はなれて ひとつに重なり合う
NHKで放送されていた「はなれて ひとつに奏でる」の録画を見た。
シンニチ・テレワーク部による「パプリカ」の演奏。
これがアップされる少し前に、人数の少ないバージョンのものをSNSで知って聞いていたから、多人数のオケの音の厚みを聞いてさらに心が震える感動があった。
そしてこの動画が普段クラシック音楽や、交響楽団の演奏会に行かないような人にも届いたことがコメントを読んで伝わってきて、さらに感動した。
そんな動画ができるまでの裏側を知ることができたから、もっともっと感動してしまった。
1番ぐっときたのは、試用期間中(トライアル)で正式な団員ではない人たちの、それぞれの声を聞いてから見た動画の中にその姿を見つけたとき。
本来なら5月末でその期間が終わるはずだった女性の、複雑な気持ちとここまできたらなるようになれ!と、どこかで吹っ切らなくちゃやっていられないよとでも語るかのような表情が、見れば見るほどこちらの心をゆさゆさと揺らすようで。
普段のコンサートや練習で集まれていないだけでも相当なのに、さらに複雑な思いを重ねて参加されていたのかと思うと、胸がキュッと締め付けられた。
ほかにも家族が一緒に映ってパプリカを歌っていたり、笑顔で演奏しようと目の前で旦那さんに踊ってもらっていたり、機械に弱くてうまく送れなかったり、様々な暮らしの中から届けられたことを知れたから、見るうちにどんどん気になってしまった。
演奏している人のそれぞれの今が集まって、音が重なり合って1つの曲が完成される。
それは普段のコンサートでも同じことで、オーケストラそのものの基盤というか音を生み出す母体にまでつい想いを馳せてしまった。
どんな作品でもそういう面があると思うのだけど、作品を生み出すその人の物語を知ることで、こちら側の鑑賞する目や耳の解像度がぐんと上がるときがある。
それを野暮だと思う人もいるだろうけど、私は知れば知るほど好きになるタイプなので、新日フィルの皆さんをもっと知りたいと思い始めている。
パプリカをきっかけに、コンサートが再開されたら会場で聞きたいと思った人がたくさんいると思う。
そんな人がさらに増えるように、できることならテレワーク部のような活動を、これからも続けていってほしい。ほかのオケでも!
地方でオーケストラと出会う機会が少ない中で、YouTubeで気軽に出会えることが、もっとオーケストラを身近に感じられるいいきっかけになれると感じたから。
もちろん演奏会で聞くのが何より素晴らしいことは誰もがわかることだけれど、そこに行くまでのハードルがもしこのきっかけで下げられたなら、前よりもっといい未来にも出会えるかもしれない。
そんな期待まで展開してしまえた番組でした。
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