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「音楽視点から見たD.LEAGUE 23-24」ROUND.6:音で見える並行世界
プロダンスリーグ『D.LEAGUE 23-24 ROUND.6』が1月12日に開催された。この全6試合を音楽的な視点を交えてレポートする。
世界でも類を見ない本リーグは2021年、コロナ禍の真っただ中で開幕した。2週間に1試合という過酷なスケジュールを戦い抜き、試行錯誤のなかで3シーズンを既に終了。特に昨シーズンは念願となるフルキャパシティの観客とともに開催され、レギュラーシーズンはCyberAgent Legit、CHAMPIONSHIPはKADOKAWA DREAMSが優勝を収めた。
レギュラーシーズンは開幕後、半年間・14ラウンドに及ぶ。参加するのは、昨季に引き続きavex ROYALBRATS、KADOKAWA DREAMS、KOSÉ 8ROCKS、CyberAgent Legit、SEGA SAMMY LUX、SEPTENI RAPTURES、FULLCAST RAISERZ、Benefit one MONOLIZ、Medical Concierge I'moon、dip BATTLES、LIFULL ALT-RHYTHM、Valuence INFINITIES、さらに新チームのDYM MESSENGERSを加えた計13団体。
ROUND.6のジャッジはSAM、SHINICHI、MADOKA、SAYA YAMAMARU、WREIKOが務め、採点は「スキル」、「クリエイション」、「コレオグラフ」、「スタイル」、「完成度」という観点で行われる。
全ラウンドは以下のアーカイブにフル尺公開されているので、未見の方はぜひチェックしてほしい。
■第1試合
Medical Concierge I'moon vs KOSÉ 8ROCKS
青:Medical Concierge I'moon
テーマ:「Light in the dark」
楽曲:「Light in the dark」(Prod:SAAGMUSIC)
赤:KOSÉ 8ROCKS
テーマ:「New Wave」
楽曲:New Wave(Prod:D3adStock)
SPダンサー:MEI、RiN.
本ラウンド、先陣を切るのはMedical Concierge。光と闇を表現するショウケースで、それに合わせてか音楽もメリハリがはっきりしていた。やはりSAAGMUSICのビートは音がいい。一方であの“カワイイ”パフォーマンスは観られないのか……少し残念でもある。ただ、どんなに素晴らしくても“カワイイ”はポイントにならないことは過去シーズンで証明済だ。
対するKOSÉはブレイキンとハウスダンスの歴史的つながりを上手く表現していくショウケース。個人的には本ラウンドのベストだった。楽曲はサウンドデザイン的にもいいし、リズムトラックへのハイパスフィルタのかけ具合とコレオグラフのリンク具合に鳥肌が立つ。
さらにバック転からのバック宙が、楽曲の一番盛り上がるラストの頭抜き2拍目にぴたりとハメたところはもう本当にすごかった。
しかしながら結果は3-3のドロー(AUDIENCE:青/SAM:青/SHINICHI:青/MADOKA:赤/SAYA YAMAMARU:赤/WREIKO:赤)。
■第2試合
SEGA SAMMY LUX vs FULLCAST RAISERZ
青:SEGA SAMMY LUX
テーマ:「YO-KAI STYLE」
楽曲:「No Joke」(Prod:Lucas Valentine)
赤:FULLCAST RAISERZ
テーマ:「We are」
楽曲:「Our Turn」(Prod:GALLOP KOBeatz、Sniper Deuce)
SEGA SAMMYは、Joが中心となってキョンシーをネタにした作品。コミカルなのだが、一方で楽曲は得意とするニュージャック風でカッコいい感じ。ストーリー性がありつつ、エンタメとしてまとめあげた。
FULLCASTは100%クランプで勝負。楽曲の緩急に合わせてソロ部分を効果的に使っているのもよかった。自分たちの持ち味を素直に出している。
勝敗は2-4でFULLCASTが勝利(AUDIENCE:青/SAM:赤/SHINICHI:赤/MADOKA:青/SAYA YAMAMARU:赤/WREIKO:赤)。
