【ユース】フランス🇫🇷遠征総括 2024/5/14-23
奈良クラブユースとして初めての開催となった今回の欧州遠征。
自分たちと世界との距離がどれほどのものなのかを肌で体感する機会となりました。
選手、スタッフが何を感じたのか、ぜひご一読ください!
[はじめに]フランス遠征概要
フランスのブレティニョール・シュル・メールで開催されたU17の国際大会に参加。(奈良クラブのみ、U18のオーバーエイジ枠として4人参加) 全16チームが4グループに分けられ、その後、順位ごとのトーナメントというレギュレーションとなりました。
参加チームはベルギーからアンデルレヒト、開催国フランスからパリ・サン・ジェルマン、トゥールーズ、アンジェに加え、各地域の選抜チームなど、強豪揃いの歴史あるコンペティションに招待チームとして日本から参加しました。
奈良クラブユースはグループ1に入り、パリ・サン・ジェルマン(以下PSG)と同組となりました。
フランスのチームはダイレクトプレーやトランジションでのカウンターをより重要視し、個人の強烈なタレントを存分に活かすスタイルのチームが多かったように感じます。
圧倒的なスピード、異常なまでのデュエルの強さ、今までに体験したことのない程の力を持った選手たちが多くいました。
そんな中、ある意味、“日本代表”として周りから見られるこの大会で、結果だけではなく、魅力的なサッカーを展開することで、見る人に良い印象を与えるという目標もありました。
大会はグループリーグを一勝一敗一分で二位突破。その後、二位トーナメントで準決勝、決勝を勝ち、全体で5位という成績を収めました。
このフランスでの大会を通して得られたことは非常に多く、その中でも振り返った中で興味深い点を紹介していきます。
[攻撃]PSGに対してボールを握り、ゲームを支配
初戦のPSGとの試合。なかなか想像しづらいかも知れませんが、試合が始まってボールを握ったのは奈良クラブユースでした。試合開始直後、相手のシステム、振る舞いを見て、素早く有利な状況を作り出し、攻撃を繰り返し行うことに成功しました。
エコノメソッドを取り入れてトレーニングをしている奈良クラブユースの選手たちが、ゲーム状況を理解する面でPSGの選手たちを上回り、局地的に数的有利な状況を創り出すことで、まずは相手にボールを渡さないゲーム展開に持ち込みました。
相手に対応され始めると、別の解決法を使い、選手のポジションをズラすことで、相手にボールを奪いに行く的を絞らせませんでした。複数の解決法を持って試合に臨むことで、どのように対応されても、常に相手の一歩先をいったプレーを行うことができました。相手からすれば、掴みどころがなく、難しい相手と感じたのではないでしょうか。
[守備]大会最小失点を記録
大会全体を通して16チーム中5位に終わった奈良クラブユースですが、大会最小失点である3失点に抑え、守備の面で最優秀チームとなりました。その中で特筆すべき点はすべてセットプレーによる失点であって、流れの中からの相手のゴールは一つも生まれなかったということです。
では、世代別代表選手を擁するチームたちに対して、どのようにして守備を行ったかについて説明していきます。
① ボールを支配
上記の攻撃時についても説明したように、どのチームと試合をしても基本的には自分たちがボールを握りました。ボールを持つということは攻撃する権利を持っているということですから、長い時間攻撃を行うことで、自然と相手の攻撃回数を減らすことに成功しました。
② リスク管理
ボールを持つチームはカウンターで失点することが多いとよく言われますが、奈良クラブユースは全くそれには当てはまりません。失った瞬間に素早くプレスをかけることでの即時奪回、攻めながらも相手のカウンターの起点になる選手を予測し、カウンターの可能性を消しておくことでリスクを最小限に減らします。トランジションで力を発揮するチームが多かったフランスのチーム相手でもカウンターを受ける回数は数えるほどしかありませんでした。
③ ブロックの振る舞い
奈良クラブユースはコンパクトにブロックとして、つまり全員が一つの塊として動き、相手がブロックの中にボールを入れた瞬間、ボールを受ける選手に対して襲い掛かります。また同時に、奪いきれなかったことを考え、周りの選手がカバーを行います。そのためにブロックの中にボールを入れることは非常に困難で、相手に攻撃するスペースが無いかのように錯覚させます。その結果、相手はブロックの外から攻撃する、もしくは無理矢理ブロックの中を通そうとするプレーが多くなり、相手のミスを誘発させました。
④ エリアの守備
