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家族アルバム みてねの企画からリリースまでとデザインの意図

2022年12月15日に ViViVi​T さん主催で行われたマスアダプションをつくるデザインロードマップ【デザナレVol.16】に登壇した際のスライドとスクリプトを公開します。

株式会社MIXIで家族アルバム みてねというサービスを作っております。渡辺です。

家族アルバム みてねの企画からリリースまでとデザインの意図、というタイトルで、みてねがどのように生まれたのか、企画からリリースまでを中心に振り返りをしながらご紹介してみたいと思います。

自己紹介ですが、私自身はWebの制作会社でデザイナーとしてのキャリアをスタートしました。その後、フリーランスの期間を経て、2013年にMIXIに入社しました。入社後は2つほど新規事業の立ち上げに参加し、2014年以降はみてねに携わり続けています。

みてねはスマホで撮った子どもの写真や動画を家族に共有し、コミュニケーションをして楽しんでいただくサービスです。

私自身子どもが2人いるのですが、子どもが生まれると本当にたくさんの写真や動画を取るようになります。その結果、スマホの中が子どもの写真で溢れてしまい、綺麗に整理したい、家族に共有したい、いつまでも大切に保存しておきたい、など課題が生まれてきます。

みてねを通じて何気ない日常の写真を家族に共有し、それをきっかけに家族とのコミュニケーションが交わされる。その積み重ねが、いつの間にか家族にとってかけがえのないアルバムになっていったらいいな、そういった想いを込めてサービスと作っています。

ビジネスモデルは、大きく2つに分かれています。左側がデジタル収益(サブスク)になるのですが、みてねプレミアムに加入いただくことで、みてねアプリがより便利に使えるようになります。対して右側はたくさんあるのですが、代表的なところを3つほどご紹介したいと思います。

1つ目が写真関連商品です。サービスの性質上、子どもの写真がたくさんアップされます。フォトブックや写真プリントの形に変えてさらに楽しんでいただきたいというものです。

2つ目がみてねみまもりGPSです。子どもが小学校に上がるとひとりで通学することになります。はじめて親元から離れて行動することに成長の嬉しさを感じつつも、親としてはとても心配になります。みてね みまもりGPSの端末をランドセルに入れておくと、離れながらスマホのアプリで見守ることができるので、親子にとって安心・安全なサービスになっています。

3つ目がみてねコールドクターです。無いに越したことは無いのですが、深夜や休日に子どもが体調を崩してしまった場合に、お医者さんが自宅まで来てくれる往診サービスを提供しています。

このような形で、みてねでは子どもや家族を中心に、より子育てが楽しくなったり、安心・安全につながる価値を提供しながら対価を得ているモデルとなっています。

続いて利用者数の推移です。みてねは2015年にサービスリリースしており、現在は7言語に対応をして世界中で1,500万人以上の方にご利用いただいています。

正直なところ、リリース当初はここまでたくさんの方々に使っていただけるようなサービスになるとは全く思っていませんでした。

海外にも展開することになることも想像すらしていませんでしたし、さらにいえば初期にチームで100万人を目指そうと話したりしていましたが、それすらもとても大きな目標に感じていました。

あらためて1,500万人という規模を考えたときに、世界中の本当にたくさんの方々に日々使っていただいているということを本当に実感させられます。同時に大切な家族の思い出をお預かりしていることになるので、物凄く責任のあることだと考えています。いつまでも魅力的なサービスを提供し続けられるように、引き続きチームとして責任を持って取り組んでいきたいと思います。

地道に積み上げてきたサービスではあるのですが、この場では最初期の企画フェーズからリリースまでに遡ってご紹介します。

そもそもの始まりは、プロダクトオーナーに子どもが生まれたのがプロジェクト発足のきっかけでした。プロダクトオーナーに子供が生まれ、こんなにも写真や動画を撮ることに気づきます。同時にこの写真を整理したい、家族に共有したい、いつまでも大切に保存したい、という思いが生まれます。

当時の状況として、既存のファイル共有サービスなども試してはみたものの、家族間の写真共有に特化していないが故の使いづらさがあったり、使いたいと思えるサービスが見つかりませんでした。

