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「果てしない旅」(散文詩集)

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夢はいつか見た景色になる。
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2020年5月の記事一覧

すべてのことに祝福を

夏の足音が聞こえてきた5月の終わり。
僕は眠気と闘いながら今日もデスクに向かっている。

この生活に意味があるかなんて自分にさえわからないけれど、僕と君は今日も生きている。

すべての生きる活動に祝福を。
今日もそう願っている。

遠くへ行きたいと、天使のようにささやけば。

昔は、遠くへ遠くへ行きたいと願っていた。
自分が知らない、自分を知らない街へと行きたかった。
そうすれば、きっと今までとは違う自分に会えると信じていた。
そう思っていた10代の頃。
あの時の君は、一体どこで何をしているのだろうか。

僕は、知らない街で、なんとかやっているけれど、あの時の君がなぜか時々愛しくなる。
なぜだろう。今になんの不自由もないのに。

あの時の、腕のあざもまだ消えていないかい

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どうしようも

この毎日に、どうしようもなく。 
毎日をどう過ごすか、砂時計のように、賭けている。

キーボードを叩く音しかしないこの部屋では、少しずつコップの水が蒸発していくのが分かる。
少しだけ、疲れただけだよ。
そういう君がとても愛しくて。
また僕は新しいタバコに火をつける。

やり続けることが大切だ、とか、手順だとか、うるさく言われるこの世の中だけど、僕は僕のやり方で、この世を生きたい。

素敵な夜なら、誰もが永遠に続けばいいと願った

久しぶりの野球観戦も、最後のイニングになった。

弱小球団だったこのチームも、いつの間にかスタジアムを埋め尽くす観客で一杯になり、嬉しいような寂しような気分だ。

ヤケクソチャンテと言われてきた応援歌を歌うのも久方ぶりで、懐かしさを噛みしめるように、繰り返し歌っていた。

帰りの足取りは少し重たかったが、また次のゲームに来ようねと、手を繋ぐ君の横顔に、なんだか少しうっとりした。

こんな素敵な夜な

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