職員室の雑談~「遅いインターネット」を受けて⑵~

I先生:じゃあ、その時代背景っていうのが何かって言ったら、「カベ」が関係するんだと思う。これを「価値観」という風に置き換えられる。なぜかというと、「カベ」というのは、あくまでも抽象的なモノ・コトが具体化したものに過ぎないわけなんだよね。その「カベ」が時代を象徴しているならば、時代とともに「破壊」され、時代とともに「構築」されていくモノ・コト。それはまさに「価値観」ではないかと思う。

橋本:確かに「ベルリンの壁」も決して「カベ」が先にあったわけではないですしね。「価値観」というのは、「イデオロギー」とも置き換えられます。「資本主義/社会主義」というイデオロギーが先だっているわけです。

I先生:60、70年代のヒッピーの価値観に伴う時代背景を考えてみると、そこには明らかに第二次世界大戦があったはず。じゃあ、日本はというと、この第二次世界大戦という戦争には負けたけど、経済的な「戦争」に舵を切ったわけだ。そして、この「戦争」は朝鮮特需から始まるおよそ40年にもわたる長期の戦争だった。高度経済成長までを考えれば、この「戦争」は大勝利だった。

橋本:「敗戦」したからこそ発展できた、というのは、「スクラップ&ビルド」という「大きな物語」を欲しがる日本にはたまらないものですね。

I先生:そう考えると、この経済的な「戦争」は勝つべくして勝ったんだ、という理屈になる。敵が(アメリカが)自身をさらけ出し、(自分たちの強みも弱みも全て)日本に教えてくれたんだから当然でしょ?

橋本:日本としたら、それをうまく使って発展させていけばいいだけですもんね。日本が得意とした「小型化」とかもその部類に入りそうですね。

I先生:陰謀論的になってしまうけど、日本はそれこそが本当の狙いだったのではと思ってしまう。1941~1945年を日米戦争とせず、1941~1990年までを戦争と考えたらどうだろう。太平洋戦争の真珠湾攻撃とまるで同じことが起きたことになる。「真珠湾攻撃は、アメリカが日本にあえて攻撃させた」ということが言われている。そして国民意識を戦争に向かわせる。「遅いインターネット」における「共同幻想」と「自分の物語」をうまく利用したことで大勝利を収めた。

橋本:「共同幻想」を利用することで、戦争を自分事にした、ということですね。

I先生:これを日本の1941~90年に当てはめると、日本があえて日米戦争に負けることで、経済的な「戦争」へ「次は負けないぞ!」という共同幻想と自分の物語をうまく利用したのではないか。日本にとっては1945年の「終戦」は、第二次世界大戦の「終戦」に過ぎないんじゃないかな。

橋本:んー、なんか炎上しそうな気もしますけど、「ジャパンアズナンバーワン」と言われたことを考えれば、「勝利」なんですよね。これは、日本人にとって何がうれしかったかというと、「アメリカ」が言ってくれた、ということなんですよね。欧米に対して、さらに「戦争」で負けたアメリカに対してコンプレックスを持った日本人にとっては、これほどうれしいことはなかったはずですとね。

〈続く〉

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