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淀みのない青の芸術|ベネッセアートサイト直島
(この記事は私が務めるL&G Global Business社内共有用のレポートを一般公開したものです。)
ベネッセアートサイト直島
瀬戸内の島々を舞台に3年に一度開催される国内最大級のアートフェスティバル「瀬戸内国際芸術祭」。そのメイン会場となる直島に常設されている“泊まれる美術館“がベネッセハウスです。
「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに、美術館とホテルが一体となった施設として1992年に開館。 敷地内に「ミュージアム」「オーバル」「パーク」「ビーチ」の宿泊棟4棟が点在していますが、あくまでメインは美術館が中心の複合施設。
建築はすべて安藤忠雄の設計によるもので、瀬戸内海の自然環境と溶け込むように構成。長いスロープや階段、通路による移動、切り取られた開口部から注ぎ込む外光など、施設内外の現代アートを身体全体で感じられる工夫がなされていました。
今回は宿泊棟4棟の中でも最も小規模かつ高価格帯の「オーバル棟」に宿泊してきました。
ベネッセアートサイト直島・オーバル
客室数:6
価格:¥36,000(一人当たり・夕食つき)
淀みのない青の芸術
白昼のプールに潜って、ふと空を見上げたような空間。その青はどこを切り取っても美しい。
高台にたたずむオーバル棟へは、専用のケーブルカーに揺られること約4分。海と空と、桜のトンネルを進んでいく。
客室にテレビはない。時の移ろいを全身で感じて、風の音で目が覚める。
安藤建築の代名詞であるコンクリートのテラスからは、直島の大自然を180度見渡せる。
机の上にそっと置かれた暦案内。ホテルでの過ごし方を押し付けがましくなく、そっと教えてくれる。
チェックイン時に渡された直島・アートの歴史。それは島最大のアートと呼ばれるベネッセハウスの作品案内でもある。
23時まで、ホテル宿泊者限定のナイトミュージアム。暗闇に浮かぶ作品群は、日中とは異なる表情を見せてくれる。
夜のオーバル棟は、まるで教会にも似た神秘的な装いに。
オーバル棟宿泊者限定のバーエリア。写真は桜の塩漬けのソルティドッグ。
電車と船・シャトルバスを乗り継ぎ、ようやくたどり着いた宿のウエルカムドリンクは特別な一杯。(ピント合ってない...)
ドライタオルにアロマ水をかけると弾ける香り。そんな粋な演出からディナータイムはスタート。
地元の食材をふんだんに使った朝定食。手書きのメニューガイドは、まるで料理人から口頭説明を受けているかのよう。
あとがき
今では珍しくなくなったアートホテルですが、日本国内においてベネッセハウスはその先駆け的存在です。昨年、世界的アーティストであるジェームズ・タレル氏設計の『光の館』に宿泊しましたが、そこでは光(人工灯/自然光)による体験がデザインされていました。一方ベネッセハウス・オーバル棟では、時間(朝夕/季節)にフォーカスを当てた体験設計がなされていました。
単に施設内にアートが展示されているだけではなく、宿泊者がどのようなタイミングで・どの角度から作品を見るべきかを自然な形でコントロールする。それはパブリックに開けた一般的な美術館では困難ですが、一対一のコミュニケーションをベースとしたホテルでは非常に相性の良いものでした。
この時間軸に沿った視線誘導のアプローチは、点や線で紡がれていた体験をより立体的なものにします。時間ごとにグラデーション豊かな選択肢を提示することは、宿泊者それぞれの滞在をより自由で気持ちの良いものにします。