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「あたしは柴犬のアキ」38

 気が付くとお兄ちゃんが小屋をのぞき込んでいた。
「アキ、どうしたの?お迎えの尻尾フリフリしてくれないの?」
お兄ちゃんはそう言ったけど、元気がなくて起き上がれない。何だか身体が動かない。
お兄ちゃんが抱っこしてよ!と思った時、小屋に手を入れてあたしを引っ張り出して抱っこしてくれた。さすがお兄ちゃんあたしの事をわかってくれている。
「アキ元気ないねぇ。ヨシヨシ。何かあった? お家に入ろうね」
今日のお兄ちゃんはとっても優しい。ソファの上であたしを膝の上にのせてずっと撫ぜてくれた。後ろ脚はもうあまり痛くない。

 お姉ちゃんが帰ってきた。
「アキちゃんどうしたの?尻尾フリフリしないね。元気ないの?」
「俺が帰って来た時から様子が変。尻尾も下がったままだし。オドオドしてる。病院に連れて行く?」
「どこも悪くなさそうだし、ゆっくりさせてあげよ」
おねえちゃんの判断であたしは病院行きにならなくて済んだ。ほんとにこの家族は優しい。
この家に来てよかったと思った。
お兄ちゃんに散歩に誘われたけど、外に行くのが怖くてソファの上でじっとしていた。

 パパとママも帰ってきた。あたしの様子をお姉ちゃんから聞いてとても心配した。ドッグフードを出してくれたけど食欲がなくて食べなかった。ジャーキーや噛み噛みガムも出してくれたけど食べる気がしなかった。ママは獣医さんに電話した。「様子をみてください」と言われただけだった。家族はみんなあたしを囲んでしょんぼりしている。あたしが元気を出さなきゃって思ったけど元気が出なかった。尻尾も思うように上がらない。もう眠たくなってきた。
 お姉ちゃんがお風呂も入らずに「もうアキちゃんと寝る!」と言って寝室に連れて行ってくれた。お姉ちゃんの腕に顎をのせて頭はずっとナゼナゼして貰って良い気持ちになって眠ったの。

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