「あたしは柴犬のアキ」5
散歩から帰ってくるとパパが帰宅していた。あたしは嬉しくて嬉しくて尻尾を振りながら全身をクネクネさせて喜んだ。パパは抱っこしてあたしの頭に何回もチューをしてくれた。パパは帰ってくるのが遅かったので、一人でご飯を食べる。かわいそうなのであたしが傍にいてあげる。パパは「アキは今日なにしていたの?」「配達の人が来て吠えた?」「お散歩楽しかった?」と次々に質問してきたけど言葉では答えられないから尻尾を振って答えたけどわかってくれたかな。パパがビールを飲んで少しテンションが上がってきた。チャンスタイムね。あたしはジャンプしてお膝に上りテーブルに手をかける。美味しそうな食べ物が並んでいる。クンクンしているとパパがちょっとずつ掌にのせて食べさせてくれる。パパが油断している。ママはキッチンにいる。お姉ちゃんお兄ちゃんは宿題をしている。今しかない。今だ! あたしはテーブルの上にのり、ガラスのボールに入っている冷やしうどんをおもむろに貪った。「アキィーーー」ママが叫ぶ声が聞こえる。「降りなさい」パパもちょっと強めの口調で言う。おりられるもんですか。錦糸卵を食べるまでは絶対おりないわ。パパもママもあたしを取り押さえようと必死。あたしは逃げまわる。「パリーン、ガシャン」色んな音が聞こえる。あっやっちゃった。でも今しかない。家族みんながびっくりしている隙に一気に錦糸卵を口に入れた。錦糸卵をくわえたままテーブルを飛びおりてソファの後ろに逃げ込んだ。パパは甘いわと考えながら口の中にある錦糸卵を味わった。
そのあとパパとママはリビングの大掃除をした。ママにちょっと怒られたけどすぐに撫でてくれた。パパは「アキは言葉がわからないからしょうがないね」と笑っていた。言葉はわかってるよ。
リビングの掃除が終わってゆっくりした時間がおとずれた。お姉ちゃんもお兄ちゃんもお風呂や宿題を済ませソファにすわってテレビを見ている。パパもビールを飲みながらテレビを見ている。あたしもお姉ちゃんのお膝の上とお兄ちゃんのお膝の上を行ったり来たりしながらテレビを見ている。あたしはテレビに犬が写ると吠える、それを見て家族が笑うのが大好き。みんなが笑うから嬉しくなっちゃう。
寝る時間になった。お姉ちゃんとお兄ちゃんがあたしを取り合いしてくれる。いつもお姉ちゃんが折れて、お兄ちゃんと寝ることになる。あたしは背中をお姉ちゃんの体にくっつけて寝るのが大好きなので、お兄ちゃんが寝た後にこっそりお姉ちゃんの方に移動する。時々おきてリビングに行きパパやママがお話ししているのを聞くのが大好き。