<勝利コメント>
INFINITY TWIGGZ「初めて会場一体となって、皆さんとクランプを共有する作品となりました。2024年辰年、期待していてください」
■第3試合
SEPTENI RAPTURES vs CyberAgent Legit
青:SEPTENI RAPTURES
テーマ:「ドロン」
楽曲:「ドロン」(BEATBOX監修:HIRONA / BEATBOX:Toyotaka / Song writing:RYO / Mix:JUVENILE / Voice:MiYU)
赤:CyberAgent Legit
テーマ:「Ignite Soul~魂に火をつけろ~」」
楽曲:「Ignite Soul」(Prod:JUVENILE / FISHBOY)
今回のベストバウト。先行するSEPTINIは「盗みに入る」という世界観を主軸に楽曲的にはビートボックスで抜き足差し足な質感を表現してから、相手チームのメインプロデューサーである宮田“レフティ”リョウの特徴であるシンセ感、具体的にいうと「RADIOなDANCE -ラジオ体操第27911-」をサンプリング。それが象徴的に登場するラジカセの意味だろう。
しかし、対するCyberAgentは今回その宮田の楽曲を使用していなかった、という点でクリティカルではなくダメージは軽微。むしろ起用したプロデューサー・JUVENILEは20-21シーズンにおけるSEPTINIのテーマソング「Be The One」制作者であるから、「盗む」という点においては痛烈なカウンターとなっていたのではないだろうか。
と思いきや、今回JUVENILEは言うならば二重スパイの役割を果たしている。なぜなら「ドロン」のクレジットをミックスまで掘り下げると、彼の名前が記されているからだ。つまり本試合は音楽的に騙し騙されるシーソーゲームの様相を呈しているのである。
そう考えると、3-3のドローという結果には納得だろう(AUDIENCE:赤/SAM:赤/SHINICHI:青/MADOKA:赤/SAYA YAMAMARU:青/WREIKO:青)。
■第4試合
KADOKAWA DREAMS vs LIFULL ALT-RHYTHM
青:KADOKAWA DREAMS
テーマ:「オモチャ箱」
楽曲:「HIDE AND SEEK」(Joe Ogawa、Luna)
SP:うた丸、rinta
赤:LIFULL ALT-RHYTHM
テーマ:「宇宙への挑戦」
楽曲:「LANDING」(Prod:今井悠)
ダンスミュージックとしてクオリティの高い楽曲を毎回提示するKADOKAWAのショウケースには驚くほかない。前ラウンドのコードが動かない楽曲とは違い、今回はジャスアス進行を使ったエモい曲調だ。
調性から外れた音や可愛いトーンもよかった。これに合わせるコレオグラフがまたセンスを感じさせる。さらにソングライターのLunaによる解説も興味深いのでチェックしてほしい。
迎え撃つLIFFULは、THEコンテンポラリーで勝負。このテーマが以前の対決を踏まえたものであることは颯希が解説してくれている。楽曲はほぼSEで、心拍の音をリズムに動きを合わせていく形だった。意外と2分15秒があっという間に感じてしまうのが不思議である。
結果はKADOKAWAがSWEEP勝利。今シーズン4勝目、SWEEP3回目という成績はすごい(AUDIENCE:赤/SAM:赤/SHINICHI:赤/MADOKA:赤/SAYA YAMAMARU:赤/WREIKO:赤)。
<勝者コメント>
颯希(SATSUKI)「候補生からSPダンサーとして、うた丸とrintaが参戦してくれました。LIFULLの作品もすごかった。CHAMPION SHIPで『SPACE TRAVELERS』という作品で当たったのですが、その『SPACE』を試合に当ててくれて拍手喝采。これからも最高のパフォーマンス、世界や歴史に残るような作品を作り上げて、皆様にドカンとお届けできたら」
■第5試合
DYM MESSENGERS vs Benefit one MONOLIZ
青:DYM MESSENGERS
テーマ:「color」
楽曲:「color」(Prod:DYM MESSENGERS)
赤:Benefit one MONOLIZ
テーマ:「Jellyfish ~毒海月~」
楽曲:「Jerryfish」(Prod:age)
