「あたしは柴犬のアキ」15
夕食の時間になった。あたしはリビングをうろうろしていた。家族がなにやらあたしの話をしている。よく聞いていると最近うんちの量が減っていること、早くに寝てしまうこと、体が汚れていることを話し合っていた。お姉ちゃんが一番心配している。獣医さんに診てもらおうと言っている。あたしは獣医さんにはなるべく行きたくない。注射が本当に痛いから。
ママもお兄ちゃんもいろいろ言っていたけど、最後はパパが「気にしなくていいよ。様子を見よう」といったので話はおさまった。ひと安心。
今日もお姉ちゃんと散歩だ。散歩しながら「アキちゃんどうしたの、本当の事を教えて」とか「お家で何か気に入らないことでもあるの」とかいろいろ話しかけてきたのでとてもゴメンナサイの気分になった。「お姉ちゃん大好きよ」と伝えるためにお姉ちゃんの足に纏わりつきながら歩いた。お姉ちゃんは「やめて、歩きにくいでしょ」とか言いながらとても喜んでいた。最後はいつもの様に仲良く並んで帰った。お姉ちゃんも楽しそう。良かった良かった。寝る前にパパに体を拭いてもらってお兄ちゃんと寝た。今日は自分の枕であたしを寝かせ、お兄ちゃんはあたしを枕にして寝た。重かったけど仕方ないね。明日のおでかけの事を考えるとわくわくしてなかなか寝れなかった。
次の朝は元気いっぱいで起きた。でも昨日のこともあるし、みんなが出かけるまでは家族としっかりコミュニケーションを取ることにした。なんたってこの家のアイドル犬ですもの。登校途中の小学生にも指を舐めてしっかり神対応したわ。最近はちょっと塩対応していたかも。反省反省。朝のアイドル活動が終わった。今日はゆっくり出かけることにしたのでお庭でゴロンとなって塀の隙間から行きかう車をぼうっと見ていた。
隣のおばあちゃんが呼んでいる。うれしいな。おばあちゃん大好き。今日は何かな。「アキちゃん、話は聞いたわよ。一人でお出かけしているのね。お外は楽しい?お出かけしてお腹が空くといけないから、おかかおにぎり作ったわよ。はいどうぞ」と掌にのせて腕を伸ばしてくれた。あたしは塀に前足をかけて大きな口を開けてかぶりついた。とても美味しい。かつお節と醤油の味が最高。明日もこれでいいわ。おばあちゃんに向かって吠えた。おばあちゃんは「明日も作ってあげるね。気を付けて行ってらっしゃい。困ったことがあったらおばあちゃんの家の玄関扉をカリカリするのよ」と言って玄関の方を指さした。それからすぐにはお出かけしなかった。向かいのおばちゃんのジャーキーを待った。
向かいのおばちゃんがモモちゃんを連れて歩いてきた。塀の隙間からジャーキーを差し込んでくれた。ありがとう。モモちゃんは何か不満そう。「アキちゃんいいな。好きなとこに行けて。私も行きたいな」って言ってきた。あたしは「じゃあ一緒に行こうよ」って答えたけど、話の途中でおばさんはモモちゃんを連れて行っちゃった。ももちゃんが散歩から帰ってくるまで待って、モモちゃんと話の続きをしようと決めた。
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