もちろんそれでも相手に打開される場面もありましたが、クロスを入れさせないこと、クロスを入れられても、エリア内で相手に自由を与えないことを徹底しました。エリアの守備に関しては、特にこのフランス遠征で精度が上がり、大きく成長することができました。
[メンタル]恐れを手放し、ゲームを楽しむ
正直なところ、大会へ向かう途中のパリ駅でPSGの選手たちと遭遇した際に、誰もが憧れる美しいジャージに身を包み、自分たちよりも頭一つ大きい体を持ったPSGの選手に驚きを隠せませんでした。そんな選手たちと戦う上で、何よりも重要なのは相手を怖がらず、どれだけ置かれた状況を楽しむことができるかということでした。
相手がどんなチームであれ、自分たちのアイデンティティを示し、自分たちのスタイルで相手を倒しに行くことを大会前から選手たちに刻み込みました。そして、それが唯一、勝利を掴み取る術だということも全員が理解していました。
このメンタリティを持って試合に入ったことが、個人の、そしてチームの自信に繋がり、試合開始後には“相手を支配できる”という現実が起こったことで、その自信が確固たるものに変わりました。
もちろん、全試合を通してボールを支配できた訳ではありません。相手に攻撃され、なかなかマイボールにできない時間もありましたが、“守備をすることを楽しむ”というマインドセットでプレーすることで常にポジティブなエネルギーを持って、ボールを持てない時間も乗り切りました。
今までボールを持てないことで苦しみ、失点してしまうことがありましたが、難しい時間帯でソリッドな守備を見せ、ゴールを許さなかったことがその後の結果に繋がりました。
[国際交流]新しい世界を知る
今回、フランスで体験した出来事の中で、選手の驚きの声で一番多かったのは“観客の反応”でした。試合会場のスタンドには、男女問わず大人から子どもまで幅広い世代が試合を見ていて、おそらく自分と関係のない試合にも一つ一つのプレーにリアクションを見せ、ただサッカーを楽しみに来ている姿が多くあって、この国にサッカーの文化が深く根付いているように感じました。
そんなフランスという国で、奈良クラブユースは人々の心を掴むこともできました。試合が終われば拍手を送ってくれる人たち、ゴールを決めれば駆け寄ってくる子どもたち、サインや写真を求めてくる人たち、どの試合もアウェイであるはずが、試合毎に奈良クラブの“ホーム”へと変化していきました。
初日には全く興味がなさそうだった他チームの選手たちも、次第に興味を持ち、話しかけてくれる人たちが増えました。
PSGとは試合後に交流会を行い、ダンス大会も開催されました。関西インターナショナルハイスクールに通っている選手は英語が上達している選手が特に多く、自分たちから話しかけに行ったり、友達を作りに行ったり、異文化交流に慣れている様子でした。
[奈良クラブユースの在り方]チームへの犠牲心
今回、念願のフランス遠征で、プレーが叶わなかった選手もいました。
三年の副キャプテン倉島 正行はフランスでの初日の練習で、二年の木南 大志はグループリーグ初戦で、二人とも足首の怪我を再発、遠征中に復帰することができませんでした。
倉島は準決勝の試合に間に合うかどうかというところで、自ら「今は100%のプレーができないと思うから、自分は出場しない方が良い」と話してくれました。
苦渋の決断だったと思います。もちろんまた怪我をしたくないという気持ちがあったでしょうが、チームのことを一番に考え、この決断をしたことはなかなか簡単にできることではないと思います。
二人とも試合の準備から、試合撮影、チームのサポートに奔走し、常にチームの手本として振る舞ってくれました。本当にありがとう。
[おわりに]フランスで手にしたもの
この旅を通して得たものは数多くありますが、一つ挙げるとすれば、それは “自信”です。
今まで練習や試合でトレーニングしてきたものが成功して現実として現れ、世界のトップレベルにも通用することがハッキリとわかり、選手一人一人がそれを肌で感じたはずです。これからも相手に関わらず、自分たちの信じるものを強く持ってサッカーをすれば、どんな相手でも倒せるはずです。
遠征前と後の自分たちとでは全く異なるものですし、今回、遠征に行くことが叶わなかった選手にそれを示し、伝えることで、ユース全体のレベルアップを図ります。
このチームが日本に帰って、どこまで行けるのか楽しみです。
最後に、パリで暖かく迎えてくれた現地の皆様、素晴らしい大会に参加させていただいた大会運営の皆様、この遠征を可能にしてくれた全ての方々に感謝いたします。
ありがとうございました。
追記
ユースフランス遠征のダイジェスト映像🎥をアカデミーインスタグラムで公開中👀
選手たちの様々な表情をぜひご覧ください!