JCSC(Japan Customer Success Community) #6 イベントレポート
2018年4月にベルフェイスさんの主催で始まったJapan Customer Success Communityですが、12月22日に第6回目を迎えました。
これまでの回は一社が登壇してプレゼンするスタイルでしたが、今回は年末スペシャルということで以下の5社の豪華なメンバーが集まりパネルディスカッションの形式を取っています。(社名50音順、敬称略)
Sansan株式会社カスタマーサクセス部 Customer Marketing
カスタマーマーケティングアソシエイツ
田中 二郎
HiCustomer株式会社
高橋 歩
株式会社ビズリーチ
HRMOS採用管理事業部カスタマーサクセス部 部長
鈴木 雄太
ベルフェイス株式会社
カスタマーサクセス事業部 エキスパートチーム 上席コンサルタント
小林 昭宏
弁護士ドットコム株式会社
クラウドサイン事業部 Head of Customer Success
岩熊 勇斗
第6回のテーマは、、
「俺たちの屍(失敗)を越えていけ!!
~カスタマーサクセス、実はこんなこと失敗してきました!~」
ということで赤裸々な失敗談を語っていただきました!
これからカスタマーサクセスを立ち上げる人や今まさに取り組んでいる人は、そもそもどんな失敗が存在するのか、そのヒントが得られるかと思います。
それでは早速イベントレポートをお届けします!
過去最大となる150名が集まったセミナールームで乾杯から会が始まり、かなり和やかな雰囲気です。ギリギリなことを話すので今日聞いたことは飲んで忘れて帰ってください、という言葉から会が始まりました。カスタマーサクセスとは、という定義の話をした上で本題である各失敗談の話に入っていきます。
顧客情報管理
クラウドサイン:
・事業部を2人で立ち上げて数年、気づいたらあらゆるデータが散財していた。
・月末の締め作業も、土日祝日返上で気合でこなしていた。
・PMF(プロダクトマーケットフィット)が終わったあとに限界を迎えて、MRRさえもパッと出すことができなくなってしまい、1年位は死ぬような思いをしていた。
・勘で意思決定をして、当たることもあれば外れることもあったがデータに基づいていなかった。
・サブスクリプションの請求管理などが出来るZuoraを入れた。めちゃめちゃ高いが、MRRなどが瞬時に把握できるようになり金額相応の価値があった。
・初期から情報を管理する仕組みを作っておくべきだった。
質問:「Zuora入れる入れないのイチゼロではなく、その間はないのか?」
クラウドサイン:ある。少なくともスプレッドシートはなるべく早くやめるという意思決定をしておくべきだった。例えばセールスフォースと連携するような仕組み。
Sansan:Sansanは創業12年目だが、データをまとめる取組を今まさにしている。
質問:「顧客管理を最初からきれいにする、というのは可能なのか?」
クラウドサイン: 可能。統括する上位のIDはきれいにしておくべきだったと思う。
質問:「スナップショットでいいのか、それとも履歴を追えるようにするのがいいか。」
HiCustomer: 契約情報と顧客情報をそれぞれ管理できたほうが良い。
Sansan:管理の方法は変わる。ただし、その変化のポイントでどんな変化があったのかを追えるようにはしておいたほうが良い。
浦田の勤める会社では受発注も含めてセールスフォース経由なので、マニュアルの集計作業や請求作業は無いのですが、それはかなり恵まれた環境だったということがよく分りました。
再現性
ベルフェイス:
・CS立ち上げのタイミングで入社し2年が経ったが振り返ると再現性が課題だった。
・キャリア上コンサルティングがバックグラウンドにあるので、お客様を変えるための活動がかなり属人化していた。
・一定以上のクオリティの活動ができないと、組織としてスケールしない。
・逆説のCSでも触れられていたが、サービスレベルを下げるということが解かもしれない。
Sansan:再現性を担保するための仕組みが整ってきた。例えばオンボーディングセミナー(的なもの)のフォーマットを定めて、誰でも同じ内容をデリバリーできるようにした。もしミスや習熟度の低い部分があってもリカバリーが効く。
HiCustomer:再現性の課題はある程度成長してきたからこそ認識できること。何が最適解なのかは試してみないとわからない。(最適解じゃないものを標準化しても意味がない)最初からサービスレベルを下げるのではなく、最適解を探るためのトライアンドエラーは必要。
属人化と標準化はバランスが難しいものの、順番としてはやはり効果の出る尖ったアクションを打っていく中でスケーラブルにすべきものが見つかる、という流れでしょう。
