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作品紹介『うみねこのなく頃に』

こんにちは。
楢柏(ナラガシワ)です。

今回は、私が一番好きなサウンドノベル『うみねこのなく頃に』をご紹介します。

※注意※
・この記事は『うみねこのなく頃に』のネタバレを含みます。
・解釈はあくまで個人的なものです。

1 『うみねこのなく頃に』とは

『うみねこのなく頃に』は、2007年から2010年にかけて頒布された07thExpansion制作のサウンドノベルで、作者曰く「“解かせる気が毛頭ない”最悪な物語」です。

まずは、公式サイトの紹介文からどうぞ。

本作品は、ジャンル的には連続殺人ミステリーになるかもしれません。しかし、だからといって推理が可能であることを保証するものではありません。

“解けるようにできている”甘口パズルをお好みの方はどうぞお引取りを。『うみねこのなく頃に』は、皆さんに“解かせる気が毛頭ない”最悪な物語です。

しかし、だからこそ挑みたくなる最悪な皆さんは、初めましてようこそ。私も、そんな最悪な皆さんを“屈服させたくて”この物語をお届けします。

皆さんは、どんな不思議な出来事が起こっても、全て“人間とトリック”で説明し、一切の神秘を否定する、最悪な人間至上主義者共です。どうぞ、六軒島で起こる不可解な事件の数々を、存分に“人間とトリック”で説明してください。皆さんが、どこまで人間至上主義を貫けるのか、それを試したいのです。

犯人は魔女。アリバイもトリックも全ては魔法。こんなのミステリーじゃなくてファンタジー!あなたが悔し涙をぼろぼろ零しながら、そう言って降参するところが見たいのです。

私が期待するのは、正解に至る推理が現れることじゃない。一体何人が最後まで、魔女の存在を否定して、“犯人人間説”を維持できるのか。つまりこれは、魔女と人間の戦いの物語なのです。

連続殺人幻想『うみねこのなく頃に』
選択肢でなく、あなた自身が真相を探るサウンドノベル。推理は可能か、不可能か。魔女に屈するか、立ち向かうか。楽しみ方はあなた次第。

07th Expansion Official Websiteより引用

挑発的…!「解けるもんなら解いてみろ」と言わんばかり、というか言っていますね。

「犯人は魔女」とありますが、どういうことでしょうか。次は、『うみねこのなく頃に』のあらすじをご紹介します。 

伊豆諸島、六軒島。
全長10kmにも及ぶこの島が、観光パンフに載ることはない。なぜなら、大富豪の右代宮家が領有する私的な島だからである。

年に一度の親族会議のため、親族たちは島を目指していた。議題は、余命あと僅かと宣告されている当主、金蔵の財産分割問題。天気予報が台風の接近を伝えずとも、島には確実に暗雲が迫っていた…。

―――――――

速度の遅い台風によって、島に足止めされたのは18人。電話も無線も故障し、隔絶された島に閉じ込められた。彼らを襲う血も凍る連続殺人、大量殺人、猟奇の殺人。台風が去れば船が来るだろう。警察も来てくれる。船着場を賑わせていたうみねこたちも帰ってくる。そうさ、警察が来れば全てを解決してくれる。俺たちが何もしなくとも、うみねこのなく頃に、全て。

……
うみねこのなく頃に、ひとりでも生き残っていればね…?

貴方に期待するのは犯人探しでも推理でもない。貴方が“私”をいつ信じてくれるのか。
ただそれだけ。

推理がしたければすればいい。答えがあると信じて求め続けるがいい。貴方が“魔女”を信じられるまで続く、これは永遠の拷問。

―――――――

貴方は、右代宮家が年に一度開く親族会議を垣間見ることができます。莫大な資産を溜め込んだ老当主はもはや余命も僅か。息子兄弟たちにとって、親族会議最大の争点はその遺産の分配についてでした。誰もが大金を欲しており、誰もが譲らない。誰も信じない。

老当主の莫大な遺産を得るのは誰か。老当主が隠し持つという黄金10tの在り処はどこか。その在り処を示すという不気味な碑文の謎は解けるのか。

そんな最中、魔女を名乗る人物から届く怪しげな手紙。18人しかいないはずの島に漂い始める19人目の気配。繰り返される残酷な殺人と、現場に残される不可解な謎。

何人死ぬのか。
何人生き残るのか。
それとも全員死ぬのか。

犯人は18人の中にいるのか、いないのか。
そして犯人は「人」なのか、「魔女」なのか。

どうか、古き良き時代の孤島洋館ミステリーサスペンスのガジェットを存分にお楽しみください。

07th Expansion Official Websiteより引用

嵐の孤島、碑文の謎、魔女を名乗る人物からの手紙…と、『うみねこのなく頃に』の舞台設定は、典型的な孤島洋館ミステリーそのものです(クリスティのある作品が思い浮かぶ方もいらっしゃるのではないでしょうか)。

