「生前」と「死後」の情報の価値
「死んだ動物の体の中で起こっていたこと」
少し前に放送されたドラマ『アンナチュラル』で、法医解剖医という職業が注目を集めたことは記憶に新しい。
それに対して、あまり知られていないが「獣医病理医」という職業も存在する。
彼らは、病理解剖を通じて動物の死因を究明する専門家であり、その役割は非常に重要だ。
動物病院で働く獣医師や看護師は、しばしば動物の死に立ち会う。
多くの場合、動物は何らかの病気が原因で亡くなるが、その治療に全力を尽くしても改善が見られず、命を引き取ってしまうことがある。
生前の診断が正確だったのか、病気の進行具合、治療の効果などは、生前の情報だけでは十分に把握できないことも多い。
そのような時、病理解剖が役立つ。
院内での解剖の結果、予期しなかった病変や異常が発見されることがある。
それらの所見は1ヶ月後、各臓器の所見と共に報告されるが、その情報は極めて貴重で、今後の獣医療の発展に欠かせないものとなる。
ただし、「解剖」は「傷つけるのはかわいそう」と考える飼い主様もいる。
その気持ちは尊重したい一方で、なぜその動物が亡くなったのかを知ることには大きな意義がある。
解剖を通じて得た経験と知識は、次の命へとつなげるための重要な手がかりとなる。剖検にご理解いただく飼い主様には、深い感謝の念を抱く。
獣医療関係者にぜひ一読をお勧めしたい一冊である。
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