忖度
HiCustomer:お客さんとSNSでつながっている人はいますか?(3-4割から手が挙がる)
SNSでつながっていると、お客さんの繁忙期や体調のことなどの情報が目に入ってくることになる。その中で連絡すべきことを躊躇してしまうこともあったが、本当のお客さんの成功をカスタマージャーニーに照らし合わせて考えたときに「今このタイミングで必ずやっておくべきこと」を伝えることも必要。
BizReach:社内外に忖度しすぎないことについてだが、社内には忖度しないことは大事。今話すことはNoteには書いてほしくない。(とのことで意図を汲み取ると)お客さんのポジティブなフィードバックはもちろんのこと、ネガティブなフィードバックもしっかりと開発に伝える必要がある。変に忖度して、ポジティブなことしか伝えないとお客さんの目線から遠くなってしまう。
ユーザー会
BizReach:
・ユーザー会をやってる人、もしくはやりたい人? (7ー8割ほどから手が挙がる。)
・課題として、エンジニアをユーザー会に呼ぶものの上手く巻き込めないということがあった。
・ユーザー会をどういった位置づけで実施するかにもよるが、ユーザー会の流れとして、コンテンツを発表した後で懇親会という流れでやっていた。
・懇親会だけにエンジニアを呼んでも話に入れない。エンジニアがただお酒を渡してるだけ、という状態になりがち。
・最終的にエンジニアを呼んでも来てくれないということになってしまう。
・エンジニアもしっかり参加できるユーザー会を考えた。
・クリスマスHRMOSをやった。完全なクリスマス会。コミュニティマネージャーがこだわりをもってやった。その結果、砕けたコミュニケーションが出来るようになった。
質問:HRMOSは月2回のユーザー会を継続してますが、どんなやり方をしていますか?
BizReach:4つある。どんなユーザー会も来る層が違う。
1. コンテンツ提供型
2. ユーザー登壇型
3. 外部講師型
4. 飲み会型
(こちらに関しては@osososo77さんのまとめたNoteがあるので下記リンク先を御覧ください)
戦略なき戦術
Sansan:
・オンボーディングに強みが有る方は?(2-3割位から手が挙がる)
・CSとしてやったらいいことは山のように有る。
・過去に可能な限りあらゆる手を打つ、という時が有った。目の前のお客さんは救えているが、全体に貢献しているのかわからなかった。
・それは、戦術ばかり考えて、戦略を考えていなかったから。
・カスタマーマーケティング部門が、全体のケーデンスを考えて手を打つ部門として出来た。
・全体の流れから逆算してしっかりとタッチポイントを作るということが出来るようになった。
ベルフェイス:すべての活動がヘルススコアに相関が有る、という話だと思う。ゆるやかに相関していく。コンセプトが統一されていないまま手を打ってしまうと、効果的ではなくなる。コンセプトを作って、そこにむけてやっていくことが大事という話だと思う。
質問:Sansanさんの規模で全体に関わる根本的な部分を変えるのは大変だったのでは?
Sansan:メリットを提示することに尽きる。各部門にとってのメリットをしっかりと考える。ゴリ押しのときもあるが、しっかりと考える部分もある。
質問:何名体制のときから、そういったきめ細かなコミュニケーションが必要になったのか?
Sansan:社員が300人を超え始めたときに、事業企画部門などの全体の調整をする部門が立ち上がった。CS部門が30人を超えたときに、そういった調整が必要になってきた。
BizReach:戦略なき戦術は、うちも戦術優先でやってきた部分がある。意外とメリットもある。CSのプレゼンスを挙げる意味では、戦術に傾倒するのは良かった。例えば、営業のトレーニング的なことを今でもしている。社内的にCSの地位が低い、という話をよく聞くが弊社の場合、営業支援をする中でCSに対する評価も高くなった。
実際にどう活用するか、という部分の知識と経験があるので客先に同行するときに高く評価された。
戦略を考えて身動きが取れないくらいだったら、いろんな手を打つ中で最適解を見つけたほうが良いということもある。
クラウドサイン:青本にも書いてあるが、全社でCSという状態になるのにはあとあと周りを説き伏せるのは難しい。CSのトップが突き抜けるくらい優秀だと、一番いいのではないか。
HiCustomer:突き抜けるのが難しい人もいると思う、そういった人は「○○の人」というポジションを目指すのが良いのではないか。例えば、トレーニングの人など。
(WingArc1Stさんのオフィスをお借りしました)
