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[4−24]最強のぼっち王女がグイグイ来る! オレは王城追放されたのに、なんで?

第24話 なんだよお前、ミアのこと嫌いなのか?

 ナーヴィンオレは、農作業もあっという間に終わったのにやることなくて、自宅でゴロゴロしていたら、午前中にアルデがやってきた。

「どうしたアルデ? うちにくるなんて珍しいな」

 オレがアルデを自室に通すと、アルデは前置き無しに言ってくる。

「いや、実は海に行くことになってな」

「海!? もしかしてティスリさんとか!」

「ああ、そうだよ。なんでか昨日、ユイナスがいきなり『海に行きたい』って言い出してな。ユイナスの誘いだと、ティスリはどうしてか断らないもんだから、行くことになった」

「いいじゃねぇか海! もちろんオレもだよな!?」

「ああ……いちおう発案者でもあるし、誘わないと後でグチグチ言われそうだから誘いに来た」

「そういやオレ、同窓会のときにそんなこと言ったっけ」

「そういうことだ。けど別に興味ないなら来なくても──」

「行くに決まってんだろ!」

 ナイスだオレ! すっかり忘れていたけど、確かにティスリさんと一緒に呑んだ同窓会で、オレは『海に行こう』とみんなを誘っていたな!

 オレが自分を褒めていると、アルデが言ってくる。

「ちなみに貴族のリリィも一緒だぞ? あのコんちの別荘に行くらしい」

「美少女たちと別荘で海! 最高じゃねぇか!」

「貴族にビビってたろ」

「リリィちゃんとはもう仲良しだよ!」

「意味不明なんだが?」

「お前、誘いに来たのか自慢しに来ただけなのか、どっちなんだよ!」

「できれば、お前から辞退してくれるのがベストだ」

「なんでだ!?」

 誘いに来たというのに全然乗り気じゃないアルデにオレはツッコむも……ははん、そういうことか。

 アルデのヤツ、やっぱりティスリちゃん狙いなんだな?

 だからオレを近づけたくないんだろう。

 郡庁では、あまりいいところを見せられなかったからな。だからさすがに、あの状態でティスリちゃんを口説こうとしても駄目なのは目に見えていたから、やむを得ず引き下がったが。

 っていうかよくよく考えてみたら、貴族相手にオレら平民が立ち回れるわけないじゃんか。ティスリちゃんも平民だけど……それはそれということで! そもそもアルデだってぼけーっと突っ立ってただけだったし!

 あと、たまたまオレが脅しの材料にされてしまったが、ティスリちゃんがくれた魔具のおかげで事なきを得たし。でも……あの魔具に関してはちょっと……というかかなりおっかなかったので、村に帰ってきてから返したけど。

 いずれにしても次の機会を窺うしかなかったオレに、海へのバカンスは渡りに船だ! 行かないわけがない!

 だがしかし、こうしてアルデがオレを警戒しているとなると……アルデの気を逸らす必要があるな。昔からアルデにべったりのユイナスじゃあ力不足だし。

 っていうかユイナスは、アルデの話だと正真正銘の実妹じつまいだって話なのに、あのコはなんだって昔からああなんだ? アルデはまるで相手にしていないから問題ないものの、だからこそ力不足なわけで……

 まぁいいや。とにかくユイナスじゃ駄目だから、他の人間を宛がう必要がある。もちろん、アルデの事を好いている独身女性じゃないと駄目なわけだが……

 あ、いるじゃねぇか!

 なんとなく煮え切らない感じもするが、好意を持っていることは間違いないだろう。

「そうだ、ミアも誘おうぜ!」

「は……?」

 オレのその提案に、アルデはマヌケ面を向けてくる。

「な、なんでミアを?」

「なんでって……そりゃあ、美人は多いに越したことないだろ」

「しかし、出発は明日って話だし。急じゃないか? ミアも何かと忙しいだろうし……」

「ミアんちの農作業も終わったんだし、むしろ暇だろ」

「だけどな……」

 なぜか渋るアルデに、オレは眉をひそめる。

「なんだよお前、ミアのこと嫌いなのか?」

「い、いや……そういうわけじゃないんだが……」

「だけどミアも同窓会にいたのに、誘わないのは可哀想じゃんか」

「ま、まぁ……それはそうかもしれんが……けどミアも来たら、その……なんというか……ティスリの機嫌が……」

「ティスリちゃんがどうしたって?」

「い、いや……なんでもない」

「じゃあいいだろ。今から誘いに行こうぜ!」

 というわけでなぜかアルデは渋っていたが、ミアを誘いに行ったら快諾した。やっぱり暇だったらしい。

 よし! そうしたらアルデのことはミアに任せて、オレはティスリちゃんを口説きまくるぜ!

 ひと夏の思い出作るぞ!!

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