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「あたしは柴犬のアキ」16

モモちゃんのお庭で鈴の入ったボールを転がす音が聞こえた。モモちゃんの大好きなおもちゃだ。モモちゃんが帰ってきたんだ。庭から出てモモちゃんの家の塀のところまで行こう。
 「モモちゃん、お帰り」
「アキちゃんは今からお出かけ?」
「ううん、モモちゃんも一緒に行こうよ」
「私のお庭はコンクリートで穴が掘れないのよ。だから行けないわ」
「モモちゃん、ここを見て、この塀の端だけネットになってるよ。これを外せばモモちゃんも外に出られるよ」
「ほんとだ、でも外れるかな?体当たりしてみる」
「モモちゃん外れないね。あたしが外から思い切って体当たりしてみるね」
あたしが思い切って体当たりしたら、モモちゃんのネットが外れてモモちゃんのお庭に転がり込んだ。
「アキちゃん大丈夫」
「平気平気、いつもお兄ちゃんのバットで鍛えられているからね。モモちゃんおでかけしよ」
「うん、アキちゃんありがとう」
あたしはモモちゃんの後ろをついていった。モモちゃんは道に詳しい。とても頼りになる。
 「アキちゃん美味しい草がたくさんあるところに行ってみない」モモちゃんはそういうと私を空き地に連れて行った。空き地には雑草が生い茂り、美味しい草もたくさんあっておしっこもうんちもやり放題。水もある。あたしとモモちゃんはテンションが上がって思いっきりお尻をクンクンされた方が負けになる追いかけごっこをした。
「アキちゃん、楽しかったわ。バレると行けないからそろそろ帰ろうか」
あたしとモモちゃんはこっそり家に帰った。帰る時、隣のおばあちゃんに見つかった。おばあちゃんはモモちゃんが一緒にいるのを見て目を丸くして驚いた。
「モモちゃんもお出かけしていたの?」モモちゃんは「ワンワン」と吠えて答えた。
おばあちゃんは「モモちゃんも内緒にしておいてあげるね」と言ってあたし達にお煎餅を一枚ずつくれた。
家に帰ってからも、お互いのお庭の一番近くの場所で夕方までずっとずっとおしゃべりした。大好きなモモちゃんと自由にお出かかけできたなんてなんて本当に楽しかった。


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