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「あたしは柴犬のアキ」29

 今日は朝からワクワクしていた。モモちゃんが来てくれるからね。楽しみ。嬉しくてお庭をかけずり回った。
「アキちゃんご機嫌さんね」
ママには表情や仕草で全部バレる。クロに恋していることもバレてるかな。恥ずかしい。

 朝の活動は一通り済ませた。モモちゃんはさっき向かいおばさんと散歩に出かけた。帰ってきたらあたしの所に来るはず。隣のおばあちゃんが呼んでいる。
「今日はお出かけしないの?モモちゃんと遊ばないの?」
「ワンワンワンワン、ワンワン、ワオーン」今日はモモちゃんが来てお庭で遊ぶの。だからおやつは二つ頂戴ねと言ったけどわかってくれたかな?
おばあちゃんはお家に入ってメロンパンを二つ持ってきてくれた。やっぱりおばあちゃんはわかってくれている。でもモモちゃんにメロンパンは大き過ぎない?

 モモちゃんがやって来た。
「お邪魔しまーす」モモちゃんは礼儀正しいのね。
今日は何して遊ぶ?と言うと
「今日はお話しましょう。わたし話したいことがたくさんあるのよ」
そうだった今日はお話する約束をしていたんだ。とりあえず二人ともメロンパンを食べた。モモちゃんは半分残したので残りはあたしが食べた。それからおばあちゃんに挨拶に行った。
「あなた達ほんとうにいい子ね。可愛い可愛い。二人とも今度おじいちゃんがいるとき、アルミの階段を降ろしてあげるからうちに来なさい」
モモちゃんとの楽しみがまた一つ増えた。

 お腹もいっぱいになって、ゴロンとしながらあたし達は話はじめた。
「アキちゃん、私は保護犬だったの」
「保護犬ってなぁに」
「アキちゃんは前の飼い主さんから貰われてこのお家にきたでしょ。わたしはそうじゃなくて前の飼い主さんに捨てられたの。とっても良い人達だったけど。
 
 大きなお家で車は三台あって今の家の三倍のお庭よ。毎月サロンと言うところに行ってシャンプーしてもらってたの。時々お庭にトレーナーと言う人がやってきて、私にいろんな事を教えてくれたの」そうなんだ。それでモモちゃんは上品で物知りなんだ。
「ある日、家族のみんなが車に荷物をいっぱい詰め込んでどこかに行っちゃった。
洗面器いっぱいのドッグフードを庭に置いて、家の門は開けっ放しで。私はずっと待っていたけど、帰って来なかったの。何日かしてドッグフードがなくなって、お腹が空いたので食べ物を探しに外に出たの・・・長くなっちゃう。見つかるといけないから明日また来るね」
 そういってモモちゃんは帰っていった。明日が待ち遠しいわ。

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