そんな中、社内のメンバーや周囲にインタビューを進める過程で、この課題は創業者自身だけでなく、万人に共通することだと気づいていきます。ちょうどこのタイミングで自分にも子どもが生まれており、課題に対して深く共感できる状態でしたので、一緒にプロジェクトを進めていくことになりました。

何かを生み出したり、成長させていく過程ではたくさんの困難に向き合う必要があると思います。創業者自身にプロダクトを作る理由や熱量が強くあることはとても重要なことに思います。創業者にそれでも折れない熱量が絶え間なくあり続けるというのは、プロダクトが成功する上で、最も大事な要素のひとつなのではと自分としては思います。

プロジェクト開始からリリースまでの流れを当初の資料を調べながら時系列で整理してみました。8〜9年前の話なので、正確性に少々不安はありますがおおよそあっていると思います。開始から約1年かけてストアリリースまで持っていっています。スタート時のメンバーはPO、ディレクター、エンジニア2名、デザイナー(自分)の計5名でした。

あらためて振り返りをしてみて、とても丁寧にインタビューやアンケートなどの調査を行なっていたんだなと感じます。ターゲットとなる方々がどのような課題を持っているのか、どのような方法で対処しているのかを解像度高く、網羅的に理解するのは重要なことですし、現在においても変わらず価値のあることだと思います。

開発が進む中、開発版のアプリによるユーザーテストを2回ほど行いました。2回とも実際のターゲットとなる0歳児のお子さまをもつご家族約20組にご協力をお願いして実施しました。

ユーザーテストの1回目は惨敗で、辛い結果に終わったのですが、しっかりとフィードバックを受け止め、次に向けて改善を進めました。結果的に2回目ではある程度良い反応を得ることができ、前を向いてリリースまでの追い込みができたと記憶しています。

ちなみに公にはしてきていなかったのですが、正式リリース前にサイレントリリース期間が4ヶ月ほどありました。この期間に実際にオーガニックに使い始めてくれたユーザーさんがどのような行動をとるのか、どこに課題を持つのかを細かく見ながらチューニングをしたり、広告もわずかに出稿してマーケティングメッセージの研究をしたりもしていました。

そして4ヶ月後の2015年の4月にチームとしても納得のできる状態となったので、プレスリリースをおこなって正式リリースという運びとなりました。

リリース時点と現在とで継続率の比較してみたのですが、初期も決して悪くなく、リリース時点でも使い続けてもらえる状態は作れていたのではと思います。

次にデザインコンセプトです。インタビューや調査、プロトタイピングを繰り返しながら、徐々にこういったプロダクトがあれば良いんじゃないか、と自分自身の中でイメージできるようになってきました。言語化したのがこちらになります。

「使うのは大人」の意味は、当時は子どもの写真共有というイメージからか、子どもに好かれるようなカラフルでポップなアプリが多かったように思います。一方で使うのは大人の方なので、例えば感度の高い、意匠にもこだわりのあるようなママやパパでも自然と使えると良いのではと考えました。

特定の好みによりすぎてしまうと、他方で嫌われる可能性が出てくるので、ニュートラルさも大事になってきます。アルバムは長く使うものになりますので、時代や流行に左右されない、時代耐性も意識しながらデザインを詰めていきました。

プロダクトアイデアは、無料・無制限で写真動画を共有できる、シンプルな家族アルバムアプリ。これが他サービスと明確な差となり強みを生んでいると自分は考えています。

シンプルなUIの意図として、初見で難しく感じずに、誰でも簡単に考えずとも使えると良いなと思っていました。難しい印象を与えてしまうと、その瞬間に使われなくなってしまう可能性もあると思います。主役となるのは、子どもの写真ですので、思い出に没入できるUIのあり方を丁寧に考えていきました。

そして、誰でも簡単にとは、誰にでも全ての機能を使えるようにすることとイコールではないと思っています。みてねは幅広い世代の方が使うサービスですので、それぞれの利用者の方が、それぞれしたいことができる状態が理想かなと思います。

例えばおじいちゃん・おばあちゃんであれば最新の孫の写真を見られるだけで嬉しいかもしれません。みてねではアプリアイコンをタップすれば、起動するたびにランダムで変わるアルバム表紙とともに、最新の子どもの写真を見ることができます。アプリアイコンをタップできればみてねを使うことができるようになっています。

