「あたしは柴犬のアキ」13
家族全員揃っての夕食だった。あたしもドッグフードを食べて、いつものようにおこぼれを狙ったけど、今日のメニューはカレーライス。あんまり好きじゃない。でも習慣で何となくパパの足元に座った。「アキちゃん今日も泥んこだね。散歩から帰ったら拭いてあげるね」パパは優しく言ってくれた。今日はお姉ちゃんとお散歩だ。「アキ、お散歩行くよ」の声に嬉しくて飛び跳ねた。一人で外出するのも楽しかったけど、お姉ちゃんと行くお散歩も大好き。歩きながら色んな話をしてくれる。
公園でうんちをした。「あれ、アキちゃんうんちそれだけ」お姉ちゃんは驚いた。しまった。昼間に電柱の根元にうんちしちゃった。お姉ちゃんは深く考えずにそのまま散歩は続いた。家の近くの電柱のそばを通った時、昼間にしたうんちにお姉ちゃんが気付いた。「誰か知らないけど、うんちはちゃんと持って帰らないといけないのにね」とあたしに話しかけた。あたしは気が気じゃなかったけど素知らぬ顔をして家まで帰った。
「ママー、アキちゃんウンチをちょっとしかしなかったよ。体調悪いのかな」ママは「お庭でしたんじゃない。もう暗くて見れないから明日の朝見とくね」と言った。事無きを得てあたしはほっとした。
朝になりママはうんちの事は忘れていた。あたしも忘れていた。犬ですからそんな事まで憶えてられない。みんな早く出かけないかな。最近そればかり考えるようになった。朝のアイドル活動もあまり身が入らない。
みんな出かけた。おばあちゃんがおやつをくれる時間まで待って、穴から外へ遊びに行こう。そんな事を考えてるうちにおばあちゃんの声が聞こえた「アキちゃーん、今日はクリームパンよ。お口に合うかしら」そう言いながら庭に投げてくれた。美味しい。何これ。こんなに美味しいんだ。家でもパンは貰うけど端切れだけ。クリームのところは食べたことがなかった。匂いで美味しそうなのはわかっていたけど。おばあちゃんほんとに大好き。
さあお腹も膨れたし、いざ自由の世界へ。