「あたしは柴犬のアキ」21
今日もお出かけ。モモちゃんを迎えに行くとモモちゃんはいなかった。多分おうちの中にいるのね。あたしたちは勝手にお庭に出ることができない。こんな日もあるわ。
あたしは一人で出かけた。時計台に一人で行くのは気が引けるし、ちょっと違う場所をお散歩しよう。ゆっくり歩いていると、この近所にはあたしとモモちゃん以外にも犬がいっぱいいることが分かった。
隣のブロックのお家の庭に黒柴がいた。あたしは物陰に隠れてじっと観察していた。あたしと同じ格好なのに色だけ違う。きっと仲良くなれそう。パパさんと遊んでいる。名前は確認した。「クロ」だ。そのまんまだ。クロは男の子だった。時々こっちをチラ見している。気が付いたのかな。その時、パパさんがこっちをみて「あれ?隣のブロックの柴ちゃんじゃない?こっちにおいで」と言った。あたしは怖くなって凄いスピードで家に帰った。
やっぱりモモちゃんと一緒じゃなきゃダメね。バレちゃったじゃない。あたしの家の人に言われたらもう自由に外を歩けなくなる。とても心配になった。外が怖くなってお庭でしばらく遊んでいたけどクロの事が気になって頭から離れない。あたしどうしたのかしら。クロの目の上の白い眉毛がとても気になった。あたしにはついていない。とても魅力的。もう一度見てみたい。でもクロのパパさんに見つかるのは怖い。やっぱりクロを見に行くのはやめておこう。
寝る時間になった。なんだか今日は寂しいような切ないような気分。お姉ちゃんにくっついて思いっきり甘えながら寝よう。お姉ちゃんの匂いを嗅ぐととても落ち着く。お姉ちゃんは、ぴったりくっついたあたしを腕枕しながら優しく撫ぜてくれた。あたしは安心感に包まれながらいつしか眠っていた。