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[3−24]最強のぼっち王女がグイグイ来る! オレは王城追放されたのに、なんで?
第24話 オレはなぜか、二の腕をティスリにつねられた
昼になり、アルデたちは、畑近くに生えている木々の木陰で食事を取ることにした。
使い古された敷物を木陰に何枚も敷いて、みんなで車座になって食事をしようというわけだ。オレたち以外にも農作業をやっている村人がいるから、十数名分の敷物が敷き詰められる。
そしてオレたちは──どこに座るかで揉めていた。
「わたしは当然、お兄ちゃんの隣だからね!」
そう言って譲らないユイナスに、オレは頷いてみせる。
「分かった分かった。じゃあお前はオレの右に座ってくれ。で、ティスリは左側に──」
「なんでティスリも一緒なの!?」
文句を言ってくるユイナスに、オレはため息交じりに答えた。
「なんでって……村に来たばかりのティスリを、一人にしておくわけにもいかないだろう?」
「そんな過保護にする必要ないでしょ! ティスリだって別にいいわよね?」
ユイナスにそう問われると、ティスリは苦笑しながら答えた。
「ええ、わたしは別に構いませんが……」
ティスリは頷くが、しかしこの先の展開が見えていたオレはティスリに言った。
「いや、ティスリはオレのそばから離れないでくれ」
「えっ……?」「なっ……!?」
オレがそう言うと、ティスリとユイナスの驚いた声が重なる。
その直後にユイナスが迫ってきた。
「そそそ、それはどういう意味なのお兄ちゃん!?」
「どういう意味って……言葉のままの意味だが?」
「だからその言葉は、どういう意図で言っているのよ!?」
なぜユイナスが怒っているのかさっぱり分からないのだが、質問の意図は分かったのでオレは答えた。
「たぶん、今日はこれから村の若い連中──特に男どもが昼休憩中にわんさか押し寄せてくると思うから、ティスリ一人にしておくわけにはいかないんだよ」
午前中にティスリが農作業をしている姿は、畦道を行き交う村人に何度も目撃されているからな。
となると今ごろ「あの美少女は誰だ!?」「なんで刈り取り作業をしてるんだ!?」などと噂が広まっているだろう。
そうなったら最後、刺激の少ない村人は、ティスリを一目見にやってくるに違いない。
だというのにユイナスは、なおも抗弁してくる。
「別に取って食われるわけじゃないし、村の男に囲まれたっていいじゃない!」
「いいわけあるか。ティスリの男避けが、オレの主任務なんだよ」
……自分で言ってて、いささか情けない気もしてくるが、重要な任務なのに変わりはない。なぜならティスリはただの村娘ではなく王女なんだからな。
それに、村の男連中に叶わぬ夢を見させるのもどうかと思うし。
だからオレは語気を強めてユイナスに言った。
「とにかく、この村に滞在している間は、オレはティスリから離れられないの。それがイヤだっていうなら仕事の邪魔だから、お前が離れろよ」
「ぐっ……!」
オレがそういうと、ユイナスはしかめっ面になるも、それ以上は何も言わずにオレの隣に寄り添ってくる。
まぁなんというか……妹に慕われるのは悪い気はしないんだが……コイツの場合、どうにもその度合いが過ぎるんだよなぁ。ちょっとは兄離れしてほしいんだが……
オレはそんなことを考えながらもティスリに言った。
「ティスリもそれでいいよな?」
するとティスリは、頬を赤らめながらも頷く。
「え、ええ……村の男性に取り囲まれるというのは、確かに少々面倒ですからね……」
「おまえ、なんで赤くなってんの?」
「なってませんが!?」
ティスリが赤くなってるのは……よく分からんがまぁいいや。
座る場所を決めるのも一苦労だと思いながらオレは腰を下ろし、両隣にティスリとユイナスも座る──と。
オレの前面には、棒立ちしているミアがいた。
「えっと……ミア? なんで突っ立ってんの?」
するとミアは、なぜかむくれた感じでオレを見下ろしてくる。
「わたしは、蚊帳の外なんだ……」
「えっと……どういう意味?」
「別に。意味なんてないけどね」
そう言いながら、ミアは頬を膨らませたまま、オレの目前に座る──いやあの?
オレが戸惑っていると、すかさずユイナスがミアに言った。
「ちょっとミア!? お兄ちゃんに近すぎでしょう離れなさいよ!」
すると、普段はユイナスに押されっぱなしのミアなのに、どういうわけか今日に限っては抵抗を始める。
「ティスリさんとユイナスちゃんと、同じだけ離れてるよ」
「横にいるわたしと同じ距離で正面にいたら邪魔でしょ!?」
「………………」
珍しくまっとうなことをいうユイナスだったが、しかしミアは顔を背けて移動してくれそうにない。
な……なんなんだ……この状況……?
まるで膝を突き合わせるかのような距離にいる幼馴染みに、オレは、ちょっとドキドキしながら言った。
「お、おいミア……この距離じゃ弁当を広げられないから……」
しかしミアは引きそうになく、さらに頬を膨らませる。
「やっぱり……わたしだけ除け者……」
「そ、そんなことないって。あ、そしたら夜の飲み会は、ミアの隣に座るから……」
オレが交換条件を持ち出すと、そこでようやくミアはコクンと頷いた。
「分かった……絶対だからね?」
「お、おう……絶対だよ」
そうしてミアはようやく離れてくれる──と。
「いたっ……?」
オレはなぜか、二の腕をティスリにつねられた。
「な、なんだよ……!?」
「は? どうかしましたか?」
「今つねったろ!?」
「なんのことでしょう? 虫にでも刺されたんじゃないですか?」
あからさまな嘘をついて、ティスリがそっぽを向く。
な、なんなんだ、こいつらは……!?
普段は物わかりのいいミアまで、今日はなんだかワガママだし……!
もしかしてアレか? ティスリとユイナス、ワガママ娘が二人もいると、ワガママが伝染するのか!?
などと考えていたら、その一部始終を見ていたウルグが、盛大なため息をつきながら腰を下ろした。
「まったく……言わんこっちゃないな……」
「じいさんは何も言ってなかっただろ!?」
この前から、ウルグに呆れられているのがさっぱり意味不明なんだが!? 何か思い当たることでもあるなら、せめて忠告くらいしてくれよ!
オレは心中で叫ぶも、その叫びはウルグに届かないのだった……