令和6年10月以降の最低賃金について
こんにちは。社会保険労務士の町田です。
10月からの最低賃金が(おおよそ)確定しましたので、お話ししたいと思います。
1.令和6年10月以降の最低賃金は?
(1)令和6年10月以降の最低賃金
令和6年10月以降の「地域別最低賃金」について、都道府県ごとの「地方最低賃金審議会」が答申した改定額が出そろいました。
この後、関係労使からの「異議申出」があれば、それに関する手続を経た上で順次発効される予定です。
令和6年度最低賃金額答申|厚生労働省
確定ではありませんが、おおよそ、この金額が令和6年10月以降適用される見込、ということになります。
例えば、
奈良県 :936円⇒986円(+50円)
大阪府 :1,064円⇒1,114円(+50円)
兵庫県 :1,001円⇒1,052円(+51円)
京都府 :1,008円⇒1,058円(+50円)
滋賀県 :967円⇒1,017円(+50円)
和歌山県:929円⇒980円(+51円)
三重県 :973円⇒1,023円(+50円)
東京都 :1,113円⇒1,163円(+50円)
等です。
(2)令和7年以降の見通し
最近では円安の影響もあり、物価高騰や海外の最低賃金との格差を取り上げられる機会が増加しています。
また、岸田首相は昨年、「新しい資本主義実現会議」で「2030年代半ばまでに全国平均が1500円となることを目指す」と言明しています。昨年10月には最低賃金の全国平均は1,004円だったため、今後10年で約500円引き上げられる、という想定になりますから、(首相が交代するとは言え)毎年50円程度の引上げが今後も継続される可能性があります。
最低賃金「30年代半ばに1500円」 岸田文雄首相が表明 - 日本経済新聞(2023年8月31日)
このような背景から、昨年の40円前後の引上げから、今年は50円以上の引上げがほぼ確定しています。
※同意はしませんが、参考までに。
日本の最低賃金「本来なら1400円」 アトキンソン氏が説く理由 _ 毎日新聞
2.最低賃金引上げ額の「目安」
最低賃金は、以下の手順で改定されます。
1.中央最低賃金審議会が引上げ額の「目安」を示す
2.各都道府県の労働局長が「地方最低賃金審議会」に諮問する
3.地方最低賃金審議会は「目安」や各都道府県の実情を踏まえて調査・
審議し、労働局長に答申する
4.答申内容を公示し、異議がない場合は改正決定される
現在、上記手順の内「3」まで完了し「4」に入っている、ということになります。
「1」の「目安」は、従来は都道府県ごとのランク(A~C)ごとに提示されていたのですが、今回は都道府県ごとの格差を是正する、という観点もあってか、全ランク共通で50円となりました。
3.各都道府県での「審議」と「答申」の内容
(1)全体
「3」の各都道府県の地方最低賃金審議会では、「地域の経済・雇用の実態」や「地域間格差の縮小」といった観点を踏まえて審議が行われました。この中で、最低賃金の低い半数以上の県で、格差縮小のために「目安」以上の引上げが行われました。
結果として、全国加重平均額は1,004円から51円増加し、1,055円になりました。また、地域間格差を見ますと、最高額となった東京都(1,163円)に対する最低額(秋田県で951円)の比率は81.8%となり、昨年度の80.2%から格差は縮小しました。
(2)岩手県
今回は、様々な県で「目安」以上の引上げが行われています。
昨年は最低額だった岩手県では、「目安」プラス9円の引上げが答申されており、最低額の県は(プラス4円の引上げを行った)秋田県に替わる見込みです。
岩手の最低賃金、59円上げ952円答申 全国最下位脱する - 日本経済新聞
(3)徳島県
徳島県では、「目安」を34円上回る「84円」と大幅の引上げが答申されました。四国4県で、徳島県が他の3県を上回る答申額になっています。
安い最低賃金に徳島知事「若者出ていく」 ワースト2位から急上昇 [徳島県]:朝日新聞デジタル
ただ最低賃金は、「地域の経済・雇用の実態」も踏まえて審議されるものであるところ、知事の意向を踏まえた結果としてかなりの引上げとなっており、地域の事業所の持続的な経済活動が可能なのか、懸念があります。
今後、労使からの「異議」があり、最低賃金額が変更される可能性もあるのでは、と感じています。このあたりは注視が必要だと考えます。
4.賃金引上げに対する公的助成
賃金引上げに対しては、公的な助成制度が導入されています。
(1)キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
(厚生労働省。窓口は各都道府県労働局「助成金センター」など)
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者等(有期雇用労働者、パート労働者、派遣労働者)の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するものです。
この内「賃金規定等改定コース」は、有期雇用労働者等の基本給(時給額など)の賃金規定等を改定し、3%以上増額した場合に支給されます。
※最低賃金適用前に増額することが必要です。
(2)業務改善助成金
(厚生労働省。窓口は各都道府県労働局「雇用環境・均等室(部)」)
生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行った場合に、かかった費用の一部が助成されるものです。
その際、「事業場内最低賃金」を一定額以上引き上げることが条件となっており、引き上げた額や対象の人数によって、助成上限額等が決定される仕組みになっています。
本日は以上です。最後までお読み下さいましてありがとうございました。
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