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[4−18]最強のぼっち王女がグイグイ来る! オレは王城追放されたのに、なんで?

第18話 なんて舐めた真似を!

「ナーヴィン・ベレルク! キサマは完全に包囲されている! 大人しく投降しろ!!」

 昨夜の状況をティスリわたし達がナーヴィンさんに聞いていると、宿屋の外から怒鳴り声が聞こえてきました。

「も、もう憲兵が戻ってきたのか!?」

 憲兵に名指しをされたからか、ナーヴィンさんが身をすくめます。

 その隣に座っていたアルデは立ち上がって、食堂の窓へと歩いて行きました。

「──フル武装した憲兵が、ザッと30人ってところだな」

 アルデの言葉を受けてわたしは言いました。

「おそらくは、爆発を免れた憲兵が逃げ帰り、応援を呼んできたのでしょうね」

 ナーヴィンさんが涙目になってわたしを見ます。

「どどど、どうしましょうティスリさん! オレ、憲兵を爆発なんてしてないし、もちろん強盗もしてません! そもそも魔法なんて使えないし!」

「ええ、分かっていますよ。爆発したのはその指輪の効果ですから」

「え、あ──この指輪ですか!?」

「そうです。なのでもし逮捕されるとしたら、それを作ったわたしですから、ナーヴィンさんは安心してください」

「そ、そうですか……」

 わたしの言葉に安堵しかけたナーヴィンさんでしたが、すぐさま身を乗り出してきました。

「って、いやいや!? それじゃあティスリさんが捕まってしまいますよ!?」

「ご心配なく。不当逮捕になんて屈したりしませんから」

 わたしのその言葉に、リリィが質問してきます。

「お姉様、不当逮捕とはどういうことですの?」

「まず、ナーヴィンさんはリリィの従者だと思われたのでしょうね。そして犯罪と偽って従者を逮捕し、それにより司法取引に持ち込もうとしているのでしょう」

「司法取引? いったい何を取引するんですの?」

「昨日取り決めた、20年間の減税を無しにしたいのでしょうね」

「あっ、そういうことですの……」

 わたしの説明を聞いて納得したリリィでしたが、徐々に怒りを露わにしてきました。

「ということは……つまりは、このわたしを脅す気ですの!?」

「そういうことになります」

「なんて舐めた真似を! テレジア家にしてお姉様のご寵あ──」

「寵愛なんて与えていません。未だかつて一度たりとも。今後どこかでそれを吹聴したら、二度と会いませんからそのつもりで」

「そ、そんなお姉様!? 別に恥ずかしがらなくても──」

「恥ずかしがってなどいません。心の底から嫌がっているのです」

 リリィは愕然とした様子で数歩後じさったかと思うと、やがて食堂の隅にいって膝を抱えましたが、わたしは気にも留めずに思索を続けます。

「それにしても、こんな強硬手段に打って出てくるとは……」

 宿屋の外から聞こえてくる憲兵の怒鳴り声に、わたしは眉をひそめます。

 リリィを庇うつもりは毛頭ありませんが、そうであったとしても明らかにおかしな状況です。地方貴族が中央貴族を──それもテレジア家の長女を脅すだなんて前代未聞なのですから。

 あちらからしたら不服な罰則だったのでしょうけれども、犯罪を捏造してまで抵抗してくるだなんて思いも寄りませんでした。

 そして不当逮捕は誰でも良かったのでしょう。だから繁華街を一人で歩いていたナーヴィンさんに目を付けたのでしょうね。

 ちなみにこの地本来の統治者は領主家ですから、領主家経由で弁明することはあり得ますが、今の領主はラーフルなので、弁明したところで意味がありません。だから余計に追い詰めてしまったが故の行動、と言えなくもないのですが……

 であったとしても、この行動は短慮過ぎます。少しでも間違えば自分の身が破滅するわけですし、そもそもわたしがこの場にいる以上、破滅するわけですが。

 ですがわたしがいなくたって、リリィがわたしに執心しているのは周知の事実。リリィ伝いにわたしへ連絡が行くとは考えなかったのでしょうか?

「おーいティスリ、どうする? 奴ら、今にも突入してきそうだが」

 窓の外を見張り続けていたアルデが言ってきました。

「……やむを得ませんね」

 しかしここで考えていてもらちが明きません。だからわたしはため息をついてから言いました。

「郡庁に向かいましょう。そこで決着を付けます」

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