テーマの通り、それぞれが違うカラーの衣装をまとい、同じビートに違うグルーヴをはめていくDYM MESSENGERS。クラブジャズっぽい楽曲だったが、プロデューサーがチーム名になっている時の楽曲制作はどのようにしているのだろうか。気になるところ。
Benefit oneは、ヒールを封印し幻想的な世界観をまたも表現する。楽曲的にいうと後半のラッシュにおけるキックのパターンがユニークで面白い。
4-2でDYMの勝利(AUDIENCE:赤/SAM:赤/SHINICHI:青/MADOKA:青/SAYA YAMAMARU:青/WREIKO:青)。
<勝者コメント>
Yu-mah「MESSENGERSのメッセージのひとつに『個性を解放して踊る』というのがあります。僕がストリートダンスで感動したのはそういうところ。こんなに自分自身をさらけ出していいんだと感動しました。
日々、自分自身のダンスを磨くことに時間を費やして、それをみんなで重ねてもの作りをしています。変わらずに変わり続ける気持ちです。もしMESSENGERSがいいと思ったら声を上げてください。PEACE」
■第6試合
dip BATTLES vs avex ROYALBRATS
青:dip BATTLES
テーマ:「祝祭」
楽曲:「De Fandasso」(Prod:Ajate / Compose:Junichiro Imaeda)
赤:avex ROYALBRATS
テーマ:「HOT」
楽曲:「IRRESISTIBLE」(Prod:BBY NABE、Kaede Mashio)
最後の試合は、まずdipが「お囃子×竹×アフロビートで練り出す和フロバンド」を標ぼうするAJATEをフィーチャーした楽曲でプリミティブな雰囲気を醸し出す。全チームのなかでも幅広いアーティストをフックアップする姿勢に関しては3本の指に入るだろう。コレオグラフに関しては、TAKAHIRO氏による解説によるとカポエラからフットワーキングなどの動きがミックスされていたという。
自身の得意ジャンル「コレオグラフ」を全開に表現したavexよかった。楽曲「IRRESISTIBLE」はブルーノ・マーズの楽曲から「24K Magic」などいくつかをリファレンスにしたような質感でアップリフティング。打ち込みの音が少しチープなのが気になったが、長いブレイクからの復帰の盛り上がりは見事。観客の歓声にもぐっときた。
勝負は1-5でavexに軍配(AUDIENCE:赤/SAM:赤/SHINICHI:赤/MADOKA:赤/SAYA YAMAMARU:赤/WREIKO:青)。
<勝者コメント>
JUMPEI「新年1発目、トリで登場ということで気合を入れて踊りました。僕らの得意な『コレオグラフ』というジャンルを存分に見せて、結果に繋がったのが自信にもなるし嬉しいです」
■NO MATCH
Valuence INFINITIES
■総合ランキング
1位.KADOKAWA DREAMS(13)
2位.CyberAgent Legit(12)
3位.SEPTENI RAPTURES(11)
4位.Benefit one MONOLIZ(10)
5位.avex ROYALBRATS(7)
6位.FULLCAST RAISERZ(7)
7位.Valuence INFINITIES(7)
8位.KOSÉ 8ROCKS(6)
9位.DYM MESSENGERS(4)
10位.SEGA SAMMY LUX(4)
11位.Medical Concierge I'moon(3)
12位.LIFULL ALT-RHYTHM(2)
13位.dip BATTLES(0)
(カッコ内はCSP=チャンピオンシップポイント)
MVD(Most Valuable Dancer):
Kohsuke Hattori(avex ROYALBRATS)
私的楽曲賞:KOSÉ 8ROCKS「New Wave」
試合と勝敗が早いスピードで流れていくため、目や耳を留めづらいかもしれないが、音楽視点で考えるとダンスだけではつかめないチームの意図や想定外のストーリーも見えてくる。改めてそう感じたラウンドとなった。
次回はサイファーラウンドということで、楽曲は既存曲から。よってこのレポートでは取り上げないこととしたい。よって次回はROUND.8をレポート。どんな厚い戦いが待っているのか楽しみだ。
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