質疑応答
Q. 法人向けのサービスを提供しています。顧客企業の担当者様が1人しかいなくて、その方が異動 or 退職されたときに解約に繋がるパターンがあります。この状態を防ぐためには、どのようにすればよろしいでしょうか?
ベルフェイス:スターやエースと呼ばれるような、お客様を複数作ることにしましょう。
クラウドサイン:自社でHiCustomerを入れたときに、HiCustomerの体制を紹介されたのと同時に、御社のこれ確認させてください。ということで、弊社側の体制図に空欄がある表を見ながら聞かれた。非常に上手いな、と思って次の日から自社でも真似をしている。
質問:お客様側の体制はどのタイミングで握る?商談中?
Sansan:商談がまとまるときにクロージングDocという資料を送るようにしている。その際に同時に体制を作ることの前出しをしている。
クラウドサイン:クロージングDocを見たい!
Sansan:確認します。
Q.「カスタマーサクセス」という職種の定義がまだ固まっていない状況かと思いますが、各社の「カスタマーサクセス」の業務範囲を教えて下さい。
クラウドサイン:今年からプライシング、業務支援、ロードマップの引き直し、全てに関わるようになった。お客さんが買ってよかったな、というものにつながる全ての場面に関わるようにしてます。CSのメンバーのキャリアパス的を考える上でも、どんなところにも行けるようにしたいという思いもある。
HiCustomer:HiCustomerはエンジニアよりも営業よりも先にCSを採用している。CSが見る範囲は全部。
Q. スケール化・再現性を実現させるために、サービスレベルを落とした具体的なケースを共有いただけますでしょうか?
ベルフェイス:マニュアル化出来ない仕事はエキスパート(有償サービス)になげちゃう。というのもあり。
Q. CSにて見ているKPI、及びその取得方法・運用体制について教えてください!!
クラウドサイン:オンボーディング率 (製品導入でやりたかったことがかなったかどうかを聞いている)
ベルフェイス:利用率
BizReach:アクティブステージにいかにあげるか。ゆるく効果が上がるが、分析チームが2人活躍している。
Sansan:リクエスト数 Marketoから配信したものへの反応率を取る。
Q. MAツールはあまり使わないんですか?サクセスだとMAの方が相性がいいのかなと思うのですが。
ベルフェイス:使ったほうが良いと思う。MAツールで大きくお客様の行動を変えることは難しい。薄く広くあたるのがMAツール。ハイタッチ、ミドルタッチから生まれたコンテンツをMAツールに流すといい。そこから得られたフィードバックを再度ハイタッチとミッドタッチに戻す。
Q. カスタマーサクセスの立ち上げを任されました!わくわく反面、なにから手をつければいいのか全くわかりません。まずはなにから始めるべきでしょうか?助けてください!
Sansan:一人のお客様を幸せにすることから始めたらいい。
HiCustomer:お客様に会いにいく。
BizReach:お客様によりそう。
ベルフェイス:何かの施策をやりまくること。やってみて初めてわかることがいっぱいある。お客様のためになることをやってみる。やってから平準化する。
クラウドサイン:オンボーディングをする。
質疑応答はSlido(https://www.sli.do/)を利用しましたが非常に便利でした。誰でも手元のデバイスでアクセスして、ハッシュタグ(的なもの)を入力するとそこに匿名/記名式で質問が入力でき、投票数の高い質問が上に表示されるようになっています。
浦田は初めてのJCSCへの参加でしたが、そのコンテンツの良さもさることながらこういったコミュニティを企画運営することで、ホスト企業の知名度が上がり、採用に貢献する効果も非常に大きそうだと感じました。
カスタマーサクセスという職はこれからますます引き合いが大きくなりそうなので、JCSCのような場でプレゼンスを発揮していくとカスタマーサクセス職人材の採用も楽になりそうですね。
以上、イベントレポートでした!
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