古き良き洋館ミステリー…と言うだけじゃないんです!『うみねこのなく頃に』のおすすめポイント3点、ネタバレ有りでご紹介します。

2 おすすめポイント

(1) 始まりの言葉

『うみねこのなく頃に』は、次の言葉から始まります。

この物語はどうせ幻想に決まっています。
実在する如何なる個人、団体、地名、事件とも関係あるはずもありません。

EP1

おしゃれ〜(?)

よくある注意書きですが、言い回しが『うみねこのなく頃に』らしくて好きです。

皆さんも、ぜひ肩肘張らずに楽しんでください。この物語はどうせ幻想に決まっています。

(2) 作品の構成

「幻想に決まっています」…と書きつつ、『うみねこのなく頃に』は、ミステリーとしても、ファンタジーとしても読むことができる作品です。

私はミステリーとして読む『うみねこのなく頃に』が好きなので、今回はその視点で記録します(全ての事件には必ずトリックがある、という視点です)。


『うみねこのなく頃に』は計8つのEP(エピソード)で構成されていますが、各EPで描かれる六軒島での出来事は、その殆どが作中作(『うみねこのなく頃に』の中に登場する作品)と思われます。

EP1:作中作(犯人が流したメッセージボトル)
EP2:作中作(事件の真相を巡る偽書)
EP3:作中作(事件の真相を巡る偽書)
EP4:作中作(事件の真相を巡る偽書)
EP5:作中作(事件の真相を巡る偽書)
EP6:作中作(事件の真相を巡る偽書)
EP7:作中作(事件の真相を巡る偽書)
EP8:作中作(事件の真相を巡る偽書)

メッセージボトルは犯人本人が
偽書は作中のある人物が執筆しました。

ややこしいですが、「六軒島での出来事は作中作だから、魔法が出てきてもトリックを考える必要はない」という訳ではありません(それは思考の放棄で、謂わば「魔女に屈する」状態です)。

メッセージボトルも偽書も、ミステリー(人間によるトリック)で読めるよう綴られています(…と信じることが、この物語をミステリーとして読む第一歩です)。

では、そのトリックとは何か(How done it)、犯人は誰か(Who done it)、動機は何か(Why done it)。ミステリーとして読むにはこの3つを解く必要がある訳ですが、これが相当に難しい。でも、どうか辿り着いてほしいです。

ネタバレ有りとしつつ、この記事でトリック、犯人、動機を明かすことはしません。ここでは、その3つを一言で「真実」と表現させてください。


各エピソード(作中作)にて、ある人物は人間犯人説を、またある人物は魔女犯人説を語ります。

そして、そのどちらも「真実」ではないと思われ、『うみねこのなく頃に』が「“解かせる気が毛頭ない”最悪な物語」たる所以でもあります。

『うみねこのなく頃に』は、作中で「真実」が明かされません。

故に、貴方が、私が、「真実」に辿り着いたとして、それが作者(竜騎士07先生)が想定した「真実」である保証はありません(し、竜騎士07先生が想定した「真実」である必要もありません)。

なぜ「真実」を明かさないのか。
それは、「真実」を明かさない事こそが、この作品の重要なテーマだからです。

「重要なテーマってなんだよ!勿体ぶるな!」と言われたらそれまでなのですが、どうか、あの日の六軒島の「真実」に辿り着いてください。

そして、なぜ「真実」を明かさないのか、その答えにも至っていただけたら嬉しいです。

(3) 終わりの言葉

『うみねこのなく頃に』は、次の言葉で幕を閉じます。

この物語を、最愛の魔女ベアトリーチェに捧ぐ

EP8

残酷で、暖かな結末に、目が醒めるほど泣きました。これしかない、終幕の言葉です。

3 舞台版があるよ

『うみねこのなく頃に』は、ゲーム・漫画・小説・アニメと様々な媒体で楽しむことが出来ますが、2022年から舞台化もしています。

舞台版、おすすめです!

ゲーム版では1エピソード約15時間かかるところ、舞台版は1エピソード約3時間とタイパが良く、脚本・演出を担当している伊藤マサミ氏が原作の大ファンで、クオリティも折り紙付きです。

現在、EP1からEP4まで上演され、2025年2月にEP5の上演が決定しています。

愛がなければ視えない物語
『うみねこのなく頃に』
ご興味のある方は是非、挑戦してみてください。

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