィックの再構成。
ラフムービーの段階で玲子の目が塗ってないのはスマホ版の時の勝利ポーズだから。急いで描いてたのでイマイチ玲子の顔がおかしい気がしててね。描き直すつもりだったので。
ここまでオファーを守ることを重視して進めたのは、その代わりサビでは派手に動いてもらおうと考えたから。サビでは歌だけでなくアニメも盛り上がってもらわないとね。昭和アニメあるある的なものを注文するとなると、全部描き下ろしでアニメ描いてもらうしかないから。
サビ前半の登場キャラが次々出てくるところはどうしてもやりたかった。これは完全に俺の引き出しです。富野アニメで育ってるからね。
時々突っ込まれてるけど、メイだけいないのよね。一応、各シナリオのボスは出さないぐらいのつもりでした。メカ椿も大奥様玲子も。シナリオ4はメカ椿を除けば3人しかいないからね。全員出てる。トリヱさんすら出てるのに。でもあのお面状態が並んでたらおかしいし。そこだけツッコミが集中しちゃうし。星子すら仮面外してるのにさ。かといって仮面オフ出したらラスボスネタバレだからねえ。あれがシナリオ3のラスボスのアイデンティティだから歌でネタバレするわけにはいかないでしょうが。
デビッドは腕ききの映像作家で、向こうからも「こんなのどうだい?」という提案もしてきます。
「いや、昭和のアニメはズーム出来ねぇから。ズームするならカメラ寄るしかないのよ。だからこういうのはできませーん。」
なんか昭和価値観を盾にダメ出しばかりしているように見えるかもしれませんが、向こうからの提案に乗ったこともあるのよ?VHS風なんてのはこちらから頼んでない、デビッドが「こんなフィルター買っちゃった!やってみたけどどう?」ってさ。
「また頼んでもいないことを……いいな!」ということでPRに使うから全編レンダリングしといてくれ!と頼みました。
終盤部分、何のアニメだったかとか明確な記憶はないんだけども、あの窓からの光が床に差してて、それがグイーンと動くようなアニメってよくあったよね?あった記憶があるんだ。そこはまぁ意図は伝わった。髪の揺れなどで指摘はしたが、出来に問題はない。玲子の顔がイマイチゲーム中の顔に似てない気がするが、まぁ許容範囲か。アニメーターが変わると顔が変わるのも昭和アニメらしいかな。平成でも令和でもひどいのはあるけどな!
なかなか伝わらなかったのはこの部分ですよ。
このね、黒枠が小さくなるのがお約束てのが伝わらないんだな。何度か「違う、そうじゃない。」とリテイクしましたもん。まさかこんなものが伝わらないとは。最後に出したのがこれ。
これをやりたいの。伝わりますかえ?
盛り上がるのであれば、もっともっと掘り返してみようと思います。