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「あたしは柴犬のアキ」1

あたしの名前は「アキ」柴犬の女の子。二歳。事情があって三か月前からこの家の子になったの。
この家はパパ、ママ、中学生のお姉ちゃん、小学生のお兄ちゃんとあたしの四人と一匹の家族。秋にこの家に来たからこの名前になった。

「ピピピピー」
目覚まし時計のアラームが鳴った。
ママが一番に起きる。
お姉ちゃんの腕に顎を置いて寝ているあたしの頭を撫でて、ママはキッチンへ行った。
あたしは少しだけ目を開けて寝室を見渡し、起きようかと考えたけど、まだ眠いのでまた目を閉じて寝た。
 それから少ししてママが朝ご飯を作る音が聞こえてきた。「おこぼれないかなぁ」あたしはママの足元に行ってママを見上げた。「キャベツ食べる?」ママが聞くので尻尾をユラユラと振った。キャベツはおいしかった。もっと欲しいと尻尾を振ってもママはくれないのでお姉ちゃんの所へ戻って顔を舐めた。「朝ご飯ね、ちょっと待っていてね」ドッグフードを取りに行くお姉ちゃんの足に纏わりつきながらついていった。陶器のお椀にドッグフードが入った。お座り、お手、伏せの三点セットをさっと済まし「待て」と言われたけど聞こえないふりをして食べた。待てる訳がないことはお姉ちゃんもわかってくれている。お姉ちゃんは食べているあたしの頭をいつもナゼナゼしてくれる。
 朝ご飯が終わったらあたしの仕事だ。お兄ちゃんを起こさないと。お兄ちゃんはなかなか起きないので一仕事だ。お兄ちゃんは顔を舐めても起きないので、手を何回も甘噛みして起こす。やっと目を覚ましたお兄ちゃんはいきなりあたしを枕にして二度寝だ。諦めてあたしは枕になりきって一緒に二度寝した。
 ウトウトしているとママがお兄ちゃんを起こした。お兄ちゃんについてリビングに行ったら、お姉ちゃんがソファに座ってテレビを見ていたので「ラッキー」と思ってお膝に飛びのった。窓の外を見ると車がないのでパパはもう仕事に行ったのが分かった。パパがいないので今朝はブラッシング無し。少しがっかりした。
 ママ、お姉ちゃん、お兄ちゃんの朝ご飯が始まった。私はみんなの椅子の周りをウロウロしながらおこぼれを探す。狙い目はお兄ちゃんだ。結構大きめのパンのかけらが落ちてくる。
時々食べたくないものはあたしにくれる。お兄ちゃんは乱暴だけどあたしのことは大好きだ。愛情はしっかり感じる。今日はあたしの大好物の卵焼きのにおいがする。テーブルに手をかけて立った姿勢になって確認する。やっぱり卵焼きがあった。みんなの周りを動きまわり、「ワンワン」と何回もアピールすると、ママが「一つだけよ」と言ってくれた。全然足りない。これだけならくれないほうがマシみたいな気持ちになった。気持ちを察してくれたお姉ちゃんも一つくれた。お兄ちゃんは卵焼きが大好きなのでわざと視線を合わせない。もうこれ以上は期待できないので、あきらめてお庭に行った。これからあたしの大好きな時間が始まる。

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