少し話はずれるのですが、自分がみてねを通じて学んだ最も大事なこととして、使い続けてもらえる理由が作れているか、というのがあります。

当然ながら継続的に使う理由がなければユーザー数は積み上がっていかず、事業としてもスケールしていきません。いかにして継続的に使ってもらえる、自然なサイクルを見つけることができるかがとても重要になってきます。それができれば、利用者数も自然と積み上がるはずですし、結果的に、必ず事業としても成長し続けることができるはずです。

みてねはママやパパの写真・動画の共有が起点となり、利用のサイクルが回る構造になっています。写真の共有はみてねを使い続けてもらう上でとても重要なアクションです。

共有するだけでたくさんの嬉しいお返しやサプライズをお届けできればユーザーさんに喜んでもらえますし、自分たちとしても嬉しい。嬉しい連鎖をうまくつなぎ合わせることができれば、設計としても理想のかたちになっていくのではと考えていました。

体験サイクルを構成する4つの嬉しい反応を順番に説明して行きます。

1つ目が自動整理です。写真動画をアップするだけで、月ごとに綺麗に自動整理されます。左右にスワイプするたびに月ごとに振り返りができるので成長の様子が振り返りやすくなっています。アルバム上部の表紙には名前と月齢が表示されるようになっているのもポイントです。

ちなみにアップ済みの写真や動画はピッカーから消えるようになっていて、重複して選択してしまうの防いでくれます。何気ない機能ですが、実際の利用に寄り添って生まれてきたものです。

自動整理はみてねを構成する中で重要な機能のひとつだと考えています。みてねは家族と一緒に使っていただくことで、最も価値を感じていただけるサービスですが、アプリをインストールしていきなり家族を招待したりはしないと思います。(ある程度認知が広まった現在ではまた異なるのですが。)

まずはひとりで試しに使ってみて、価値を感じれば家族を招待する。価値を感じてもらう最初のステップで触れる機能でもあるので重要な意味を持っています。

みてねでは家族をひとり以上を招待して使っていただくと、継続率が利用開始から数年経過したとしても高く保たれ続けます。利用開始から家族招待までをつなぐこの機能はとても大切な役割を担っています。

2つ目がみたよ履歴です。例えばママ・パパの立場として写真を共有したのに誰も見てくれないというのはとても寂しい状態です。みたよ履歴があることで、家族がみてくれたことがゆるやかに伝わってくるようになっており、共有した人にとっては嬉しい気持ちになれる機能になっています。

3つ目がコメント機能です。キャプション的に使ったり、家族と写真を見ながら盛り上がったりして楽しかった思い出がより楽しくなります。

いつの日か、成長した子どもが自分のみてねを見て小さかった頃の様子を知ったり、家族同士のやりとりから愛情を感じたりする機会が生まれたら良いなと思っています。

4つ目、最後が1秒動画です。みてねに共有した写真の中から、システムが良い写真・動画を自動で抽出し、一本のオリジナルムービーを自動で作成してお届けする機能です。一定期間の成長の様子や思い出がギュッと詰まった動画になっており、とても人気の機能になっています。

最初の図に戻ります。起点となる写真動画の共有に対して、4つの嬉しい反応が順番に返ってくるようになっています。その結果、自然とサイクルがまわり続けて、いつの間にか家族にとって、かけがえのないアルバムが出来上がっていく、そういった流れです。

それぞれの機能については、理屈から考えていったというよりは、こんな機能があればユーザーさんに喜んでもらえるのでは?、嬉しいサプライズになるのでは?といったアプローチで、自分たち自身も楽しみながら作っていったように覚えています。

写真の整理・共有・保存などの課題解決から始まったみてねですが、段々と家族をゆるやかにつなぐ大切な場を提供していることに気づいていきました。

久しぶりに顔を合わせた家族に「久しぶりに感じないね」とか「会ってないけど会ってるみたいだね」と言われたことがあります。みてねがあったからこそ発せられた言葉だと思っており、とても嬉しかった記憶が残っています。

これからもみてねを魅力的なサービスとして提供し続けられるように、世界中の家族のこころのインフラになれるように、引き続きチームで取り組んでいきたいと思います。

自分の発表は以上となります。ありがとうございました!

みてねではデザインマネージャー、プロダクトマネージャー、エンジニアを大募集中です! 少しでもみてねに興味のある方はカジュアルにお話しさせていただけると嬉しいです!


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