通帳不発行化

 メガバンクを中心に、銀行は個人顧客をネットバンキングに誘導している。それに伴い、紙の通帳の発行を有料化したり、不発行にすると優遇したりしている。もともと通帳もカードも発行しないデジタル銀行も設立されている(1月15日日経)。顧客の利便性向上と銀行の経費削減の両者を実現するために、必然の流れと言える。
 ただ、預金者が亡くなった時にはどうなるのだろう。遺産整理の典型的場面では、故人宅を家捜しして、通帳などから預金口座のありかを探していく。紙の痕跡がなく、残されたのはスマホだけ。しかもパスワードはわからない。葬儀後であれば、死者の顔認証も指紋認証もできないだろう。どうやって口座のありかの当たりを付けていくのか想像できない。
 だから、特におひとりさまは、紙に口座のありかを残しておく必要があるだろう。遺言ならなお明確だ。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

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